表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/61

地方大会ベスト16・中堅

 俺は和久井真彦。至って普通の脇役だ。

 次鋒の由莉も航輝に勝利し、随分と幸先がいい。

「さすがは楓の妹だけあって、中々の実力だった」

「今回は運が良かっただけよ」

 由莉も健闘をたたえあってから俺達のところに戻ってきた。

「いや、しかしこうなると俺の出番が来る前に勝負が決まりそうだな」

 そういう俺に対し、幸美はこういう。

「そう簡単に行くとは思えないわ。私が勝てるなんて保証はどこにもないから」

「びびっているのか?」

「そういうわけじゃないけど、過度な期待はしない方がいいわよ」

 彼女のいうことはもっともだが、

負けた際のいいわけのような気もして今一腑に落ちない。

 そう思っていると、夏葵はこういう。

「まあ、あなたらしい考えだと思うわ。けど、どうせなら勝ってきてね」

 それを聞いた幸美は、何もいわずにマットへと向かう。

 彼女と相対した相手も、またマットに上がっていた。

「玉央学園の生徒が先鋒次鋒ともに勝利するという破竹の勢いとなっています」

「茜口台学園の生徒はそれを止められるんでしょうか」

「玉央学園の中堅高見澤幸美。茜口台学園の中堅、上杉知美うえすぎかずみ

「和美選手は茜口台学園の中では唯一の残留組。その意地を見せられるんでしょうか?」

 それを聞いた幸美はこういう。

「茜口台学園の古株、といったところかしら?」

「二年だけだから、そうでもないかもね」

 ちなみに、魔道大会では中高混合でも同じ部に所属していればチームを組める。

 というか俺の住む国は中高はどこもエスカレーター式であり、

それゆえ中高一貫である。

 私立なら小学校を卒業する時に受験があるが、

公立なら中学受験は受けなくても良い。

 これは小中まとめて義務教育となっているからだ。

 中学卒業後は仕事に就ければそこに就く選択肢もあるが、

基本的にはそのまま高校に進学する。

 昔はエスカレーター式でなかったらしい。

 だが『どうせみんな高校行くんだったらエスカレーター式でいい』

という考えで今に至っているという。

 ともかく魔道においては若さゆえの柔軟さで戦える中等部の生徒と、

経験を生かして戦う高等部の生徒で優劣が付けづらい。

 ゆえに中高どちらの所属だろうと問題とならないのだが、

2年『だけ』となると跨って所属していた可能性は高く高等部の生徒であろう。

 身体的にいえば魔道を取り組んでいればそこまで差異は出ず、

せいぜいが誤差程度に収まるのも理由の一つだ。

「まあ、油断はしないわ。それじゃあ、行くわよ」

「分かってるわ。掛かってきなさい!」

 和美がそういうのにあわせ、審判が合図をする。

「それでは、試合開始です」

 先に動いたのは幸美だった。

「スノーホワイト!」

 幸美の周りに、冷気が充満していく。

「そうは行かないわ。ウオーターカッター!」

 水で出来た刃が、冷気で凍らされるより先に幸美を襲わんとする。

 幸美はそれをどうにかかわす。

「水属性の使い手……水は凍らされることもあれば勢いで氷を溶かすこともある」

「相性は互角、といいたいのね。実際その通りだからどうともいえないけど」

「なら、勢いで殺されないようにしないといけないわね」

 そういいつつ、二人は距離を取る。

 お互い、上手く間合いが取れないようだ。

 幸美はフリージングランスを出していないが、

あえて出さないことで牽制しているのかもしれない。

「ウオーターストリーム!」

 和美の拳から水流が迸る。

 どうやら切り札として取っておいたようだ。

「フリージングランサー!」

 それに対し幸美も拳から氷の柱を放ち対抗する。

 水と氷はお互いに弾けていった。

「とっさに対抗する辺りは流石っていいたいけど!」

「負けられない、というわけね」

 お互いにお互い牽制しあい、中々勝負に出ようとしない。

 このままだと延長にもつれてしまいかねない。

 空手と違い魔道は割かし実践性を重視しており、

指導に当たるものは存在しない。

 故に相対する選手がにらみ合うケースも存在する。

 とはいえあまりに長いと延長した上で決着がつかず、

その結果引き分けを宣言される。

 引き分けの後で相手が二勝した場合、主峰が負けなので相手の勝ちだ。

 このまま二度引き分けたなら勝ち数の関係でこちらの勝ちとなる。

 ちなみに二勝二敗で主峰が引き分けなら、

勝利した試合による得点制が採用される。

 全試合引き分けなら、主峰同士による指導ありのサドンデスとなる。

 とかいっていると、幸美が動く。

「食らいなさい、フリージングランス!」

 彼女はそういい、氷の槍を投げる。

 だが、和美はジャンプしてかわしつつ上からこういう。

「ウオーターストリーム!」

 上から放たれる和美の水流に、

ランスで隙を作ろうと画策した幸美はさすがに対抗策が取れない。

「うわっ!?」

 そのまま彼女は水流をくらってしまう。

「勝負ありです。かなり膠着した戦いでしたね」

 審判の宣言を聞いた和美はこういう。

「なかなか踏み込めなかった……ああやって虚を突くしかなかったわ」

「あなたは結構離れしているのね」

 負けてしまった幸美だが、落ち込まず冷静にそう返すのだった。


続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