鬱屈シューティング
俺は和久井真彦。至って普通の脇役だ。
俺はゆめと一緒に平田のショッピングセンターに来ていた。
そこで俺は彼女の協力を得てぬいぐるみを手に入れ、
それを彼女に渡したのだった。
「さて、次は2on2のシューティングゲームをしよう」
「欝作品に定評がある奴の関わってるやつか」
「正直、私そういうのは好きじゃないの。ロミオとジュリエットとかも」
あれは愛を貫き通した二人の物語だという触れ込みだが、
最後は間抜けだ。
どうして愛するものが自分を残して死ぬはずが無い、
ということを思えなかったのだろうか。
自分のために死んだ、と考えるのはある種の欺瞞だと俺は思う。
どんなに辛くても愛するものがいるならば生き抜くことができる。
俺は性別の壁は気にするタイプだが、身分の壁なんて気にしない。
脇役だからといってそういう側面があっちゃいけない、
なんてことはない。
脇役にもそれなりの見所があってこそ物語は成り立つのだ。
故に脇役が身分差恋愛しようと構わないと俺は思う。
人魚姫だってそうだ。
声が出ないなら筆談なりジェスチャーなりでどうにかできないのか。
マッチ売りの少女は、まあ彼女に打開策を考え出すのは無理だろう。
マッチを売るしかできない彼女に自分の境遇を打開することは、
不可能ではないかもしれないが難しい問題だ。
誰かが彼女を拾ってやれればいいのだが、
そういう人間がごまんといる社会では難しいだろう。
自分が満たされてなければまず他人に差し出せる余裕はたかがしれている。
余裕の無い人間にお金を出させるなんて無茶だ。
そういうのは金に余裕のある奴がやればいいことだ。
まあ俺は時たま募金箱に、
10オラクルや100オラクルを入れることがある。
一回や一人で入れる額は少なくとも、
余裕がある奴がそうしていけばかなりの額になるのだから。
「真彦」
「分かってるさ」
などといっている間に件のシューティングの媒体に付いた。
「でも、今は人がやってるぞ?」
媒体には、すでにプレイヤーが二人居た。
「でも、後三分すれば終わるわ。それまでにぼけっとしてたら抜かれるわよ」
「と、それもそうか。一応、お金は用意した方がいいな」
そういって俺は100オラクル硬貨を財布から取り出す。
ゆめも一緒に100オラクル硬貨を出していた。
「で、ただ待つのも何だし何か話すことは無いの?」
「あいにく、そういう話題は持ち合わせてない」
「人付き合いが浅そうだしね……でも待って」
「どうしたんだ?」
俺がそう聞き返すと、ゆめはこう答えた。
「あなたと夏葵って、いつ出会ったの?」
続く