サバイバル2
あれから数時間が経ち、辺りは真っ暗な闇だ。あれから何度か獣の鳴き声が聞こえた。この森にモンスターが入るのは間違いない。今更になって昼間全く行動していなかったことに悔む。今日は色々とあったとはいえマトモな判断能力すら出来てなかった。
はぁ…地面が堅い、ケツ痛い…蚊が多い。痒い。ぉれはやっぱり舞い上がって異世界を舐めてたのかもしれない。
いくら、チートなスキルを持っていても、灯りのない真っ暗な所にいるだけで
憂鬱な気分になってしまう。今日は久々に体を動かした気がするな…。と言っても素振りだけだが。いや、それでも凄いぞ。ヒキニートが鉄槍を休憩を挟んでたとはいえ、日暮れまで続けたんだから。うん。おれ、頑張ったうん。
ま、そのせいで、森の中で野宿する羽目になったのだが…。
でも、やっぱり槍術スキルが高くてもすぐに使いこなせるって訳じゃあないんだなぁ。
もうちょっと続ければ何かをしっかり掴めそうな感じがするんだけど…
アレ?そーいや、おれ、よく鉄槍をなんか振れたな。15㎏ぐらいありそうなのに
おれ、そんなに筋肉あったか?
体が変わったからか?
もしかして、…身体…強化スキルの恩恵か何か…だろうか。
今度、意識して試してみるか…。
木にもたれながら空を見上げる
あれ、月だよなぁ。うん普通の月だ。
異世界とかいってもそんなに変わんないのかもしれないなぁ。これで1日が50時間とかだったら、笑うけどな。
ボーっと空を眺めていると、疲れからか次第に瞼が重くなっていく。
うん……ハァアーア、あー眠いねほんと。家なら今頃ベットでぐっすり……
…。はっ!!
危ない寝かけた。あーダメだ今日は本当に疲れたみたいだ。気を抜いたら寝そうになる。
頭を降り眠気を覚ます。
流石に寝るのは、危険過ぎる。こんなんだったら、察知系のスキル取っとくんだったな。周囲が安全かどうか分かるだけでもかなり違うと思う。
いや、結界石とかのが便利か?
あんま、ちゃんと説明読んでないけど、さ。
うーーん。
ダメだ、何か考えて眠気を散らそう。
今後の目標とかを考えてみるか。
目標、目標。やっぱり冒険者になって金持ちになって、でっかい家買って、
ワォォオオーン ォオーーン
またか、今日何度目だよ。全く。夜なんだから静かにしようぜ。ホント。なんかちょっとビビっちゃうだろ。大人しく寝ててくれよ。モンスターちゃん。
初戦闘はちゃんと街に着いて色々と、情報とか、確認してからにしたいんだから。
とりあえず、街に行かないとなんともならないか。とりあえず川を探して川沿いに下って行けば人里があるって本で読んだことあるし
明日は川探しだな。出来れば宿で一泊したい。美味しいご飯が食べたい。塩味のゴムは勘弁だよもう。
ワォォオオオオオーーン
ん?なんか前より大分大きく聞こえたような。
…もしかして少し近づいてきてるのか?
クッソォ流石にこんな真っ暗のでの初体験とか勘弁してくれよ。
ちょっと動いてみるべきか?遠く移動するべき?いや、こんな暗闇の中で動いてもロクなことにならない気がする。
動いて見つかるとか最悪だし。うん。
とりあえず、すぐ動ける準備だけでも、
サッサッ
ん?
今何か聞こえた様な
風か?はぁ。こう不安だと幻聴が聴こえたりするとか聴いた事あるけどさ。
サッサッサッ
まただ、やっぱり何か聴こえる。何かが擦れる様な…どこからだ?
不安になり立ち上がる。
槍を構えて周囲を見回す、ダメだ。ホントに近くしか見えない。
これで、気のせいならかなりはすがしい。ドンだけ怖がり…
サッサッサッサッ
居る!!やっぱり居る!
何かが絶対に居る。
なんだろ、凄い嫌な感じがする
なんとも言いようの無いプレッシャーの様なものを感じる何処だ?どこからだ?
すると、前の茂みが微かに揺れたのが見えた
あそこだ!!
6mほど離れた茂みから赤い光が2つチラッと見えた。
居た!やっぱりあそこか?
前方に槍を構える。いつでも動けるように腰に力を入れる。
すると、俺にバレた事を悟ったのか
茂みから飛び出し。姿を見せる。
姿が月にうっすらと照らされ1Mほどの黒い獣が歯を剥き出しにして、今にも飛び掛かろうとしている。
グル、グルゥヴヴヴ!!
お、狼か?!で、デカイな!!遠吠えの正体か!!!
クッソ勘弁してくれよ。クッソォ!!!
とっさに
逃げようと右に一歩踏み出した瞬間。右脹脛から熱と強烈な痛みを感じた。
「熱!いっいイダァア!!ァアア!!」
クッソなんだ!。なんなんだ!!強烈な痛みを堪えながら見たものは前に居るのとは別にもう一匹の狼だった。
クッソ!そういうことか!
