友達同士?
俺は和久井真彦。至って普通の脇役だ。
ゆめと一緒に平田のショッピングセンターに来ていた。
そこで俺は彼女の物とお揃いのブラウスを渡されていたわけだが。
「でも、ペアルックってまるで恋人じゃ……」
「友達同士でもペアルックはするわよ」
確かに最近は男女の友人でもペアルックをする中学生は珍しくない。
高校生にもなるとそういうのを意識するのか、
逆にそういう奴は少なくなる傾向にある。
「かもしれないな。じゃあ、一緒に買おう」
「お金のことは気にしないで。私も自分の分くらいは払えるし」
「確かに、そんなことしたらますます恋人っぽいし主役みたいだ」
というわけで俺達は服のお金を各自で出した。
まあファストファッションの店だから2000円ほどで済むし、
痛手でも何でもないだろう。
「じゃあ、次はフードコートに行こう」
「ゲーセンには行かないのか?」
「空腹は魔法の敵、よ」
空腹は魔法の敵、というのは良く知られた格言だ。
実際、空腹時は精神を集中させづらい。
運動するときは満腹も天敵なのだが、
魔法を使うだけなら関係ない。
まあ、魔道は武術なのでそのへんをしっかり考えないといけないわけだが。
というわけで俺は一路フードコートに向かった。
フードコートにはステーキ、ラーメン、ハンバーガーといった物が売ってある。
これらがどんな料理かは説明不要だろう。
何しろ家族連れにはとても人気のものだ。
エミレットやアシタールスープは癖がありながらも良き家庭料理だが、
やはり外食はこういうオードソックスな味の物がいい。
アイスクリームやうどん。そしてカレーを売っている店もあり、
バラエティも豊富といえる。
「で、どれにするんだ?」
「そうね。ステーキはちょっと高いし、ラーメンね」
「食えるのか?」
「その分体力作りに費やすからね。演劇では長時間舞台に立つからね」
確かにゆめは魔道部に入部するときも体力がどうこうといってた気がする。
だから彼女がそれなりに運動していても不思議ではない。
「なるほど。ならしっかり食えるわけか」
「そうね。体型の維持には適度の食事と運動が必須よ」
「無理なダイエットは身体を壊す元になるからね」
「やせすぎも身体に良くないらしいからな」
かくいう俺はテレビで聞いて初めてそれを知ったのだが。
「そうよ。みんな無理して痩せたがるけど、ダイエットは計画的にしないと」
「急速な体重減をすると、最終的に21gまで減って消滅するからな」
「それは極端な例よ」
俺の軽口にそう返すあたり、ゆめも割とアニメを見るんだなと思った。
続く