ロボットのぬいぐるみ
俺は和久井真彦。至って普通の脇役だ。
俺はゆめと一緒に平田のショッピングセンターに来ていた。
俺達はゲーセンに向かっていた。
そこのキャッチャーで、ゆめはぬいぐるみを取ろうとした。
「それは星天戦記トランセイバーの主人公機、トランセイバーだな」
「ぷちっとロボが珍しいと思ったんだけど、それってメジャーなの?」
「TS物だな。結構マイナーな作品だ」
「へえ。私性転換物なんて『マジカル☆シンデレラ!』しか知らないわよ」
俺はすかさずこう突っ込んだ。
「地味にそれもマイナーなんだが」
「たまたま書店で見かけたのよ。恋愛物だとかいってたけど」
「あの作品は恋愛パートなんてほとんど無いぞ。コピペした変身シーンと同量程度だ」
「それ、作者は随分楽をしてるわね」
「小説で変身バンクを使うのは画期的な試みだと思うが、賛否両論ありそうだな」
俺はそういう批評サイトはあまり参考にせず、その手の物は慣性で見るタイプだ。
欝気味な作品かどうかについては、そういうサイトがかなり役立つのだが。
「ふうん。でもこの手のぬいぐるみは珍しいし、やってみようと」
キャッチャーの上にはリングがある。
そのリングは念動魔法を弾く役割を兼ね備えており、
キャッチャーの『取れそうで取れない』感を出すのにも一役かっている。
本当に欲しい景品があるならそういうのを売ってる店もあるし、
そういう店が近くにないならネットオークションで落とせばいい。
つまるところキャッチャーはあくまでも遊びなのだ。
「ああー、途中で落ちちゃった……」
とか考えているうちに、ゆめはぬいぐるみを落としたようだ。
「この距離なら、精神を研ぎ澄ませればいける」
俺はキャッチャーのコイン入れにコインを入れ、
キャッチャーを動かす。
絶妙な位置にキャッチャーが動き、そのアームはリングを掴む。
リングに吊り下がっているぬいぐるみも一緒であり、
そのぬいぐるみは落ちずにそのまま穴へと動いていく。
穴に落ちたぬいぐるみはそのまま出口へと出され、
俺はその出口からぬいぐるみを取る。
「一発で取るなんて……」
「ゆめがひっかけてなきゃ、取れなかった。お前のおかげだ」
そういいつつ、俺はぬいぐるみをゆめに渡す。
「いいの?これはあなたが取ったのよ?」
「いいって。こういうときはそうした方が絆も深まりそうだしな」
「あなたもそういうところがあるのね」
俺は脇役志望だが、女の子の前では少しかっこ付けたいのだ。
脇役でもそういうキャラは居るし、これは別に問題ないだろう。
続く