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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

狂気のかくれんぼ

作者: パンドラ

 ※この作品に救いはないです、バッドエンドです。

  そこを理解できていて、更に大丈夫という方のみ先に進んでください。

 ……ここはどこだ?

 俺は家で寝ていたはずだがどうしてこんなところに?


 気が付いた時俺は見知らぬ部屋の中にいた。

 部屋はそこそこ広さがあるが特に装飾品や家具などはなく、俺が一人ぽつんと部屋の真ん中で立っているだけだ。

 ドアはある、だが開けようとしてもピクリも動かなかった。

 鍵穴もないところを見ると外側からしか鍵の開け閉めを出来ないみたいだ。

 しょうがないから俺はこの状況について考えることにする。



 寝ている間に連れ去れたとかか?

 ないな、誘拐だったらもっと金持ちの奴を狙うだろう。

 アパート暮らしの俺を攫っても身代金とかはあまり望めないだろうに。


 ならどうしてここに俺はいるんだ?

 ちょっと記憶がある範囲で思い出してみよう。


 まずは昨日、俺は同期の奴に飲みに誘われたのを断って家に帰った。

 その後は普通に夜食を食った後に寝た。

 ……これは夢か。


 俺がそんな感じで思考を進めていると部屋のどこからか声が聞こえてきた。

 その声はニュースとかで良くある、ボイスチェンジャーを使って変えた機械のような声だった。



『皆さんどうも、今回の司会を務めさせていただく“蛇”と申します』


 その声は最初にそう言った。

 司会?俺は何かのイベントにでも巻き込まれたのか?

 その声はまだ続く。


『今回集まったのは九名。この九名でとあるゲームをしてもらいます』


 集まったのは九名?

 俺以外にも八人ここにいるってことか?

 この部屋の中を見渡しても誰もいないという事はおそらく同じ建物の別の部屋にいるんだろう。

 それよりもゲームって何のことだ。


『なあに、ゲームの内容は至極簡単。“かくれんぼ”です、皆さん子供の時に一度はしたことはおありでしょう?』


 かくれんぼ?

 あの鬼に見つからないように隠れて制限時間いっぱいまで見つからなかったら勝ちっていうあのかくれんぼか?

 

『皆さんが“鬼”の役、見つけて頂くのは“内通者”です。それでは詳しいルールを説明致しましょう』


 俺らが鬼?

 見つけるのは…内通者!?

 どういうことだよ……。


『前提条件として、皆さまが勝てば皆様を無事に解放することを約束します。しかしもしも負けたら……結果としては全員死にます』


 ……は?

 死ぬって?誰が?

 そんなもん答えは決まっているがそう思わずにはいられない。

 俺のそんな動揺もしったこっちゃないと言わんばかりに声は話を続ける。


『そして皆様の勝利条件は……内通者を殺すことです』


 この言葉が聞こえた瞬間に俺は思わず叫んでいた。


「ふざけんな!何がゲームだ!黙って聞いていれば全員死ぬだの生きるためには人を殺せだの…人を馬鹿にしてんかてめぇ!!!」


『……………』


 俺が叫ぶと急に声は止まった。

 そしてあのボイスチェンジャーで変えた声にも関わらず、聞く者の背筋が凍りつくような声でこう言った。


『てめぇら全員人殺しじゃねぇか、今さら何言ってるんだよ』

「な………」


 今こいつ、なんて言った?

 全員人殺しだって?俺が?

 …いや、そんなことは俺はしてない。


『…説明が中断されてしまいましたね、続けます。皆様の勝利条件はもう一つ、と言ってもこれは個人の勝利条件か』


 さっきの出来事がまるで嘘のような感じで司会は話を再開した。

 しかし俺は、記憶から簡単に消すことは出来ないほどの恐怖をあれだけで植え付けられていた。

 腰が抜けて、いつの間にかその場に座り込んでしまっている。


『…一人を残して他の全員が死んだら残った一人の勝利です。次は皆さんの敗北条件ですね』


 もう俺には叫ぶ気なんて起きなかった。

 話も聞いてはいるがどこか遠くの出来事のような感じもした。


『皆さんが内通者に全員殺されること、これが敗北条件です。ま、これは万に一つも起きないでしょうが一応ね』


 万に一つも起きない?

