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人はケモ耳にあこがれるが俺達はサル耳を持っているじゃないか

とりあえずだ。ここまでの出来事を簡単に頭の中でまとめよう。


その1、ケモ耳生やした女の子が裸で俺の部屋に居ました。

その2、その女の子は俺の事を知っていて、彼女は俺の愛犬のポチだと言い張っている。

その3、彼女は可愛くてボンッ! キュッ! ボンッ!

その4、いったん外に出て落ち着こうという話になった。


よしこれ位でいいだろう。

我ながら状況把握能力が高い気がする。


と思ったが、もう一つ追加しないといけない事がある。


“ニーソは偉大です”


よしこれ位で完璧だ。


後ろを振り返るとポチ(仮)がぶかぶかのブーツを履いて出てきた。

歩くことに少々苦戦しながらも何とか様にはなっている。。


「ちゃんと歩けるのか?」


「疲れた~」とか言って、4つ足で歩いたりとかしないでね、マジで。


「うーん、まあ何と無く、感覚はつかめてきたかもしれない」


足元を注意深く確認しながら彼女が小さく唸る。


「まあゆっくりでいいからちゃんと2足歩行してくれよ」

「そんなこと言わなくてもそうするに決まってるでしょっ」

「最悪リードと首輪もあるから4つ足でも大丈夫だけどな」


悪戯っぽく俺が言うと彼女が少し頬を膨らませて首を横に大きく振る。


「しっかり歩くから、そういうこと言わないでっ」

「ごめんなさい」


彼女の真面目に少しだけ怒ってしまった。

流石にまずいと思い…とかじゃなくて俺に刻み込まれた反射神経が勝手に謝る。

そう体に刻み込まれた謝罪の言葉は時にどんな状況であっても出てくる。

ある意味特技といってもいいかもしれない、

しいていうなら思考時間虚無の謝罪シークタイムゼロ・アポロジィ――

そんな俺の固有スキルで謝りつつも玄関の鍵を閉め終える。

この程度の並列作業は朝飯前だ。


「で、どこ行くの?」


鍵をポケットにしまい振り返ると彼女がホケーッっとした顔で首をかしげている。

いや、なんていうか可愛い仕草だね。

特にその傾げたときに若干、髪が重力で垂れてるところがいい。

あと、ポッキーとかプリッツとかがちょうど入りそうな大きさに開いてる口に、思いきり指を押し込んでやりたくなる。


「そうだな…とりあえずいつも俺が行く散歩道をお前が先導して進めばいいんじゃないか。

 その方が自分のペースで歩けるだろ」

「少しは優しんだね、柚子瑠」


彼女の邪気のない眩しい笑顔が俺に笑いかけてくる。

だが少しは余計だ。

俺は超紳士的な優しい人間なのだからな。

だがしかしこの期に及んでまだ疑っていて散歩道が解らなければ、

家の犬じゃないとか言ってほっぽり出そうとか思っている事を、

考えていることなど死んでも言えなくなってしまった。


「まっまあな! 」


どうしよう……最終的に家の犬じゃなくても引き取らないといけないかもしれない。

あ、ちなみにそうなるなら俺の彼女とかになってほしい、友達ができる前に彼女ができるってある意味凄いことな気がするし。

フレアスカートを翻して彼女がもう一度俺に振り返り眩しい笑顔で「いこっ」って合図をしてきている。

幾らケモ耳生やした変質者でも、こんなに可愛いと……やっぱり仲良くなりたいよなぁ。


「よしっ、いくか」


息を大きく吸い込んでから俺は足を前に運び出した。

そしてその後ろで彼女は大きく、前のめりに転んでいた。

起き上がるのを待ってから再び歩き出した。




      ×        ×          ×



俺がよく散歩に出かけるルートは、まず家の前を右に進んでいくルートで、

その後遊歩道に出て2kmほど道なりに進むと大きな交差点にたどり着く。

その交差点を左折――その後は道なりに1km進んだ後、近所の大きな公園で少し遊んでから帰るというものだ。

大体これで帰ってくると2時間ちょっとだから、順調に進めばちょうどいい時間い家に帰ることができるだろう。

順調に、順調に進めば……


「な、なぁ……やっぱりもう帰らないか? 」

「なんでまだ家から全然離れてないよ」

「30分も経ったっていうの家から1kmも離れてないことが問題なんだよっ。

