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地方大会ベスト16・主将

 俺は和久井真彦。至って普通の脇役だ。

 副将である夏葵が勝ったのでベスト8進出は決定していたが、

かといって負けるわけにはいかない。

 ベスト16で俺が負けてしまったら、

幸先は良くないからだ。

 いくら俺が脇役だからといっても、

そういう無様な真似が許される理由にはならない。

 まあ、まずは夏葵を迎えるのが先だ。

 俺はそう思い彼女に声を掛ける。

「やったな、夏葵」

「ええ。でも、真彦も負けないでよね」

「分かってるさ、魔道部の面子に負けてもここで負けはしない」

「だから安心して見ていてくれ、夏葵」

 それを聞いた由莉はこういう。

「さっきのゆめといい、今の夏葵といい何かフラグ立ててないかな?」

「恋愛フラグを複数人と立てる脇役は居ないし、それはないと思うぞ」

 すると、幸美が割り込んでくる。

「あなたは天然なのね。まるでハーレム物の主人公みたいよ」

「俺が主役なら『脇役志望の俺がハーレムを形成していた件について』とでもなるのか?」

「それはちょっとタイトルがありきたりだけど、下手したらそうなるわよ」

 しかし、俺は幸美にこう返した。

「いくらなんでも、脇役の俺がハーレムを形成できるわけないだろ」

 それを聞いたゆめはこういう。

「誰かを支えたいって思えるあなたは優しいから、惹かれる人も多いと思うわ」

「偏見かもしれないが、女は自分から引っ張っていくような奴の方が好きそうだ」

 すると、由莉がこう返す。

「それくらいのイメージなら思春期の男の子なら思っても不思議ではないわ」

「ステレオタイプってことは否定しないのか」

「まあ、あくまでもイメージはイメージであって偏見とも違うと思うわ」

 良く分からないものは想像するしかない、

ということだろう。

 それがステレオタイプになりがちなのは、

ある種仕方ないことなのかもしれない。

 特に俺くらいの年齢であればそれは顕著になるだろう。

「まあ、行ってくる。戦うなら、まず土俵に上がらないとな」

 そういって俺はマットに上がる。

 相対する相手はどうやら男性のようだ。

 主峰を任されているなら相応の強さはあるだろうが、

新入りというのは少し気になる。

「玉央学園の主将和久井真彦。茜口台学園の主将、磯島宗いそじまそう

「魔道部の参加自体が久しい玉央学園の主将である真彦選手」

「そして、新入りでありながら茜口台学園の主将である宗選手」

「どちらが勝つのか、目を離せない試合です」

 審判のいう通りかもしれない。

 相手は俺からはもちろん、周囲の人間にとっても未知数だ。

 俺も周囲にとっては未知数だろうが、

俺自身の力は俺自身で分かっているつもりだ。

「新入りなのに、先輩を差し置いて主峰とはな」

「そういう君は部長じゃなさそうだ。さっきまでの会話で分かる」

「聞いていたのか?」

 俺の質問に宗はこう答える。

「会話の内容は噛み砕いて聞いていた」

「それで性格を診断できるなら、油断できない相手だな」

 俺はそういい、構える。

 すると、審判がこういう。

「それでは、試合開始です!」

 先手を仕掛けたのは宗の方だった。

「空衝波!」

 彼の周辺で衝撃波が走る。

 だが、俺のところまでは飛んでこない。

「なるほど、無属性だから様子を見ようっていうのか。なら!」

「バーニングスプリーム!」

 俺は右手から炎を拡散して放つ。

「炎属性か。となると衝撃波で散らせるな」

「だが、お前の衝撃波は炎で逸らせることができる」

 衝撃波は空気の歪みだ。

 なら、炎を燃やせば空気は変わり、結果として歪みをそらすことができる。

「さっきの空衝波を見るに、無属性でも衝撃波を得手としているみたいだな」

「そこまで見切れるとはたいしたやつだ」

「だが、お互いうかつには動けない」

 俺も宗も、うかつに動けば相手の攻撃に当たってしまう。

 故に膠着しそうになるのだが、俺はあるアイディアが思い浮かんだ。

(しびれを切らせ近づくように動けば!)

 それを実行するため『二歩』前に出る。

 だが、彼はそれに乗ってこない。

(読んだなら、そのまま突っ込むか?いや……)

 フェイントを警戒し何もしないのなら、

そのまま突っ込めばいいと思うかもしれない。

 実際、衝撃波が得意である以上は一歩引くのがベターだ。

 とはいえ、全く動かないということは誘っている可能性だってある。

 ゆえに、ここは突っ込まず体勢を整えておきたい。

 すると、相手の方が突っ込んでくる。

 どうやら、今が好機だと思ったらしい。

「そうは行くか!」

 突っ込んでくる宗に正面切って相手するのは厳しいが、

右足を引いて引くふりをして誘い込めばそのまま俺の前で停止する。

 どうしても勝ちたいなら正面衝突すればいいのだが、

こういう時人間は反射的にそれをさけようとする。

 それを止めるには、並大抵の精神力では足りない。

 少なくともこの手の試合ですることじゃない。

「バーニングトルネード!」

 というわけで俺は炎を纏った回し蹴りを宗にぶち込む。

「勝負あり。真彦選手の勝利です」

 それを聞いた俺は、宗にこういう。

「中々読みが強かった。一手間違えていれば俺が負けていた」

「そういってもらえれば光栄だ」

 そういう彼に見送られ、俺は仲間の元へと向かうのだった。


続く

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