 ちょっとその言葉が引っかかったが今の俺にはそれについて深く思考することが出来ない。


『以上ですね、殺すための武器は用意してあるので壁においてあるものから好きに使ってくださいね』


 俺は壁の方を向く。

 さっきまでは何もなかったはずだがいつの間にかに拳銃やら手榴弾やらが置いてある。

 これで殺し合えってことなのか……

 まだ俺の中ではさっきの全員人殺しの発言が強く残っていた。


『あ、そうそう。大事なことを言い忘れていましたね、内通者の発見方法を教えます』


 何故かこの声が耳の中に入ってきた瞬間さっきまでの恐怖がなくなった。

 代わりに俺にはその内通者の発見方法を必ず覚えなければという謎の義務感があった。


『皆さんはお互いにに一つだけ質問することを許可します。皆さんはその質問に嘘の回答をしても真実の回答をしてもどちらでも構いません。しかし内通者は必ず“嘘”の回答をします』


 つまり一人につき一問だから、一人に対しては合計九回質問できる訳か。

 いや、さっき言った九人の中に内通者がいるのかもしれない、だとするのなら八回か……

 俺の頭の中はすでに内通者を発見し………殺すことを考えていた。


『それでは一斉に皆さんの部屋のロックを解除します、それがゲームの開始の合図です。生き残れるように頑張ってくださいね』


 扉からピーと言う音が聞こえた、ロックが解除されたんだろう。

 俺はまず部屋の壁の方に行き、武器の物色をする。

 使い方はよくわからないが扱いが簡単そうな手榴弾と似たような形状のものを幾つか持ち、拳銃を一丁手に取った。


 …念のためもう一丁持っておくか。

 俺は二つ拳銃を手に取り、片方を背中の方にやり服で隠した。

 これで準備はいいか。


 部屋から出るときに部屋の隅人形が置いてあるのが見えた。

 しかし特に気にせず、俺は部屋から出た。


====================================


 部屋を出るとそこは廊下だった、耳を澄まして周りに誰かいないかを確かめる。

 ……物音はしない。


「…よし」


 俺は廊下の角まで移動して、こっそり先を確認する。

 そこでこの廊下の突き当り、曲り角を何かが曲って行くのが見えた。

 おそらく別の奴だろう。


 どうする?