 これじゃ公園なんか言ったら日が暮れるどころか次の日になるだろうが」

「うーん…柚子瑠歩くの遅いんじゃない?」

「違ぇよっ! お前がさっきから虫やら何やら見つけては一々止まるからだろっ」

「そんなこ…あ! 蝶だっ!」


ポチが目の前を通過したモンシロチョウに気を引かれてフワフワと横移動してゆく。


…………(╬゜◥益◤゜)……


さっきからこんな調子で全く進まない。

ちなみにこうやって止まるのは3桁目。

正確に言えば145回目。

最初は可愛いとか思ってたけど……

流石にイライラしてきちゃったぞ☆


「おい…もう俺が先歩くから、行くぞ」

「え…なんd――ひゃっ! 」


振り向いた彼女が体を後ろに仰け反らせながらビビッている……俺、そんなに怖い顔してるかなぁ?


しかしそんな恐怖の色に染まった彼女の顔は余所に彼女の手を引きずり進むべき道へ歩を進める。

……あれ? これ当初の目的と違うような……と思ったがこのまま日が暮れても困るので進むことにした。

それに家の近くじゃ家を出た意味がなくなるしな。


「ねぇ、さっき私が前で歩いていいって……」

「いや、やっぱり駄目だ。お前歩かねぇもん」

「歩いてたよ」

「何処がだよ」

「ほら今だって歩いてるで――――あっ」


彼女が話の途中でまた、標高の高いところを地面すれすれで流れる雲のごとく横移動を始めた。

それは余りにもプログラムされているかのような鮮麗された動きで無駄がない。

これがもし此奴こいつの固有スキルとかなら流雲歩行ワンダーステップとかだろう。


「セイッ――――‼ 」


素早く彼女の手を右手と左手と掴みそのまま勢いよく遠心力に任せて引っ張り戻す。

強く引っ張られた体に、追いつけない足元が後から引きずられて引っ張られてゆく。

そして胸元まで持ってきた彼女の手を素早く離す。  

慣性の法則により引っ張られた体は急に止まることはできずに俺の目の前を通過していった。



        ドガッ――――‼



彼女が止まりきれずに遊歩道の柵に激突。

鈍い音―――鉄パイプが振動し「コ~ン」っと音が響く。

一瞬の間が開いた後――


「―――――☆□△#$%%”!&((&%&%~~~~~~‼ 」


彼女が口元を強く押さえて膝をついて悶絶している。

おおよそ歯でも打ったのだろう。

だが―――そうやって口元を押さえている姿……

可愛い。

はっ‼ ……なんだろうか若干自分の思考に自分でゾクッてなった。


「大丈夫か? 」

「~~~~‼ 」


返答は「大丈夫じゃない」そうだ。

力なく俺の胸元を叩いてきてるから多分あってる。


「いやぁ―――ごめんつい」

「―――!『つい』とか言いながら、物凄く力が籠ってたよね?! 」


勿論、彼女の言う通りワザと以外の何物でもない。

あわよくばぶつけてやろうとか思っていた。

そして見事にぶつかった。

ちなみに反省は少しだけしている。

でも――


「いやぁ、ごめんごめん車道に出て引かれると危ないなって」


 俺は白を切った。


「私行こうとしたの車道と反対側だったよねっ?! 」

「えっ―――ああそうだったんだ……んまぁほら予行演習? 」

「結果的に私が痛い思いしただけだよっ―――! 」

「よかったな、車に引かれなくて」

「ていうか車も全然通ってなかった‼ 」


ちぃ、微妙に鋭いところをついて着やがる。

まるで訓練された素人ツッコミみたいだ。



「まぁまぁ……」


俺は半興奮状態の彼女との会話を打ち切ろうとしたが――。


「誰のせいでそうなったと思ってるのよっ―――」


盛大に腹に膝蹴りを入れられた。

わぁい――美少女からの蹴りのご褒美だぁ(棒)

あぁ―――くっそいてぇ……



       ×         ×         ×



「もう―――そんなに歩いてほしいならちゃんと歩くから、酷いことしないでね……ね? 」


彼女がショーケースで輝く宝石のような笑みを浮かべる。

笑顔の中に威圧感を感じる。

物凄いそれこそ仏の顔も青ざめるような、そんな圧力≪プレッシャー≫。


「あ…ああ、今度は気をつけるよ↗ 」


盛大に最後言葉が上ずった。

だって怖いもんっ!


