トーナメント当日とトーナメント表
俺は和久井真彦。至って普通の脇役だ。
トーナメントに備えて俺達は二学期の間も練習していた。
もちろん授業にもちゃんとでていたが、
それはそれこれはこれである。
そしてトーナメント当日。
地方大会ではあるが、俺の居る地方は魔道の団体戦における強豪校が多い。
故にこの大会で優勝すれば、
全国大会で上位3位に入れるとまでいわれている。
もちろん番狂わせだってあるし、そう単純ではない。
しかし俺の居る地方の魔道トーナメントの団体戦で優勝した者は、
少なくとも惨敗した者が居ない。
なので、これから俺達が戦う地方大会は全国大会にだってひけを取らない。
ここで優勝すれば魔道部にも箔が付くだろうし、
この地方大会で優勝することは目標としては充分な物だ。
そう思いつつ、俺はバスへと乗り込む。
そこには、他の部員も乗っていた。
「しかしさ、六人しか居ないのにこんなでかいバスが必要なのか?」
大会の会場までバスがでるのは、
地方大会であるため交通の便を気にしないための配慮だ。
とはいえ、いくらなんでも六人が乗るためには広すぎる。
すると、それについて夏葵がこういう。
「この場合、わざわざ小さいバスを用意するほうが手間なのよ」
大は小を兼ねる、ということだろうか。
分かるような気はするが、あんまり納得は行かない。
それを察したのかどうかは分からないが、ゆめも俺にこういってくる。
「バスを頼むなら一括で頼んだほうが手続きが楽だしね」
いっていることは夏葵とそう変わらないといえるが、
具体的に何がどう楽なのか引き合いに出してくれた方が分かりやすいかもしれない。
「さて、トーナメント表の方はどうなっているんだろうね」
「由莉は始業式の日も気にしていたわね」
穂花のいう通りではあるが、今ここで出すことでもない気はする。
「面倒だけど、出ると決めた以上は見ないとね」
幸美がそういうと、夏葵はこういう。
「さて、開くわよ」
トーナメント表を噛み砕いて説明するとこうなる。
ベスト16
A:玉央学園 VS 茜口台学園
B:鞍出川学園 VS 南宿学園
C:旗井山学園 VS 瓦梅寺学園
D:近笹川学園 VS 狛幸野学園
E:荒丘学園 VS 正香学園
F:旗井山学園 VS 七岬学園
G:竹野学園 VS 舞川学園
H:八笠台学園 VS 生延学園
ベスト8
I:A勝利チームVSB勝利チーム
J:C勝利チームVSD勝利チーム
K:E勝利チームVSF勝利チーム
L:G勝利チームVSH勝利チーム
準決勝
M:I勝利チームVSJ勝利チーム
N:K勝利チームVSL勝利チーム
3位決定戦
O:M敗北チームVSN敗北チーム
決勝
P:M勝利チームVSN勝利チーム
「由莉のお兄さんはどこに通っているんだっけ?」
真っ先に出たのはこれである。
どこが強いとかはあまり分からないので、
由莉の兄が居る学園のことが真っ先に頭をよぎったのだ。
「八笠台学園よ。私の実家の近くだから」
「ってことは、ホームタウンに住んでいるってわけか」
「そうなるわね」
その間にもバスは進む。
試合の開かれる上下競技場に向かい、
バスが揺れている。
初めてのトーナメントなので不安だが、
全力を出し切ろう。
全力を出せずに負けてしまうのは、
一番駄目なパターンだ。
あくまで試合だから相手を殺したら失格となるため、
死ぬことはないのだがかといってそうもいってられない。
命は保障されているが、
再起不能にしない限りは全治二週間の怪我くらいなら許される。
精神的な挫折も失格とならないが、
あまりに酷いと指定が入ったりする。
だが、指定が入ったところで挫折から立ち直れるとも限らない。
ゆえに挫折しないためにも全力を出し、
自分が目指すべき場所をきっちり決めておく。
負けたとしてもそうやって這い上がればいい。
それは主役だろうと脇役だろうと変わらない。
脇役だからって簡単に諦めていい理由とはならない。
時に心が折れそうな主役を叱咤激励するのも、
脇役の役目であるからだ。
ゆえに主役より脇役のメンタルが強くても一向に問題はないし、
その方が魅力的な脇役として捉えられる。
脇役はあくまで主役を支え、引き立たせる物である。
さしみでいうところの醤油であり、
トンカツにかけるソースでもある。
それが脇役の立ち位置であり主役は刺身に使われている魚なり、
トンカツにおいてはトンカツそのものであるのだ。
トンカツはソース無しで食べる人間は少ないし、
刺身の醤油だってまたしかりだ。
から揚げにレモンはかける派とかけない派で分かれるので置いておく。
ちなみに俺はかける派だ。
やはりレモンの酸味はからあげによくあうからだ。
なんて考えているうちに、バスは競技場へとたどり着く。
俺たちはバスを降り、その中へと入っていく。
いよいよ、俺達の目標である地方大会が始まろうとしていたのだ。
続く