 内通者だったとしたら一気にピンチだが違うとするのなら協力したい。

 ……行ってみるか。



 俺はその廊下を走り、さっき誰かが曲った角を曲った。

 そこには見慣れた奴がこっちに拳銃を向けて立っていた。


「動くな!止まれ!」

「おい待て!俺だ!加賀だ!相原!」


 俺がそう言うと相原はゆっくりと拳銃をおろし、こう言ってきた。


「…加賀?お前、あの加賀か?」

「そうだ、その加賀だ」


 そこに立っていたのは俺の同僚である相原だった。

 今日、なのかはわからないがよく俺を飲みに誘ってくる気さくな奴だ。

 一部の上司には目の敵にされてたりするが本人は全くと言っても良いぐらい気にしていないようだ。

 なんにせよ、こんなふざけたゲームに加担するような奴じゃない。

 白だ。



「お前の巻き込まれたんだな、全く迷惑な話だ」

「そうだな、特に俺らの事を人殺しだなんて………」


 相原は歯を食いしばって怒っている。

 こいつは人を殺せるような奴じゃない、むしろ殺される側だろう。

 つまりさっきの司会のあの言葉ははったりだったって事だ。

 こうなると俺の中であの言葉への恐怖は全くなくなった。


 が、ここであの声が再び聞こえてきた。


『Mさんが殺されました、残り八人です。Mさんは内通者ではないのでゲーム続行です』


「「な………」」


 俺と相原は声を失った。

 このアナウンス通りだとすると人がすでに一人亡くなったことになる。

 …不謹慎ながら容疑者が一人減ったと喜んだ自分がいることにも俺は驚いた。

 こうなると後々の事を考えて……


「相原、一緒に行動しよう。人が一人死んでいる以上警戒する必要がある。二人なら相手も簡単には襲ってこないだろうし安全のためだ」

「…そう、だな」


 相原は人の死と言うことに関しては実に敏感だ。

 知り合いの家族や友人が死んだのなら黙祷して安寧を祈るし、自分の知り合い自身が死んだのなら三日は寝れない。

 そんなやつだ。

 そして俺と相原は一緒に行動することになった、これで大分俺たちは安全になったはずだ。



「…他の人を探そう、これ以上死人を出さないためには早く内通者を見つけ出さないと………」

「…ああ、そうだな」


 相原は軽く落ち込んだ様子のまま俺の後についてきている。


『AさんとKさんが協力関係を作りました、残りの人数は八人です。』


====================================


『Hさんが亡くなりました、残り七人です。Hさんは内通者ではないのでゲーム続行です』


 またアナウンスが聞こえた、また誰か殺されたのか……

 早く内通者を見つけ出さないと……


 俺たちはさっきまでいた一階から二階へと階段を使って上がった。

 階段は廊下の先にあった。

 そこで倒れている人とそれを見て呆然としている人、二人を見つけた。

 ……まさかっ!


「おい!どうした!」


 俺は倒れている人に向かって呼びかけた。

 動く気配はない、俺は急いでその人の傍に駆け寄った。

 呆然としている人は丸腰の状態で、俺が来てもまだ呆然としながら何かを呟いている。


 俺は倒れている人の脈を急いで調べる。

 ……やはり、死んでいる。

 パッと見た感じ血は出ていないし何故死んだのかはわからない。

 俺は呆然としている奴の方を見る、女性だ。


「おいあんた、どうしてこうなったのか教えてくれないか?」


 呆然としていた女性は我に返り、俺を見て怯えはじめた。


「早くしろ!内通者じゃないかと疑われたいのか!?」



 俺のその声で女性はおどおどしながら話し始めた。

 どうやらこの女性とこの倒れている人―男性が話しているといきなりこの男性が苦しみだして倒れたんというんだ。

 確かに外傷はないしある程度辻褄は合うんだが……


 俺は銃を女性に向けてこう言った。


「その話だと俺にはあんたがこの男性を毒殺したようにしか聞こえなかった、悪いな」


 女性の顔が恐怖でひきつった。

 そして俺に背を向け、逃げ出した。


「っ!逃がすか!」


 俺は女性を追おうとしたが相原に止められる。


「駄目だ!人殺しなんてやめろ!」

「あいつは内通者だ!あいつを殺せば残った奴らはみんな助かるんだ!」

「まだ確証があるわけじゃない!落ち着け!」


 そうこうやっているうちに女性の姿は無くなっていた。


『Sさんが殺されました、残り六人です。Sさんは内通者ではないのでゲーム続行です』


 また誰かが死んだ、さっきあいつを殺せていればSさんは死ななかったのに……

 俺は相原に怒りを覚えた。


====================================


『Iさんが殺されました、残り五人です。Iさんは内通者ではないのでゲーム続行です』

『Eさんが殺されました、残り四人です。Eさんは内通者ではないのでゲーム続行です』


「なんだ……これは………」

「そんな……」


 いきなり二つのナレーションが連続して流れてきた。

 二人がほとんど同時に殺された…?

