夏練二日目・朝
俺は和久井真彦。至って普通の脇役だ。
昨日は色々トラブったが、まあなんとかなった。
朝起きて、俺は夏葵にこういわれる。
「さあ、朝食を食べに行くわよ」
「分かってるって。他の皆は?」
すると、幸美がこういう。
「皆起きてるわよ」
「まじかよ。俺が一番お寝坊だったってわけか?」
すると、ゆめにこういわれる。
「まあ、そう考えるならその通りよ」
だが、由莉はこうフォローする。
「昨日の疲れが溜まってるんだと思うし、あまり弄らないであげた方がいいんじゃないかな?」
「昨日の疲れ、ね……精神的な疲れでもあるの?」
「夏葵やみんなといてつまらないとかじゃないが、慣れてないからな」
「女四人に男一人だもんね、苦労は察するわ」
ゆめは俺に同情した。別にそういうのが欲しいわけじゃないんだが……
ともかく、俺達はエレベーターで2階に降りる。
このホテルは3階がホールで2階がレストランなのだ。
朝食はパンにハムエッグサラダとシンプルな物だ。
さすがにこれは調べた通りで一安心だ。
まあ、単にリサーチ不足なだけだといわれればそれまでだが。
挨拶もしっかりしたのだが、朝食はただ食べるだけだったので特に何かあるわけでもない。
なので、俺は朝食を食べ終えてそのままチェックアウトした。
そして、夏葵がこういい出した。
「とりあえず、買出しに行くわよ」
「食材の取り置きはできないからな……」
すると、ゆめがこういう。
「でもさ、まだこの近くのスーパーは開いてないよ」
「今8時半だしね」
由莉もこう続けた。
「事前にいっておいただけにしては今から買出しに行くようだったしね」
「幸美まで……たしかにいい方が悪かったわね」
というわけだが、海辺に行くほど時間があるわけでもない。
そこで、ゆりから提案がある。
「どうせだし、燃料とかを取りに行った海の家のメニューをもう一度見てみる?」
「お前はそういう話題を良く出すよな。やっぱり演劇部って身体を使うのか?」
「発声練習とか踊りの練習とかは案外体力を使うからね」
そして由莉もこういう。
「それに魔道部との兼部までやってるんだから、体力には気をつかわないといけないことになるわ」
「それもそうか……」
そんな俺に、幸美がこういう。
「まあ、やることも特段あるわけでないからここはゆめに従うのが賢明ね」
「私もそう思うわ」
「部長の同意も得たわけだし、とりあえずいくか。海の家に」
そして俺達は海の家へと向かう。
そこのメニューにはカキ氷とカレー、フライドポテトやフランクフルトが載っていた。
無論、ジュースも一緒に書いてあった。
「結構あるのね」
そういったのは幸美だった。
「そりゃそうだろ、海の家なんだし」
「でも、大抵こういうとこのカレーって粉っぽいのよね」
そういったのは夏葵だったが、ゆめはこう反論する。
「ここのカレーはそれなりの味らしいわ。絶品ってわけじゃないけど、家庭の味って評判よ」
「外食なのに家庭の味ってどうなんだか……」
そういう俺に由莉はこういう。
「まあ、ホテルで泊まる人向けだろうね」
「ホームシックに掛かる人が居るのかもしれないってことだろうけど、それホテルに泊まっている意味あるの?」
そういったのは幸美だった。
「仕事で泊まるにしては割高だが、旅行で泊まる奴がものめずらしさに食べたくなるような味じゃないかな」
「なんていうか結構ピンポイントね、それ」
「まあ、幸美の気持ちもわからなくは無い。実際食べてないから何ともいえないが……」
すると夏葵がこういう。
「なら、昼食はここで食べる?」
「近くのスーパーにゲーセンもあるし、そこで食べたいなって思ってるとこだ」
俺がそう返すと、ゆめがこういう。
「ゲーセンか……私と二人で行って物足りなかったの?」
「確かに合宿ではあるけど、息抜きだって必要だと思うな」
昨日真面目なこといった手前もあるし、俺はこういうしかなかったのだった。
続く