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地方大会ベスト16・次鋒

 俺は和久井真彦。至って普通の脇役だ。

 トーナメントはまず先鋒であるゆめが勝利し、幸先のいいスタートを切る。

 そして、その次に次鋒の由莉がマットへと向かっていた。

 相手方の次鋒も彼女に相対していた。

「初戦からすごい戦いを見せてくれますね」

「勝ったのは玉央学園の先鋒でしたが、茜口台学園の先鋒も中々の力を見せてくれました。

「玉央学園の次鋒三枝由莉。茜口台学園の次鋒、野瀬航輝のせこうき

「三枝という名前から、あの三枝楓と関係があるんじゃないかって噂ですがはっきりいいましょう」

「どうやら、この由莉という少女は楓の双子の妹らしいです」

 さすがに、審判も一卵性双生児であることはいわなかった。

 一卵性双生児の男女は数が少なすぎて、こんなところでいちいちそれを説明してはいられない。

 なので無用な混乱を避けたいのであればいわないのが一番なのだ。

 すると、会場からどよめきが走る。

「あの三枝楓の妹だって!?」

「だが、兄に迫るかどうかなんて分からない。恐らく二卵性だろうしな」

「仮に一卵性の男女だろうと属性は違う可能性だってあるしな」

 実際、一卵性の双子でも属性が異なるケースは多々ある。

 その手の双子が性格に違いが出てくるくるような感じで、

得意とする属性もまた変化してくるのだ。

 だから楓が無属性で由莉が風属性でもおかしくはなかったわけだが。

 むろん同じ属性を扱い同属性の合わせ技を得意とするケースもあるというが、

一対一を基本とするこういった試合には出ないだろうし今は関係ない。

「一卵性双生児って性別が一緒じゃなかったっけ」

「それについては後で話す。今説明しても試合の邪魔だ」

 動揺する会場をよそに、審判がこういう。

「それでは、試合開始です」

 すると、航輝はこういう。

「なるほど、あの楓の妹か。なら、見くべれない相手だな」

「私が何者だろうと、見くびる理由にならないと思うわよ」

「ともかく、行くぞ!」

「分かったわ。戦うメイドさんの底力、見せてあげるからね!」

 先手を取ったのは航輝だった。

 無論、由莉の不意を突いたわけではない。

 ちゃんと彼女が構えたのを見てから攻撃を仕掛けており、

きちんとした性格だというのが伺える。

「サンドスプリーム!」

 航輝の手から拡散して放たれる砂が由莉を襲う。

「そんな攻撃ぐらいで!ウインドストリーム!」

 由莉から集中的に放たれる風は、放たれた砂をはじきとばす。

「風属性か!だとすればいまの攻撃は悪手だったな」

 それを見た審判はこういう。

「由莉選手、早くも抜群を取りました。属性が分からないのはお互い様ですし、これは航輝選手のミスですね」

「うう、いわれたら恥ずかしいが。仕方あるまい」

「どうするつもりか分からないけど、今仕掛けるのは危なそうね」

「サンドバースト!」

 地面が隆起して盛り上がるように発生した。

 この場がマットでなければまさに地面がいきなり隆起したかのような感じである。

 だが、由莉は難なくそれをかわす。

「視界を隆起した地面……厳密に地面が隆起したわけじゃないけど、ともかくさえぎるつもりなら!」

「サンドクラッシュ!」

 隆起した地面はそのまま崩壊する。

 山崩れのようにはならず、そのまま砂となって消えていく。

 盛り上げた土をそのまま山崩れに出来る術者が居ないことは無いが、

どのみち魔力をとてつもなく消耗するため砂に返すのが一番ベターだ。

「ウインドサーチ!」

 由莉は風で航輝の居る方向を掴もうとする。

「その砂なら、風だけじゃなくて砂ですら君の居場所を却って知らせることになる」

「でも、その方向に何か仕掛けている可能性だってある。ウインドハーケン!」

 切り裂くような風が、航輝の居ると目される方向へと放たれる。

 彼がどこに居るのか、視界が砂でさえぎられ俺には見えない。

 魔道大会を行うさいはこういう時に備えて、審判にはクリアスコープが配られており視界は確保される。

 なので審判の視界がさえぎられても反則とはならないのだが、

試合がどうなっているのか声でしか分からないのは残念だ。

「ぐふっ!?」

 この声は男性のものだ。

 たとえ審判だったとしても視界がさえぎられてしまっている場合反則にはならないので、

俺にとってはどっちだろうと構わないのだが。

 しかし由莉はそれを気にするだろう。

 最も審判は辛うじて見えるので当たったのが航輝であることは間違いないだろう。

「飛び込んできたらサンドバーストで弾き飛ばそうと思ったんだがな……中々やるな」

 砂はまだ晴れないが、ダメージを食らっていたらしい。

 実際、審判の声が聞こえてくる。

「由莉選手、再び抜群を取りました。しかし航輝選手は今回待ちに徹してました。切り替えが早いですね」

 その後戦いは膠着状態に入る。

 由莉はうかつに飛び込めないだろうし、航輝も接近しようとするが全て気付かれている。

 しかも砂も晴れており、視界をさえぎるものは無くなった。

「そこまで!勝者は由莉選手です」

 俺は由莉を応援していたが、航輝にとって二度の読み負けは痛かったのだろう。

 彼にとっては無念の敗北だったに違いない。


続く

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