 まさか積極的に殺しに行っている奴がいるのか……

 俺の顔は自然と引き締まる。


「本当にこんなことをして、“蛇”は何がしたいんだ……」


 相原がぼやく、それに関しては俺も分からない。

 司会は俺らの事を人殺しだと言っていた。

 だとすると復讐と考えられるが……


「なあ相原、お前は人を殺したことがあるか?」


 俺のこの質問に相原は怒って当然の回答を返してきた。


「あるわけないだろ!この状況でも言っていいことを悪い事があるぞ!」

「悪い、それだけをはっきりさせておきたかったんだ」


 …俺は俺たちの周りで起きた死について思いだそうとする。

 俺も当然心あたりがない、だとすると思いつくのは間接的な殺し。

 いじめなどでわかっていても見て見ぬふりをしていた奴らの事ので、結果いじめ被害者が死んだら傍観者たちは間接的殺人者だ。

 きっとそのことを言っているんだろう。


 だが俺にはそのことについても心あたりが全くなかった。

 ここ数年、俺の周りで知り合いは誰も死んでいない。

 なら本当に俺は何故ここに……



「助けて!」


 後ろから声がした、女性の声だ。

 俺たちは急いで振り向く、そこには走っているあの女性の姿があった。


「お願い!助けて!死にたくな――」


 パン、という乾いた音がした。

 女性が地面に倒れる。

 女性が走ってきた方向にはもう一人、銃を女性に向けている男がいた。

 その男はゆっくりと地面に倒れて動かない女性に近づき、そして何発か女性に弾を打ち込んだ。

 アナウンスが聞こえてくる。


『Tさんが殺されました、残り三人です。Tさんは内通者ではないのでゲーム続行です』


 男は舌打ちをした。

 そしてここっちを向いてこう言ってくる。


「こいつは内通者じゃなかったか。ならお前たち二人のどっちかだ、死ね」

「ちょっと待て!一回落ちつ――」


 再び乾いた銃声がする。

 その弾は俺たちには当たらずに近くの壁に当たっていた。


「外したか、中々扱いが難しいや」

「くそっ!相原!一回逃げるぞ!!」


 俺は相原にそう声を掛けて男のいる方とは真逆に走り出す。

 相原は俺の声を聴いて急いで俺と同じ方向に走りだした。


「逃がすかよ!俺は生きて帰るんだ!」


 男は当然走って追ってくる。

 …何かおかしい。


 だが今は考えている暇はない、俺は手榴弾のようなものを男の方に投げる。

 次の瞬間大きな音と光が後ろで放たれた。


「くそっ!フラッシュバンかよ、小細工を!」


 男は光をもろに見てしまったのかその場でふらふらしている。

 この隙に俺たちは男から逃げ切った。


====================================



 俺たちは部屋の一つに逃げ込んだ。

 部屋はたくさんある、少しは見つからないでいられるだろう。

 俺は走って乱れた呼吸を整えて相原に話しかける。


「…あいつが内通者だろう、人を積極的に殺しに行っていた。内通者が勝つには内通者以外の奴を全員殺す必要があるんだからな」


 何かおかしいと俺も分かっている。

 しかし“それ”を考えたくなかった、“それ”は今考えられる可能性の中で最悪なものだったからだ。


「俺はあいつを殺しに行く、止めてくれるなよ」


 俺は立ちあがって男を殺しに行こうとする。

 拳銃をきちんと握りしめてだ。

 部屋のドアの前まで俺が来た時に相原に話しかけられる、俺は足を止めた。


「待ってくれ」

「…俺はあいつを殺すぞ」

「それを待ってくれと言っているんじゃない。……俺も行く」


 相原はそう言って立ちあがった。

 相原の顔は青白い、怖いんだろう。

 だが俺は駄目と言えなかった。


「……わかった、ならこの拳銃を持っていろ。どうせ武器なんてもってないんだろうからな」

「ああ、助かる」


 相原は俺から拳銃を受け取り、覚悟を決めた顔になった。


====================================


 俺たちは廊下に出た、あの男の気配はない。

 さっき男と出会った場所まで慎重に周りを警戒しながら移動した。

 …当然だが男はすでにいなかった。

 だがそこまで時間は経ってない、近くにいるだろう。


「相原、注意を怠るなよ」

「わかってる」


 俺と相原は銃を常に構えながら廊下を進む、いつ出てきてもいいようにだ。

 不意に俺らが通り過ぎたドアが開き、銃声が聞こえた。

 …あの男はここで待ち伏せしていたんだ。


 男が放った銃弾は俺の後ろにいた相原の足に当たった、相原は思わす銃を手放し、その場に倒れこんだ。

 男は相原に銃口を向けている、俺は男が銃弾を放つ前に男に照準を付け……引き金を引いた。


-----------------------------------------------------------------------------------


「相原!大丈夫か!?」

「ああ、死にはしないだろう。…あいつは?」

「死んだよ、殺した」


 俺が放った銃弾は男の眉間を貫き、男は死んだ。

 偶然にしては出来過ぎだな、素人の銃弾が相手の頭に当たるなんてな。

 だから確認しなくても男は死んだってわかる。


「……そうか、これで終わったんだな」

「そうだな、終わったんだ」


 ここでアナウンスが聞こえてくる。

 …俺らの希望を打ち砕くアナウンスが。


『Nさんが殺されました、残り二人です。Nさんは内通者ではないのでゲーム続行です』


「「なっ……」」


 俺たちは再びお互いを見つめ合う。

 どういうことだ?

 相原が…内通者!?


