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地方大会ベスト16・先鋒

 俺は和久井真彦。至って普通の脇役だ。

 トーナメントがいよいよ始まり、

先鋒であるゆめがマットに立つ。

 相手方の先鋒も彼女に向かうと、審判はこういう。

「さて、初戦は玉央学園と茜口台学園の戦いとなります」

「玉央学園は今回が初参戦、茜口台学園もメンバーの四人が一新」

「どちらも実力は全くの未知数、予測不能の対決です」

「玉央学園の先鋒廣瀬ゆめ。茜口台学園の先鋒、梶谷かじたにはづき」

「先鋒二人の実力だけでは見通せないとはいえ、注目の戦いとなるでしょう」

「それでは、試合開始です!」

 二人は向かい合う。

「サンダースプリーム!」

 ゆめから雷が拡散して放たれる。

 どうやら先手を狙ったようだ。

「グレイブランス!」

 はづきは槍を避雷針代わりに刺し込み、それを防ぐ。

 どうやら、彼女は金属性の使い手らしい。

 幸美にとっては戦いにくい相手であるし、由莉にとっては戦いやすい相手だ。

 しかし、団体戦といっても戦いは一対一。

 相性的に互角の二人は、本人の実力しだいで結果が変わってくる。

「でも、槍を避雷針にしたらすぐには攻撃できないわよね?」

 ゆめはそういってはづきに近づく。

 はづきもそのまま槍に手を伸ばす。

「サンダーランサー!」

 槍のような雷がゆめの右の拳から放たれる。

 はづきはとっさにやりから飛びのくが、場外に飛んでしまう。

「はづき選手、思わず飛びのいてしまいました。ゆめに有効1のポイントが入ります」

 審判も何故か実況交じりだが、そこはあまり気にならない。

 気になるのは、はづき選手があまり動きを見せないことだ。

 ゆめに押されているだけならいいのだが、そうでないのならまずいかもしれない。

「ランスに近づけない以上は……シルバーロッド!」

「杖を取り出したって!」

 ゆめが構えるのに合わせ、はづきがつえをゆめに投げる。

「サンダーシュート!」

 彼女は右足から雷を放つ。

 こうすることで腕を組んで杖を防ぎつつ、

槍を取ろうとする動きを牽制できるからだ。

 だが、はづきは槍に近づいただけだった。

「槍を取る前に雷を撃とうとするのは見えていたわ。なら、取らなきゃいいのよ」

「はづき選手、有効1です。ゆめ選手も中々ですが、これは上手く読み勝ちましたね」

 審判も冷静にそう告げる。

「中々やるわね。でも、負けられないわ」

「負けられないのは私もよ!」

 はづきがそういい、ゆめに近づく。

 しかし、中々刺そうとはしない。

 うかつに近づけば雷を撃たれるからだ。

 無論、ゆめも相手が槍を持っている以上うかつに近づけない。

 槍で直撃させることはないが、

それでも刺されることは警戒しなくてはならない。

 槍の一撃は一気に勝負ありが決まってしまうからだ。

「この位置からじゃ、狙いにくいわね……」

 ゆめも思わず弱音が出る。

 しかしお互いに決め手が無いとなると、

延長にもつれこむ可能性もでてくる。

 そう思った時である。

 ゆめが左足をはづきの方へ向けたのだ。

「フェイントで回し蹴りをかます気なら!」

 はづきはそういって一歩下がる。

 もしも回し蹴りが撃たれるなら、そこからカウンターを狙えるからだ。

 しかし、ゆめはこういう。

「サンダーランサー!」

 今度は左の拳から、雷の槍が放たれる。

「しまった!」

 突然の出来事に、槍を放り捨てるしかないはづき。

 槍を持ったままだと身体に直接雷が流れて危険だということなのだが、

つまりかわせないことを悟ったという意味にもなる。

「うわあああ!」

 はづきに雷の槍が直撃する。

 無論ダメージは抑えられるのだが、痛いものは痛いのだろう。

 もっとも、それで死ぬようなことは当然無いのだが。

「勝負ありです。さすがに白熱した戦いでした」

 次鋒の出番が来る前に、はづきはこういう。

「さすがね……一歩足りなかったみたいだわ」

「私も、初戦から中々冷や汗をかいたわ」

 二人は固く握手をかわした。

 戦い終わった後はこうして健闘を称えあった方がいい。

 俺もそうするつもりだが、さすがに緊張するかもしれないな。

 ともかく、ゆめは俺達のところに戻ってくる。

「初戦で勝てて良かったわ」

「さすがだな、ゆめ」

「まあ、私の友人だしね」

 由莉は相変わらずだが、親しい故だろう。

 そう思っていると、幸美がこういう。

「先鋒からこういう戦いをやっているのを見ると、緊張したりしないの?」

「別に?そういうあなたこそ緊張しているんじゃない」

 そういう夏葵に対し、俺がこういう。

「緊張していえることじゃないとは思うが?」

 すると夏葵はこういう。

「ともかく、次は次鋒の由莉よ。準備はいい?」

「もちろんだよ。親友として、ゆめには負けられないからね」

 それを聞いて俺はこういう。

「三勝すれば俺まで回っても消化試合だし、そういう点では期待している」

「あくまでも脇役志望だから?」

 由莉がそう問いただすので、俺はこう返した。

「まあ、初戦で負けるのは主峰を任されている以上できるだけさけるがな」

「負けるときは負ける、ということだね。でも大丈夫。やれるだけはやるから」

 そういって由莉はマットへと上がっていくのだった。


続く

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