表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/61

夏練二日目・昼

 俺は和久井真彦。至って普通の脇役だ。

 とりあえず俺は他の部員と一緒にスーパーへと買い出ししに行くこととなった。

「だが、今日は何にするんだ?」

「今日は焼きそばよ、焼きそば」

 そういったのは夏葵だった。

「焼きそばか……よく出店なんかで売ってるけど、やっぱり手軽なのかな?」

「ゆめは出店とかも良く行くの?」

「幸美は演劇部の劇に興味がなさそうだから、覚えてないかもしれないけど」

「そういや去年の劇は祭りがテーマだったわね。わざわざ調べたの?」

 それに答えたのはゆめではなく由莉だった。

「私が屋台に連れて行ったのよ。料理の研究も兼ねてね」

「私、そういうのはノリでいいと思ったんだけどね。そういうのは嫌いじゃなかったから断らなかったけど」

 俺はゆめにこう問いただす。

「賑やかなのが好きなのか?」

「じゃなきゃ演劇はやらないわよ。人前であがるような人に演劇は不向きよ」

「そうなのか」

 人前であがる人は確かに演技も身が入らないかもしれないが、やもすれば偏見だ。

 とはいえ経験則であるなら一概に偏見ともいえないわけだし、

そのへんの境界線は難しいところでもある。

「ともかく、焼きそばの具材を買ったら氷を入れてハンバーガーショップに行きましょう」

「それなら、ともかく具材を買わないとな」

というわけで俺はスーパーの中の食材売り場へと向かう。

 小規模ながらゲーセンがあるのでスーパーというべきか百貨店というべきか迷うが、

俺は専門家じゃないしそんなのはどうだっていいだろう。

 ともかくキャベツに豚肉、そして焼きそば用の麺までは普通に買えた。

 しかしソースをウスターにするか、中濃にするか。

 はたまたオイスターという選択肢もある。

 俺は別にどっちだろうと構わないのだが、各個人の好みが分かれそうだ。

 と、思っていると由莉がこういう。

「夏だし、ウスターでがっつり体力をつけた方がいいわ。別に好みってわけじゃないけど……」

 わざわざ断るということは、由莉もどっちでもいい派なのだろう。

 だが料理部の彼女がこういったのだから、好みとは関係なく従おうという空気になる。

 ソースの好みの違いでチームの仲が悪くならないよう状況を考慮して選ぶあたり、

由莉は『戦うメイドさん』を自負するだけあって気遣いもできるようだ。

 というわけでカートを持つ係である俺が、

焼きそばの具財を満載したカゴを載せたそれをレジまで動かしていく。

「3455オラクルになります」

 会計は部長である夏葵が執り行うことになるものの、

出したのはギフトカードだった。

 まあ、大方部費で購入したんだろうしそこに突っ込もうとは思わないが。

 そして袋に氷を入れ、俺達はハンバーガーショップへと向かう。

 まだ11時を過ぎたところだが、並ぶ時間とかを考えたら今のうちに行ったほうがいいだろう。

 あくまでも大会に向けた合宿なので、

ゲーセンは息抜きに留める必要がある。

 部費から合宿費を出している以上、

そこのへんはしっかり切り替えないといけないと思ったからだ。

 前に真面目なことをいったのもそれ絡みだったりする。

 そんなこんなでフードコートに付くと、

夏休みだけあってかハンバーガーショップにはそれなりの行列があった。

「さすがに、並んでるわね」

 そういった幸美に対し、ゆめはこういう。

「今は夏休みだから、それなりに並ぶわよ」

「演劇部の時もやっぱりこういう行列に並んだの?」

「そうね。まあ、待っている間も仕草とか学んだりするから苦じゃないけど」

 すると、ゆめは夏葵にこう聞かれる。

「やっぱり、人によって仕草は違うの?」

「そうだけど、どこがどうなのかってなると説明しにくいっていうか」

「身体で表現するものだから、口じゃ表現できないというわけか」

 俺がそう問いただすと、ゆめはこう答える。

「そうね、そういうのは実際に見せた方が早いわ。さすがに今は人ごみがあるから無理だけど」

「まあ、こんなところでやったら目立つしな」

 ともかく、こんな会話をしていたので行列もスムーズに進んでいるかと思えた。

 実際の速度が速くなっているわけではないのだが。

 すると、由莉がこう切り出す。

「で、何を頼むの?」

「それは私がいうセリフなんだけど……いいわ。ついでだしみんなの注文を聞いておきたいからね」

「俺はBLTバーガーとカラーコーラだな」

 すると、ゆめがこういう。

「私もBLTバーガーで、飲み物はれっちゃんオレンジね」

「私はエッグレタスバーガーとウーロン茶にするわ」

「幸美らしい取り合わせね。私はトマトサンドバーガーとヴェンタメロンよ」

 すると夏葵がこういう。

「みんなの注文は取り揃えたわ」

 そして彼女の順番が来て注文を促されるなり、彼女はこういう。

「BLTバーガー二つと、トマトサンドバーガー二つ。エッグレタスバーガーは一つで」

「ポテト一個に、飲み物はカラーコーラとれっちゃんオレンジ、ウーロン茶にヴェンタメロン」

「それで、私はコップだけ貰うわ」

 すると、レジの人はこういう。

「合計で1700オラクルになります」

 そういわれるなり、やはり夏葵はギフトカードを取り出してそれで清算するのだった。


続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