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レディー・カカの洋服争奪戦


 健の事件も終わり、秋斗達は平穏な毎日を過ごしていた。

 教室でチトセ達と話しをしていると、教室に入ってきた緒方が、朝礼もそこそこに、

出席だけを取ると言った。

「お前ら~校長が急遽、今から全体集会を開くことになった。今から体育館に行くぞ~」

 緒方のその一言で教室がざわざわした。

「またかよ・・・・・・今度はなんだ?」

 秋斗達はそんな事を思いながら体育館に行った。体育館に集まって、少し待っている

と校長が壇上に出てきた。

 壇上に上がり、いつものどこか楽しそうな顔をすると、マイクで喋りだした。

「今日お前らを呼んだのは・・・・・・学校生活を頑張るお前らに、俺からプレゼントをしよ

うと思ってな」

 校長がそう言うと、1学年はざわざわした。

「なんだ、なんだ?」

 そう言う声が聞こえる。だが、不思議に思う一年生とは違って2,3年生は「今日は

なんだろうな」と慣れた感じだった。

 そんな生徒をお構いなしに、校長は楽しそうに言った。

「今日の優勝賞品はこれだ!」

 そう言って、校長は壇上の上にある、モニターを指指して言った。モニターに映った

校長が持っていたのは、可愛らしい洋服だった。

「あ! あの洋服は!」

 体育館に居た女子生徒達のほとんどが、モニターに映し出された洋服を見て、黄色い

声をあげる。隣に居たカナも、珍しく食べ物以外でテンションが上がっている。

「あれ、そんなに欲しいのか?」

 秋斗がカナに聞くと、カナは「当たり前だよー!」と声を荒げて言った。

「ほら~、大分前に、秋斗と一緒に通販見てた時の洋服だよ~!」

 カナにそう言われ、秋斗は大分前に見た通販のことを思い出した。

 確か、白龍学園に来たばかりぐらいのことだった。





『は~い! 皆さんこにゃにゃちは~! 皆のアイドルで司会の~ぺティーで~す』

「こにゃにゃちは・・・・・・」

「わー、ベティーちゃーん!」

 良子のサプライズ誕生日パーティーをして、翔の残高が可哀想な事になったその日の

夜。カナはこの街に来てから、見るようになっていた、キャラの濃いベティーちゃんが

出演する、通信番組を見ていた。

 この通販番組では、食べ物から洋服、日用雑貨まで、幅広い物を販売していて、なん

でもカナが言うには、クラスの女子の間ではこの通販に出る賞品がの洋服が、可愛いと

人気らしい。秋斗はリビングで、その通販番組をカナと一緒に見ていた。

 司会のベティーちゃんが、今日もノリノリで番組を進行していく。

『さあ、今回紹介する商品はこちら! あの、超有名なファッションデザイナーの、レ

ディー・カカが当番組の為に、わざわざデザインしてくれた世界に一つだけのこのワン

ピース! 見て下さいこの可愛さ! なんと可愛らしいのでしょうか~! この洋服を

着れば、気になるあの人のハートもイチコロですね!」

 そう言ってベティーちゃんは、一着のワンピースを視聴者に見せた。そのワンピース

は、薄いピンク色をしていて、花柄のレースが付いた可愛らしい、それでいて、独特な

洋服だった。

「へ~、凄いな」

「わ~! 超可愛い~! 超欲しい~!」

 秋斗は、超有名なファッションデザイナーがこの番組の為だけに洋服を作ったという

事に驚いた。カナはその洋服を見てテンションが上がり、おおはしゃぎしている。

 チトセが着た所が見てみたいな・・・・・・。

 なんて事を思いながら秋斗は見ていた。

『さあ、気になるこのお洋服のお値段は~・・・・・・』

「えー! いくらいくら~?」

 カナは目を輝かせながら、テレビに釘付けになっていた。

 安かったら買いそうだな・・・・・・。

 10万円程のお金も、カナに使わせれば、あっという間だ。秋斗は、そんなテレビに

釘付けになるカナを見て心配になった。

『な、な、な、なんと! 驚きのこのお値段! 9999万円で~す! さあ、早い者

勝ちですよ~今すぐ、この番号にお電話を!』

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

 岩神兄弟の間に、久しぶりの沈黙が訪れた。

「・・・・・・寝るか」

「・・・・・・うん」

 確かに驚きの値段だ・・・・・・。

 でも驚きのお値段って、普通安い時に使うんじゃないのか?