前のは囮で後ろから狙ってやがったのか!!
偶然にも、逃げようと右に踏み出した所だったため、狼の狙いは外れ、爪を掠る程度で済んだのだ。だが、掠っただけで済んだとはいえ、痛いものは、痛い。
槍を構えるが、紅い眼光から強烈な殺気をモロに感じ体が固まった様に動かない。更には真っ暗によりはっきりと見えないせいもあり、頭はパニックを起こしていた。足が震え、後ろに下がる。今にも腰が抜けてしまいそうだ。
レイの事を取るに足らないと、感じたのか助走つけ、狼左右から一気に襲い掛かる。
は、速い!!クッソ、どうすればいんだ。右か!!左か!!ダメだ。怖い怖い。
なんなんだよ!クッソ!ダメだ、殺される。
狼が左右同時に脚に力を込め一気に飛び上がる。長い牙がレイ目掛けすぐそこまで来ている。
ダメだ!!殺される。!!殺される殺される殺される動け動け動け動け動け!!!クッソおおおおお!ヤるんだ!!殺らなきゃ殺られる!!!!ヤるんだ!!オオオオオ!
「オオオオオオ!!」
レイは反射的に槍を右側の狼に向って自らが突っ込む事で左から来る狼を躱し、槍を目の前の狼に突き刺す、偶然にも狼の心臓に突き刺す事が出来た。だか、それと同時に途端に肩に強烈な痛みを感じる。狼を刺す事は出来たが自ら向かったせいで、狼に肩を深く咬まれる。
「ぐぅ、ァアア!!」
痛みを我慢し、腕に力を込め、狼を肩から無理やり引き剥がす。肉を抉られる痛みに、倒れそうに、なるが、槍を振る狼の屍を吹き飛ばす。
い、痛い肩が燃える様に痛い。痛い!!
はっ!!
先ほど躱した狼が後ろから再び襲い掛ろうとしている気配を感じる。
腕に力を込め、流れるように飛びかかってきた狼の頭に目掛け槍を振るう。
狼は体を空中で捻ることで、槍は空を切る。
クソ!ダメだ焦るな焦るな。落ち着け。
レイは、焦る心を抑え、狼をみる。
狼は綺麗着地し、いつでも、とびかかれるようにレイを睨みつける。
負けるな!負けるな!
レイは震える足を鼓舞し、狼に突きを放とうとする。
狼は突きが来るのを感じ、右にステップし、レイに襲い掛かる。
しまった!!いや、まだだ!
レイは腕を捻ることで突きの方向を捻じ曲げ、狼に、突き刺す。
「ギャアア」
肩に刺さった槍の痛みに狼の動きが一瞬止まる。
レイはすぐさま槍を引き戻し、今度は正確に頭を狙い槍を振るう。
槍は正確に狼の頭に突き刺さり
グギャャア !!
何かが潰れるとも、狼の声とも分からない音が鳴り、狼はそのまま倒れ伏す。
血が溢れ出る様に流れ、地面を染め上げていく。
スーーッ
レイの中に何かが入ってくる。
何かの力の源の様なモノが入ってくるのを感じ、レイはようやく我に返る。
…終わった…終わったんだ。
途端に力が抜け地面に倒れる。
「ハァハァ、やった。やったぞ、ハァハァ。はっはっははは。 ハァハァ」
膝がガグガクと未だに震える。
左手を地面につける。
ズキッ
左肩が抉れていることを強烈な痛みで思い出す。
グッ!!!ヤバイ。気を抜いたら気絶しそうだ。肩と脹脛がめっちゃくちゃ痛い。
そうだ回復薬が…
急いで、
アイテムポーチから回復薬を出し一気に飲む
「ぅう。うぇえ。にっっが!!回復薬ってこんな苦いのかよ!」苦さで顔を顰める。
すると肩と脹脛から湯気のような物が吹き出しジュクジュクと音を発しながらゆっくりと傷が塞がっていく。
「お、おお…すげぇ、治ってく!!でも、なんかグロいな。これ。とりあえずもう一本くらい飲んどくか…」
苦味を我慢し、もう一本を飲み干す。
傷が塞がるまで木に寄り添い座り込む。
10分近くでようやく傷がすべて塞がった。
「よし、とりあえず移動しよう。今血の臭いでモンスターが来られたらおれは確実に死ぬよ」
チラッと物言わぬ骸と化した狼を見る
辺りは血の匂いが充満し、地面を赤く染め上げている。
俺が殺したんだよな、反射的に動いたようなもんだけど、よく勝てたよなほんと。
狼の死体を見て、吐き気が込み上がってくるが。口を抑え。我慢する。ゆっくりと深呼吸し、何も考えないように気持ちを落ち着かせる、
ふぅーーー。今はダメだ考えるな
早く移動しよう、こんなとこに居ても危険なだけだ。
無理やり自分を鼓舞し傷が塞がったとはいえ痛みの残る足を無理やり動かし
荷物を纏め暗闇の中を歩きだす