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地方大会ベスト16・副将

 俺は和久井真彦。至って普通の脇役だ。

 さすがに茜口台学園の中堅は負け確定を防ぐべく意地を見せたが、

幸美も大分頑張っていたと思う。

 幸美は俺達のところに戻ってこういう。

「まあ、こんなこともあるわ」

「あまり落ち込まないんだな」

 そういう俺に対し、幸美はこう返した。

「勝負は時の運だからね。こういうときもあるわ」

「やっぱり、幸美さんは冷静ね」

 夏葵も幸美にそういった。

「まあ、次で決めるわよ。だけど、私が勝ったからって手を抜いたら承知しないわ」

「無論だ。いくら脇役でも、そういうのは相手に失礼だしな」

「分かっているじゃない」

 そういうわれた俺は夏葵にこう返す。

「脇役だってそういうのを組み取る技能は必要なんだって」

「最近のアニメは主役ばかりが目立つけどね」

「由莉のいう通りだけど、最近の流行だしね」

「親友のお前がそれをいうのか?」

 俺の疑問に対し、ゆめはこう答えた。

「最近のアニメには結構詳しいからね」

「トランセイバーのぬいぐるみを取っていたことといい、そういう趣味でもあるのか?」

「演劇部の劇にそれっぽいのがあったりもするから、参考にしてるのよ」

 すると、ゆめはこういう。

「でも、そういうあなたもアニメの非日常に憧れはありそうよね」

「ない、といえば嘘になる。だが俺はそういうのに巻き込まれた奴を、支える役になりたい」

「そういう時は主役になりたがる人は少なくないけどね」

 俺もゆめの意見には同意だ。

 面倒事が嫌いな奴ならそもそもそういう非日常には憧れないだろうし、

そうなれば非日常において起こる事態を解決しようとするだろう。

 俺は脇役としてそういう連中を支える方が尊いと思っているだけだ。

 つまり非日常を自分の手で切り開こうと考える人間に対して、

肩を差し出すのが俺のスタンスなのだ。

「だからこそ、そいつらを支える脇役は必要なんだろ?」

「そうね。もしそういう時があったら、よろしく頼むわよ」

 そうゆめが俺にいってくるまんざらでもない。

 支えてくれるものとして俺を必要とするのなら、

その提案を軽視することなんてできやしないのだ。

「ああ、お前が主役になるのなら俺がお前を支えてやる」

 告白のようないい回しで勘違いさせてしまう可能性もあるが、

ゆめにそこまでの感情は無さそうだし問題ないだろう。

 どこぞのアニメの男性主人公があまりに同性の友達思いなので、

その二人を恋人同士のように騒ぎ立てることもある。

 しかしその二人は恋人同士というわけではない。

 色々と危ない点もあるし、依存している部分もある。

 だがそれはあくまでも友人に対するそれだと思うので、

恋だと思うのは腐女子特有の飛躍した妄想だろう。

 別の作品では『愛』を理由に世界を思い通りに変えてしまったケースもあるが、

それはあくまで博愛であって恋愛ではないと思う。

 公式の暴走だとかいっているが受け手の過剰反応だ。

 百合豚と腐女子はアニメの表現を都合よく曲解しすぎで、

正直な話そういうのはブログにでも書いていればいいと思う。

 仮に恋愛だとするなら曖昧にせず、公式の方から明確な答えを出せばいい。

 と思うのだが製作者は色んな層に配慮しなければならないので仕方ないかもしれない。

 とか考えていると、夏葵がマットへと上がる。

 彼女の相手もマットに上がり、相対する。

「玉央学園の生徒が先鋒次鋒ともに勝利しましたが、そのまま勝つのは許されませんでした」

「茜口台学園の中堅によって勝負はまだ決まらないという状況です」

「玉央学園の副将我満夏葵。茜口台学園の副将、関塚江里子せきづかえりこ

「勝ちを決めたい玉央学園と、逆転したい茜口台学園のせめぎあいが見物です」

「それでは、試合開始です」

 審判の合図と共に、二人は構える。

「シルバーロッド!」

 夏葵は杖を召喚する。

「なら、ウッドソード!」

 江里子は木の葉で出来た剣を形成する。

「木属性なのね。ウッドストリームには気をつけないと……」

 ウッドストリームは手から木の葉を勢い良く放ち、

その勢いで相手にダメージを与える技だ。

 木属性は氷属性と似たような運用が為されることが多いものの、

衝撃を与えるか冷気を与えるかの違いがある。

「でも、金属性なら距離は取りずらいわよね?」

「そうでもないわ。この杖ならリーチはある」

「上手く当てなきゃそれは決定打にはならない」

 江里子がそういうと、二人は膠着状態に陥る。

 だが、夏葵は咄嗟に杖を投げる。

「ロッドスロー!」

 投げられた杖はそのまま木でできた剣で弾き落とされる。

「弾くと思ったわ。だから弾ける辺りに動いていたのよ」

「弾かれることも、計算に入れていたというの!?」

 夏葵は江里子の隙を突き、杖をクリーンヒットさせる。

「うっ!?」

 それを見た審判はすかさず宣言する。

「勝負ありです」

 戦いが終わり、夏葵は江里子にこういう。

「正直な話、さっきのが弾かれなかったらどうしようと思っていたわ」

「まあ、あそこでああいう手に出れるのは大胆でいいと思うわ」

 勝負は決まったが、かといって俺の出番がなくなるわけではない。

 エキシビションを兼ねて、主峰同士の戦いが行われるからだ。


続く

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