 って言うか誰も買えねーよ。




「あれ、売れなかったんだろうな・・・・・・」

 秋斗はそんな事を思いながら、尚も喋り続ける校長の話を聞いた。

「それと後もう一つ、これだ!」

 そう言って、校長はなにやらチケットを掲げた。

「なんだ?」

 生徒達からそんな声が聞こえた。

 そんな生徒を見て、校長は笑いながら言った。

「ハッハッハー、これはこの街の遊園地、エバーランドのチケットだ」

 校長がそう言うと、遊びたい盛りの高校生達のボルテージは一気に高まった。

 秋斗がチトセの方を見ると、洋服にはあまり興味を示していなかったチトセだったが

遊園地のチケットを見ると、興奮したように目を輝かせていた。

 そんな生徒の反応を嬉しそうに見て校長は今回の競技の説明をした。

「今回は二人一組でペアになってもらう」

 校長がそう言うと、良子はチトセに一緒にペアにろうと言った。だが、校長は続けて

言った。

「が、それは男女のペアに限る」

 その校長の言葉を聞いて、良子はガックリ肩を落とした。

 チトセが校長の話を聞いて、秋斗に一緒にペアになろうと言ってきた。

「秋斗、一緒にやろー」

「お、おぅ!」

 チトセの提案を、秋斗はもちろん喜んでオーケーした。

「良子、俺とペアなってくれよ」

「はぁ、アンタでいいか」

「やった!」

 良子は渋々、翔とペアになった。

「秋斗はチトセとペアになっちゃったかぁ~。あ、こう太! 一緒にやろ~?」

「し、しょうがねーな、ペアになってやるよ」

 カナは同じクラスの、身長があまり変わらないこう太とペアを組んだ。

 校長は生徒を見回し、皆がペアを組んだことを確認すると今回の主旨説明をした。

「今回は1組のペアに一つずつ、コレを配る」

 そう言って、校長は星の模様をした小物を掲げて見せた。

「ペアの二人には手錠でお互いを拘束した上で、コレを皆には奪い合ってもらい、合計

10個集めて、私の元にたどり着いた者が優勝となる! もし、自分の星を奪われてし

まったら、その時点で失格となる! とにかく10個スターを集めればいいのだ! 暴

力行為以外だったら、どんな手を使ってもいいぞ!」

 校長の手錠と言う言葉に生徒は少し動揺したものの、皆闘志をみなぎらせていた。

 スターと手錠がペアの生徒全員に配られたのを見ると、校長は言った。

「ああ、言い忘れていたが、ペアになった生徒達はお互い制服を交換しろ」

 その校長の言葉に生徒皆がざわついた。

「なんで制服交換するんだよ・・・・・・」

「校長の趣味だろ・・・・・・」

 そんな言葉を聞いて校長は事も無げに言う。

「なに、ただの私の趣味だ!」

「やっぱり校長の趣味か・・・・・・」

 そんな生徒の声が聞こえた。

 今日のこのイベントの為だけに作られたのであろう、着替えをする為のボックスが、

体育館に設置されていた。そこに入り、渋々皆はペアの男女同士、制服を交換してペア

同士の腕に手錠を付け、校長の言葉をまった。

「よし、それではスタートするぞ! 皆、己の欲望の為に行け―――!」

 校長のその言葉をきっかけに、さっきまで友達だった者達の星の取り合いが始まった。

男子は、女子の制服を着てまで参加しているからか、やっきになっていた。

 秋斗は手錠で繋がれたチトセと、人の居ない所にひとまず非難した。

 チトセの匂いがする・・・・・・。

 チトセの制服から漂ういい匂いに、秋斗が気を取られているとチトセが自分の制服を

着ている秋斗を見て、笑いながら言った。

「秋斗、似合ってるね。女の子みたい! アハハハ」

「俺は男だっ!」

