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夏休み明けに

 俺は和久井真彦。至って普通の脇役だ。

 合宿が終わった後は何事もなく夏休みを過ごしていた。

 親元に帰ったり、墓参りしたり。

 まあ、ごくごく普通の夏休みだったと思う。

 ともかく、そんな風に過ごした夏休みはあっという間に過ぎていった。

 あの合宿の一週間といい、学生は充実していると思う。

 学生である俺がいうのもどうかとは思うのだが、

学生というのは自由な時間が長い期間だ。

 ゆえにそれをどう使うか、それを大切にしないといけないのである。

 無論これは教師の受け売りなのだが、

随分と的を射ていると思う。

 自由に使えるからこそ、その時間は非常に尊い物なのだから。

 そんなことはともかく、

俺は始業式に出るため学校へと向かう。

 校長先生の話は相変わらず長い。

 まあ、悪い話じゃないとも思うのだがどうも退屈感の方が優位に立ってしまう。

 部活で仲間と共に切磋琢磨していたら尚更だ。

 そして始業式も終わり、部室に向かう。

 するとそこには、まず穂花が居るのが見えた。

「今日からマネージャーをやるんだったな」

 二学期になっても来ない、という手も使おうと思えば使えたはずだ。

 しかしそれをしなかった辺り、再スタートしたいという意志は本物らしい。

「そうね。これからもよろしくお願いするわ」

 それを聞いていたのか、俺より先に来ていた夏葵がこういう。

「魔道のルールはちゃんと覚えたわよね?審判、やって貰うわよ」

「ええ。しっかり覚えてきたわ」

 魔道を使う俺達とあれだけの戦いをしたんだし、

彼女にはそれを見るだけの力はあるだろう。

 そう思っているとゆめと由莉、そして幸美が入ってくる。

「来ていたのね、穂花」

 そういったのは幸美だった。

「まあ、これからもよろしくね」

「穂花のことはまだ煮え切らないところもあるけど、トーナメントはどうなってるの?」

 穂花の改めての紹介に対し、そういったのは由莉だった。

「それは今いうことじゃないような気はするけど……」

 ゆめがそういうのも無理は無いが、由莉はかなり真面目な性格だ。

 故にすぐにトーナメントのことを口に出したのだろう。

 ちょっと突飛でもなかったことは否定しきれないが。

「それが分かるのはトーナメントの当日で、表が学校に来るのよ」

「事前の調査や買収をさけるためなのかしら」

 そういったのは幸美だった。

「私のような人が色気で買収したりしないため、ってこと?」

 穂花は色気を出したくて出しているわけでないのかもしれないが、

自分でそういうのも何かが間違っているとしか思えない。

 何が間違っているのか上手く説明できないのだが、

何かが違うのだ。

「それもあるんじゃないかな」

 なので、俺はとりあえずそう返すしかなかった。

「で、これからどうするの?」

 そういったのはゆめだった。

「演劇部で何かあったりの?」

「大会への参加は快諾してもらえたけど、やっぱり演劇部のほうの練習もやらないと」

「そうだったのね。なら、手短に練習しよう」

 それを聞いた穂花はこういう。

「随分と忙しいのね」

 夏葵は既にゆめを連れて空打ちを始めていたので、

代わりに俺がこう答えた。

「まあ、兼部の奴が二人も居たらこうなるさ」

「ゆめは演劇部で、由莉は調理部だもんね」

「調理部に襲撃してきたから、そこは忘れないんだな」

「まあね……でも、私はあくまでリア充爆散団の団員としてああいうことをやっただけ」

「酷いことをしたとはいえ、やったことはやったことで割り切っているわけか」

「まあ、過ぎたことは取り戻せないからね」

 俺もその考えには同意した。

 過ぎたことは何があっても取り戻せない。

 だからこそ人は後悔しつつ、より良い明日を目指すしかない。

 誤ちをあまり思い出したくないと思ってしまうのも、

それが若気の至りであったなら尚更である。

 少年法の闇がよく取りざたされるが、

凶悪犯罪でないならそういう過去を背負う必要はないと思う。

 少なくとも突発的な犯罪であれば少年であれば更生の可能性は高いだろうし、

若者の未来をそう簡単に見限らないで欲しいと思う。

 根っこから捻じ曲がったクズのような人間も居るが、

そういう人間のために法を変えることは難しい。

 法というものはある程度のバランスを取らなければならず、

結果として全てのケースを想定しえない物にならざるを得ない。

 同姓婚を認めるかどうかも、伝統的にそれを認めてない国ではかなりの議論になっていると聞く。

 俺達の住む国では当たり前のように同性カップルは闊歩している。

 俺にその気があると思われたらさすがにそれはないといい返したくはなるが、

そういうのは当人達が納得すればそれでいいと思う。

 過ぎたことは取り戻せないということからはだいぶ逸れてしまったが、

法律という意味では繋がった考えのはずだ。

 頭の中で考えていることだし、

そのへんは飛躍したって仕方ないのだ。

「そうだな。これからも、頑張ろうぜ」

 ともかく、俺にできることはこういって穂花をはげますくらいだ。

 だがそうしてやれる奴が居るだけでも、

時として支えになったりもする物である。


続く

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