「な、なぁ加賀」


 相原は震えた声で話しかけてくる。


「…なんだ?」

「お前が、内通者なのか?信じてたのに……本当に内通者だったのか?」

「違う……俺じゃない…違う!!!」


 最悪の可能性が真実だった。

 “内通者なんていない”、それが俺が考え付いた最悪の、真実。

 それが現実となってしまった。


「そうかぁ…馬鹿みたいだな、俺」

「待て!相原!」

「騙されてたんだもんな……ずっと………うっ!」

「っ!どうした相原!おい!」


 いきなり相原が苦しみだした。

 俺は何もしていない。

 …毒か?



『話しているといきなりこの男性が苦しみだして倒れた―』


 俺ははっとした、内通者がいないのならあの女性も……。

 あの話は本当だったのか……

 でも何故いきなり……?

 俺は再び思い出す。


『皆さんはお互いに一つだけ質問することを許可します――』


 質問は一つだけ……!

 しかし相原はさっきの一つだけした俺に質問はしていないじゃないか!


『…加賀?お前、あの加賀か?――』


 …ああ、そういう事か。

 最初のあれが質問に数えられていたんだな。

 さっきのは二つ目、ルール違反だったってことか。

 ふざけんなよぉ……!


 俺はその場に泣き崩れた。

 そこにアナウンスが流れてくる。


『Aさんが亡くなられました、残り一人です。Aさんは内通者ではないのでゲーム続行ですが残りが一人になりましたのでKさんの勝利です、おめでとうございます』

「ふざけんなぁ!相原を、相原を返せこのくそ蛇野郎!」


 俺は精一杯、精一杯叫んだ。

 こんなふざけたゲームで、ふざけた理由で、どうして人が死ななきゃならねぇ!


『…それでは特別に、勝者である加賀さんには選択肢を差し上げましょう』


 選択肢?

 俺は下を向いていた顔を上げた。


『一つ目の選択肢はあなたには大金を差し上げましょう、そしていつも通りの生活に戻して差し上げます。二つ目の選択肢はこの場所で起こったことを“すべてなかったこと”にして差し上げます。どちらかを選んでください』


 すべて…なかったことに?

 出来るわけがないだろう……死人が生き返るだなんて………

 しかし、万が一本当だとするのなら―――


「…二番だ、すべてなかったことにしてくれ」

『わかりました、それでは』



 不意に俺の胸に鋭い痛みが走る。

 俺はその場で倒れてしまうが何とか後ろを振り向くことが出来た。

 俺は後ろから刃物で刺されたんだ。


「あなたを殺して、“社会的”に全てなかったことにしましょう。これでこの出来事を知っているのは私を含む主催者側だけですから」


 仮面を被ったやつが俺の目の前に立っていた。

 “蛇”と名乗っていたあの腐れ司会だろう。

 女性の声だ、まさかあの腐れ司会が女だとはな……

 血が出ていくのが分かる、意識も遠くなってきた。


 ………畜生、結局ゲームオーバーかよ。


「加賀さんが殺されました、残り0人です。ゲームオーバーです」


 最後にどこか楽しげな“蛇”の声が聞こえた。


====================================



「ただいま」

「お疲れ様です、どうでしたか?」

「全員死んだよ、惜しいやつも中にはいた」

「そうですか」

「社長から言われてなければ私の部下にしたかったよ、本当に」


「社長は今回のこれについて何を考えているのでしょうね」

「さあ?社長はいつだって私達よりも先を見ているからね。それよりもちょっと出かけてくるよ」

「どこにお出かけで?」

「あの森の中の館、あの子がまた何かやらかしたらしいし」


「ああ、あの子は貴女様のいう事しか聞きませんからね。行ってらっしゃいませ」

「うん、ちょっと行ってくる。彼らも気になるし……」

「彼ら?とは一体」

「いや、気にしないで。それじゃ、行ってくるよ」

 読んでくださり有難うございます。


 ホラー?と聞かれるとちょっと微妙なラインだと自分は思っていますが一応ジャンルはホラーです。

 この作品だけ読んでも謎が結構残りますが、後々投稿する予定の別の作品と話を繫げる予定ですのでそちらを読んでくださればわかる部分が出て来るかと、ある種のその作品のスピンオフみたいなものですね。


 と言うわけでここまで読んでくださり、改めてありがとうございました!

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