 そんなことを言いながら、秋斗は自分の制服を着たチトセを見た。男の秋斗の制服を

着てるから、少しダボっとしてしまっているが、それが逆にセクシーだ。

 秋斗がそんな事を考えていると、秋斗の後ろから二人のペアの生徒が襲ってきた。

「星を渡せ――――――――!」

「秋斗! 危ない!」

「うわっ」

 チトセに助けられ何とか星は守れたものの、秋斗達は一度その場から離れた。

「くそっ、みんな必死だな」

 秋斗がどうやって他の人から星を取るか考えていると、チトセが「こっち」と言って

秋斗を引っ張った。そして、体育館に飾られていた`ある物´の前で止まった。

「これは・・・・・・」

「校長はどんな手を使ってもいいって言ってたでしょ?」

 チトセに引っ張られてきた所には木刀があった。チトセはその木刀を取ると、感触を

確かめるように、木刀を振りかざした。

「でも、暴力行為はダメって言ってたぞ?」

 秋斗の言葉を聞いたチトセが、笑いながら言った。

「別に、相手を倒して星を奪おうなんて思ってないわよ」

「じゃあ何に使うんだ?」

 秋斗がそう聞くとチトセは「見てて」と言って、秋斗の後ろを見た。チトセの見る方

を見てみると、そこには秋斗達の星を奪おうと1組の生徒が二人に向かって来ていた。

「てや―――――!」

 そう言いながら1組の生徒に向かっていくチトセに、秋斗は付いていくだけで精一杯

だった。

「星は貰ったぜ!」

「フンッ、遅いわ!」

「なっ!」

 チトセは木刀を使って、生徒を傷つけることなく華麗に星を奪った。

「あー! 俺達の星が・・・・・・」

「もう、なにやってんのよ!」

「うぅ」

 チトセに星を奪われてしまった生徒の男子は、ペアになった女子生徒にこっぴどく怒

られていた。

「スゲー・・・・・・」

 秋斗はチトセの動きに関心して見とれていた。

「いでっ!」

「ほら、次いくよっ」

「お、おう!」

 チトセに引っ張られて星集めを開始した秋斗ペアは、次々と他の生徒から星を奪って

行った。その星は全てチトセが取った物だった。

 チトセは木刀をまるで自分の体の一部のように操っていた。木刀を使いながら次々と

星を手にしていくチトセのは他の生徒を寄せ付けず、カッコ良かった。

「あと一個ね!」

 星の数は9個まで集まっていた。最後の一個をどの生徒から奪おうか探している秋斗

達の前に、良子と翔のペアが現れた。

「チトセ、秋斗とペアを組むなんて・・・・・・」

 急に秋斗ペアの前に現れた良子は、なにやら見当違いのことを言ってきた。

「だって男女ペアなんだから仕方がない・・・・・・」

「うるさい! 翔、やりなさい!」

 秋斗の話を聞こうとせず、良子は自分の耳に何かを入れて翔に言った。翔が「任せと

け!」と言うと、体から紫のオーラを出し始めた。

「なっ! やばい!」

 翔の異能、歌の力には人を魅了してしまう力がある。秋斗達が翔の声を聞いたら、翔

の歌声に引き付けられて、あっという間に星を全部奪われてしまうだろう。

 秋斗が焦っていると、チトセは自分の耳に耳栓をいれた。それを見て、良子も自分の

耳に耳栓を入れたのだとわかった。

「てか、なんでそんな物(耳栓)なんか持ってんだよ・・・・・・」

 そんな秋斗の言葉を聞かずに、チトセが急に秋斗の背中に乗っかってきた。

「わっ! なにするんだ?」

「アタシが秋斗の耳を塞ぐから、秋斗は良子達の星を奪って!」

「なるほど・・・・・・わかった!」

 秋斗とチトセのやり取りを見ていた良子は、チトセが秋斗におぶさって密着している

二人の姿を見て激怒していた。秋斗はそれを見なかったことにして、翔の一瞬のすきを