そんなこんなで俺は彼女の命により横に並ばされて歩くことになった。

彼女曰く「これならどっちかが遅くても、すぐに気づけるでしょ」とのことだ。

まぁ遅いのは此奴こいつなんだけどな……


「ねぇいつも通りのところでいいの? 」

「そうだあそこまで言って帰っておしまいだ」

「なぁーんだいつもと同じじゃん」


彼女が詰まらないと言わんばかりに口を尖らせた。


「他に……どこか行きたい場所でもあるのか? 」

「別にない」

「ないのかよ?!」


まあ彼女の行きたいところはないけど、違うところ行きたいって言う考え方は、分かる。

割と俺もするからな。

だがしかし実際に言われると腹立つ。


「でも、せっかく人になったんだからどこか行きたいな~」


人になった。と彼女が言うが実際には完全な人ではなく、犬耳と尻尾が生えている。

其処に突っ込むかどうかを先程から迷っているのだが、どうなのだろうか。


「なあ」

「なに? 」

「お前、犬耳と尻尾は人には生えてないぞ」

「えっ――――」


彼女の足が止まる、そして俺の頭上を確認している。

俺には人の耳が生えているだけだ。

無論尻尾も生えてない。


「っ―――」


止まった。


“彼女の時が止まった”


と次の瞬間――


「えっ‼ だって人には猫耳生えてる娘≪こ≫いるんでしょっ!

 犬耳はいないの?!」


――――?


「……」


ハハーン―――こいつ勘違いしてるな……

俺は確信した。

そういえば家には、正確には俺の部屋にはケモ耳少女(二次元)のイラストポスターが貼ってあったりするわけだが、

どうも此奴はそれを現実にあるもんだと思っていたらしい。


…(・´艸`・)…


俺は少しだけいいことを思いついた。


「ああ、そうだ。猫耳や狐耳、それに狸耳も現実には存在している! 」

「じゃっ――じゃあ! 」

「残念ながら犬耳は存在しないのだッ‼ 」


ドヤ顔で言い放つ。

彼女の顔が「そんなっ! 馬鹿なっ!」って顔で俺を見つめ返す。

まあ猫耳も狐耳とかいるわけねぇんだけどな。


「ね……猫はいるんだ」


すごいピンポイントなところでショックを受けてる―――そこ大事な事なのか?!

犬だけいない所じゃなくて猫がいる事にショック受けてるの?!

まじかよっ!

俺的には狸のが猫よりよっぽど気になるとおもうよっ‼


「なぁ、猫がいたらだめなのか? 」

「猫許すマジ」


“ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ”と後ろからオーラが見えそうなほどの殺気が彼女から放たれた。

猫嫌いなん?


「ね、猫の何がいけないんだ?」

「犬と猫、太古から、長く人と付き合いがあった種族だったけど、

 なんで猫だけ人になれるようになってるのよ。

 猫のくせに……犬のが主に従順で偉いのに、なんで猫が人に…」


俺の声は届いてなかった。

いやぁ―――猫も多分、人になれてないと思うぞ?

