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夏練五日目

 俺は和久井真彦。至って普通の脇役だ。

 昨日夏葵がビーチボールをするといっていたので、

みんな気合が入っていた。

 昼食は昨日夏葵が買っていたサンドイッチにすることとして、

俺達はビーチボールの準備をしていた。

「だが、コートはどうするんだ?」

「コートはこの海水浴場にあるのよ。利用券も持っているわ」

 さすがにそこは夏葵が準備をしていたらしい。

 その早さには思わず舌を巻くくらいだ。

 だが、感心している場合じゃない。

 俺は男なので、さすがに参加者として出るのは難しいだろう。

 そう思い、俺は夏葵にこういう。

「俺が審判をするつもりだが……」

 しかし、夏葵はこう返す。

「男女の差がきになるなら、二対一でやればいいじゃない」

 というわけで、俺は二対一でビーチボールをやることとなった。

 夏葵は随分強引だと思うが、断らない俺もやっぱり俺だと思う。

 そんなことはともかく、相手はゆめと由莉のチームだ。

「さあ、行くぞ」

 ネット越しに彼女達と視線が合う。

「ゆめと由莉、この二人に真彦はどう対処するのかしら」

 得点を砂に書く係りの幸美は冷静にこういう。

 審判は夏葵だ。

 サーブは俺から。

 ボールは相手のコートへと向かい、そのまま戻ってくる。

 打ち合いが続く。

 点を取ったり取られたりの攻防。

 さすがに相手は親友だけあって絶妙のコンビネーションだ。

 正直、対応するのも一苦労で押され気味だ。

 一セットずつ取ったのだが、

俺が有利だったことは一度も無い。

 相手の勢いが強すぎアウトになったり、

風にボールがあおられアウトゾーンまで流れたり。

 そういったことに助けられてどうにか互角なのだ。

 だが、簡単には負けられない。

 俺はあくまでも脇役だが、

団体戦で主将を任されている以上そう簡単に負けては後が思いやられる。

 脇役だって頑張るときは頑張らないと、

主役の足手まといになるだけだ。

 それは俺にとって好ましくないことだ。

 俺が目指す脇役はギャグキャラじゃない。

 あくまでも主役を支える脇役だ。

 主役の越えるべき壁となるか主役の右腕になるかは、

その時の状況次第だ。

 俺がどちらかを選ぶ権利は無いものだと思うし、

そういうのはさすがに傲慢だと思う。

 というわけで二人に挑むが、さすがに風のことも計算し出すようになったため勝てない。

 どうにか対処したため惜敗にとどめるのがやっとだった。

 だが、ゆめにはこういわれる。

「一人で良くここまでやったわね」

「脇役にも意地って物があるんだ。負け前提の勝負だって受けるが、そう簡単に負けられもしない」

 そんな俺に由莉はこういう。

「その気持ちは、何となく分かる気がするよ」

 ともかく、ビーチボール対決は続いていく。

 色々な形の勝負があり、それはまあ白熱していた。

 しかし時は流れ、もう夕暮れ時が近づいていた。

 俺が幸美と由莉のチームを僅差で下すと、

夏葵がこういう。

「それじゃあ、ビーチボールは止めにして。そろそろ海の家に行くわよ」

 というわけで俺達は海の家へと向かう。

 そこに出されるカレーを食べるためだ。

 粉っぽいわけではないらしいのでそれなりに期待していた。

 夏葵が食券をだすと、食券に判子が押されて帰ってくる。

 注文を受けてから出す仕組みらしく、

割と力を入れているということが伺える。

 でなければ、さすがに客足は途絶えてしまうだろう。

 カレー以外も売っているので語弊もあるが、

カレーを食べる客はそれなりに見受けられる。

 つまり、この海の家のカレーを食べたいと思わせるだけの力はあるのだ。

 そう思いつつカレーを待つ。

 しばらく時間が経つと、夏葵が呼ばれる。

「みんな、来て」

 夏葵が俺を含めた四人を呼んだ。

 カレーを持つのは、一人一個ずつにした方が安定するからだ。

「悪くない匂いね」

 そういったのは幸美だった。

 こういうときもクールに済ますのは彼女らしいかな、と思った。

「それじゃあ、みんな」

 夏葵の合図で、俺達は一斉にこういう。

「いただきます」

 カレーを口に頬張る。

 最初に感想をいったのは由莉だった。

「まあ、それなりの味ね。店で出すなら次第店ってところかしら」

「結構辛らつだな」

 俺がこういうと、ゆめが割って入ってくる。

「由莉は調理部だからね。悪意があるわけじゃないわ」

「そうね。まあ、美味しいからいいんじゃない?」

 そういったのは夏葵だった。

「味もそれなり……さすがに粉っぽいカレーはもう受けないのね」

 幸美のクールさは相変わらずだが、特には気にならない。

「俺も中々旨いと思うぞ」

 俺は実直な感想をいった。

 今食べているカレー派家庭の味といった感じだが、

決してまずいというわけではないのだ。

 由莉のいう通り、次第点というのがしっくりくる。

 そこまでいうのも何だから、俺は普通に感想をいっただけだが。

 ともかく俺達はカレーを食べ進め、完食する。

 食器は海の家に返し、そのままホテルへと向かう。

 当然夜にやることは今までの四日間と何ら変わらない。

 枕投げも当然やらず、そのままベットへと向かう。

 明日に備え、とりあえず俺達はそのまま眠りについた。


続く

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