魔道部結成
俺は和久井真彦。至って普通の脇役だ。
少なくともそうありたいと思う。
世界を救うのもいいかもしれないが、俺はそれを助ける側になりたい。
目立ちたくないわけじゃない。主役を裏から助ける脇役は立派だと思う。
だから俺はああゆう風に立ち回りたい。
自分から何かできなくても、そうしたいと思う人を助けることは誰にだってできるはずなのだ。
「この世界っていうのは物語だと思うんだ」
「それはどうしてなの?」
そういって来たのは我満夏葵。
俺はなりゆきでそいつの設立した魔道部の副部長になっていた。
俺達は小学生の頃から魔法に慣れ親しんでいた。
それは当たり前のことで、魔法が無いなんて考えられないくらいだ。
魔道部は魔法による近接戦闘である「魔道」を実践する部活だが、
この学校は遠距離に炎や氷を放ったりするのが主なので意外にも存在しなかったのだ。
まあ、近接戦闘するなら魔法消費なしの「空手」で事足りるということなのだろう。
魔法もただじゃない。体力や精神力を複合した力、俗に「魔力」といわれている物を消費する。
ともかく、夏葵の質問には答えなくてはならない。
「人が生きていくに至って人と人との関わりができる。それは物語といっても差し支えがないだろう?」
「それもそうね。だけど、ちゃんと部員が集まるかな……」
魔道部はつい先日開いたばかりで、部員募集の紙を張り出したのも昨日だといっていい。
もっと前に張り出した覚えもあるが、それはそれだ。
「何やかんやで魔道に興味がある奴も居るし、大丈夫だと思うぞ」
俺達は既に部室の中だった。
部活は初年次なら部長と副部長が居ればいい、というのがこの玉央学園のルールだ。
だが、俺達は二年生だから来年この部活が無くなっては困る。
なのでできれば早めに部員が欲しいところだ。
そうおもっていると、一人の女性が入ってくる。
「初めまして。たかみさわゆきみです」
そういってゆきみは紙に『高見澤幸美』と名前を書く。
「いい名前だな」
「面倒だけど、部員は一人でも多いほうがいいわよね?他に惹かれる部活も無いし入ってあげるわ」
それを聞いたのか、夏葵はこうった。
「ありがとう。それじゃあ、後で入部届けを出してね」
すると、幸美は俺にこういってきた。
「ええ。でも一応副部長さんの実力、見せてもらうわ」
「どうして部長とは戦わないんだ!?」
「部長は別に強くなくても、熱意があればいいのよ。副部長が問題なの」
やれやれ。一人目からしてやっかいなことになりそうだ。
続く