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夏練六日目

 俺は和久井真彦。至って普通の脇役だ。

 夏練も六日目になり、俺は夏葵に呼ばれていた。

「今日はお好み焼き作るから、付いてきて」

「分かった」

 というわけで俺は夏葵と一緒にスーパーへと向かう。

「前よりは少なめにしないと」

 食品売り場について早々そういう辺り、彼女はこういうのには慎重らしい。

 まあ、どうでもいいところでもあったりはするのだが。

 それはともかく、である。

 俺はお好み焼きに必要な具財を聞き出すためにこういった。

「ところで、西焼きと東焼きのどっちにするんだ?」

 西焼きは重ねて蒸し焼きにするタイプのお好み焼きで、

東焼きは混ぜるタイプのお好み焼きだ。

 起源自体が違うので、どちらもお好み焼きと呼ばれる。

 区別の必要なときに西焼きと東焼きといった風な呼ばれ方をするのだが、

 どっちかを西方風とか東方風とかいうと揉める原因にもなるので、

そのへんは致し方ないだろう。

「西焼きにするわ。その方がサイズを大きくするのに苦労しないから」

 夏葵は好みではなくそういうので焼き方を考えるタイプじゃないと思うが、

部長だしそのくらいはできるのだろう。

「なら、キャベツをたっぷりとベーコンに天カスだな」

「それと、オイスターソースと青海苔にマヨネーズもね」

「小麦粉は当然入れておくとするぜ」

 という会話の後、俺達はいい出した食材を片っ端からカゴに入れていく。

 無論量は考えているが、それもそれなりの量になる。

 そしてカゴを載せたカートをレジに向けて押していく。

 順番を幾ばくか待ち、そして俺達の番になる。

「2950オラクルになります」

 清算は夏葵の仕事だ。ギフトカードをすばやく出し、

それを済ませる。

「さあ、袋を持って」

 俺は買ったものが満載になった袋を持って海水浴場へと向かう。

 そんなさなか、俺は夏葵にこういわれる。

「ねえ、真彦」

「どうしたんだ?」

「純粋な水って電気を通さないらしいわね」

「そういや科学の授業でいってたな」

「でも、魔法で作り出した水は雷を良く通す」

「それについては様々な説があるな。そもそも雷は雨雲から落ちるからだとか」

 俺はもう二つほど説を知っていた。

「あるいは、魔力が電気の誘導源になっているんじゃないかとか」

「そして最後に、術者自体が電気を通す原因なんじゃないかっていう説」

 それを聞いた夏葵はこういう。

「あまり議論されないことだけどね。水は雷に弱い、ということ結果があるわけだし」

「でも、そういう研究から新しい発見が見つかることがある」

 今では当たり前に使われる魔術だって、

昔はどんなことができるか試行錯誤を繰り返したのだろう。

 変化呪文で失敗し、中途半端な姿になったことが原因で死亡した者。

 炎を纏う呪文で焼死してしまった者。

 教科書にすら載っていないが、そういう人間だっていたのだろう。

 爆発呪文ではなく爆薬を使って掘削した方が安全だと思い、

結果死の商人といわれてしまった人間も居る。

 万有引力を発見するためにリンゴの木を参照にしたという逸話のある奴だって、

それまで物が落ちることを知らなかったはずがない。

 これには反論として、

『人間の手によらず自然にそれを起こす物としてリンゴの木が出されている』というものがある。

 まあ、それが真相なのかなんて今を生きる俺達には全く関係ない。

 そういうのは学者に任せておけばいいのだ。

「さあ、行くわよ」

 そういって夏葵は、海水浴場へと駆け出していく。

 俺もすかさず、彼女の後を追うのだった。

 そして海遊びをして、夜になる。

 俺は、海の家で鉄板を引いた。

「さあ、お好み焼きを作るわよ。焼き方は西焼きね」

 それを聞いた由莉はこういう。

「なら、ひっくり返すのは私に任せて。重ねるんだから、そういうのにはコツが居るの」

 レジ袋に移された上で水と混ぜられた小麦粉が、

鉄板の上に敷かれて行く。

 一番下の層なのだが、ひっくり返すのでこれが一番上になる。

 天カスとベーコンが小麦粉の上に敷かれ、

それをキャベツで蒸していく。

 時間が流れていく。

 西焼きはそれなりに時間が掛かるが、

夏葵はさむためにもう一つ水と混ぜた小麦粉を敷く。

 それを見た由莉はこういう。

「だいぶ出来てきたわね。なら、やるわよ」

 彼女はそのままお好み焼きをひっくり返す。

 かなり大きめのお好み焼きだが、

彼女は難なくトランクの中にあったヘラでそれを返す。

 豚汁の時といい、調理部の面目躍如といってもいいだろう。

 ともかく、さらに時間が経つとお好み焼きがヘラで後分割される。

「焼きあがったよ」

 由莉がそういうと、俺達は一斉にこういう。

「いただきます」

 お好み焼きは熱々で美味しい。

 ソースの味とマヨネーズの味が混ざり、築けばあっという間に食べてしまう。

 他の四人もみんなそんな感じであり、すぐさま食べ終えてこういう。

「ごちそうさまでした」

 そしてホテルへと向かい、銭湯に入って身体を洗う。

 その後寝る準備をして、俺達はベットに入る。

 明日には家に帰るのだが、

だからこそしっかり眠って体力をつけなければならないのだ。

 そう思いつつ、俺も眠りに付いた。


続く

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