多分お前が初だよ、人になったの。

でも言わないでおく。

それはともかく、どうやらこいつは猫が嫌いらしい。

猫……可愛いと思うけどなぁ、あの自由奔放なところとかたまに見せる愛嬌とか。

まあ、猫は躾してるとこもたまに見かけるけど、基本躾れないらしいから、家は犬を飼うことになったんだよな。


「でも、お前は犬の中じゃ初じゃないか?」


面白いから種明かしはもう少し後にしよう。


「―――! そ、そっか」


今度は一変、目がキラキラと輝かせて俺を見る。

眩しい。これで嘘だって言ったらどんな反応するんだろうか……

彼女の尻尾がピーンと立ちあがり左右に激しく揺れる。

しかも「なんかもっと褒めろ」みたいな目でこっちを見てくる。

なにを言おうかな。


「そうだなぁ…たれ耳とかも、は、初じゃないかなー?」

「ほんとっ?!」

「あ、ああ」


さっきからキラキラした目で見つめてくるせいで嘘を吐いてることに後ろめたさを感じてきた。


「あのs―――」

「これって凄い事じゃない‼? 」


勇気を振り絞りネタバレをしようと口を開いた直後。

まるでUFOキャッチャーで欲しいものを彼氏に1発で取ってもらったような顔をしてj彼女が俺を見つめてきた。

……言いずらい、なんか言ったら彼女の夢を壊しそうで、申し訳なくなる。

ちなみに俺はそんなカップルを見た日には掲示板にリア充のなにがムカつくのかを一晩中書き続けるだろうが、

今の俺の視点はどちらかというとあちら側なので俺自身は正直心臓がバクバクしている。

もちろん違う意味でも心臓が張り裂けそうなほど鼓動している。


「あ、ああ凄い事だな」


少々顔が引きつりながらも誤魔化すように笑っておいた。俺、へタレすぎんよ。


「犬史上初、ふふっ」


彼女の口元が怪しいくらいにニヤけていた。


「猫を追い抜く日も―――――……」


そのあと物々と物騒なこと(主に猫に限る)をつぶやき続けていた。

ていうかどんだけ猫嫌いなんだよお前! 


「猫を追い抜いてどうするんだ?」

「もちろん!……え~っと」

「考えてないのかよっ!」

「なっ! ちゃんと考えてあるわよ!」

「じゃあなんなんだ?」

「……全人類犬好き計画とか?」

「思付きにしてもひでぇよっ!」

「――なんで思いつきだってわかったの?! 」

「……」


―――どうやら、頭が良さそうというのは俺の思い込みで、こいつは多分バカだ。


「それはな俺がサル耳を持った人種だからだ」

「サル耳―――?! 」

「そう……お前らが思っている人間はっ! 実は、サル耳族という人種なのだ‼ 」

「は、初めて知った」

「それはだな、他の耳を持った種族より優れている我らサル耳族が地上の大半を制してしまってから、

 すでに長い年月がたっている故の事だ」

「そうだったんだ‼ 」


目を輝かせて「もっと聞かせて」という目で彼女がグイッと顔を近づけてきた。

予想通りの反応だ。


「そしてなぜ俺達サル耳族が他種族より優れているのかというとだな……」

「うん、うん」

「それはだな」

「うん」

「相手の心が読めるからだ‼ 」

「――――‼ 」


彼女が雷に打たれたように止まった。


「え、え……じゃ、じゃあ今、私がどう思っているのは分かるの?! 」

「もちろん―――今のお前はスゴイと心の底から思っている‼ 」

「あ、当たってる―――」

「これがサル耳族だ」

「そ、そうだったん。凄い…… 」


此奴、本気で信じてやがる――


「そうだ、だが安心しろ犬耳はたぶん世界でお前が初めて――

 そして、お前はもしかすると俺達を凌駕する力を持った奴かも知れない」

「えっ、本当に?」

「いや、俺も犬耳は初めてだからわからない」

「あぁそっか」

「だがきっとお前は凄い奴だ」

「そっかぁ☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆」

「ああっ‼ まあ、それは置いておいて先に進まないか?」

「――――! そうだね。えへへ」


凄い嬉しそうだ。

なぜだか俺もいいことをした気分になる。

ネタバレは当分しないで様子を見ていよう。


「ということは柚子瑠が初めて部屋に来たとき驚いたのは犬耳が初めてだったから?」

「あっ?――まずケモ耳自体初めて見たし、そもそも別の動物が人になるとかありえねぇよ」

「え?」

「あっ」


不意を衝いた彼女の質問は、俺の衝撃的な出会いの記憶を甦らせ俺にマジレスさせた。


「柚子瑠、さっき猫耳とかはいるって……それにサル耳族が一番すごいケモノ耳の種族だって」


ははっ―――やちゃったぜ☆


「あぁ、あれ嘘だわ」


彼女の目がみるみる光を失ってレイプ目になり、口元で「がるるっ」と小さく唸っている声が聞こえる。

大丈夫おれは覚悟はできていた……こい‼

俺がすべてを受けとっ―――


豪―――目の前の空間が歪み黒ずむ。

その刹那、顔と腹に鈍い衝撃――体の感覚が一瞬途切れた……


このあと滅茶苦茶ボコボコに殴られました。


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