つき、胸に付いた星を奪った。

 秋斗達が翔の胸の星を奪った拍子に、翔と良子は慌ててバランスを崩し倒れこんだ。

その倒れた拍子に、良子の制服を履いていた翔のスカートがめくれて、パンツが丸見え

になっていた。

「ちょっとアンタ! なにしてんのよ―――!」

「しょ、しょうがないだろ―――――!」

 翔のパンツを見て、顔を真っ赤にする良子に殴られながら、翔は泣き叫んでいた。

「翔・・・・・・すまんな」

 秋斗はそんな独り言をいいながら、チトセを降ろして校長の所に走った。

「秋斗ぉー待て~!」

「ん?」

 校長の所に急ぐ秋斗達の前に、カナとこう太のペアが現れた。

 現れた。と言うよりも、こう太はカナのバカ力に引きずられていた。

「カナもあの洋服欲しいんだから~! 星よこせ~!」

「いて――! お、おいっ! もうちょっとスピードを落とせ!」

 カナがそのままこう太を引きずりながら秋斗達に向かってきた。チトセはフッと笑み

を漏らしながら、懐から何かを取り出した。

「カナ! これを見て!」

「ん~? あ―――! それは~!」

 チトセがカナに見せたのは今日、新発売されたばっかりのお菓子だった。カナはお金

を使いすぎてしまい、買えないことにショックを受けていた。

「ていっ!」

「わーい! お菓子だ~!」

「お、おい! ちょっ、うわ―――!」

 チトセが校長とは反対の方向にお菓子を投げると、カナはお菓子の方向に走って行っ

た。カナに引きずられながら叫んでいるこう太を秋斗は可哀想なものを見る目で見つめ

て、校長の方に走りなおした。

「ちょっと待て、岩神!」

「今度はだれっ・・・・・・」

 声をする方を見ると、女子の制服を着ながら真剣な顔をする健の姿があった。

「健がこの勝負に乗っかるなんてな・・・・・・」

 秋斗の意外だという言葉に、少し顔を赤くして健は言った。

「どうだっていいだろう・・・・・・」

 そんな健を見て、チトセが笑いながら言った。

「もしかして、さやちゃんの為じゃないの?」

「あ~なるほど」

「なっ!」

 チトセにそう言われると、健はさらに顔を赤くしながら言った。

「と、とにかくその星、貰うぞ!」

 ペアの女の子を抱えながら健は秋斗達に向かってくる。

「うわっ」

 ペアの女の子を抱えてというハンデがあるにもかかわらず、健の動きは俊敏だった。

「ヤバイな」

「秋斗も異能の力使いなよ」

「あ、その手があったか」

 チトセにそう言われ、秋斗は七色のオーラを体から出した。すでに星は集まっていた

が、健の動きを止める為、健の胸にあった星を狙ってチトセを抱えて飛び出した。

「なにっ!」

 秋斗の異能のスピードに驚きながらも、健はギリギリの所で秋斗の腕から星を守った。

「やるな! 岩神!」

「くそっ、届かなかったか・・・・・・」

「まだよっ」

「なに!」

 秋斗がそう思っていると、秋斗に抱えられていたチトセが持っていた木刀を使って、

健の星を取った。

 悔しがる健を後に、秋斗とチトセはそのまま校長の元にたどり着いた。

「よし! 優勝者は1年の岩神秋斗と西園寺チトセのペアとする!」

 校長のその言葉で、今日の大会は幕を閉じた。優勝できなかった生徒も頑張った自分

を褒めて、優勝した秋斗とチトセのペアに惜しみない拍手を送った。


「やった――! 遊園地のチケット、ゲット―――!」

 校長から遊園地のチケットを貰って嬉しそうなチトセに、秋斗は着て欲しいから、と

言う意味を込めて優勝賞金のワンピースを上げるよ、と言った。

「え? いいの?」

 だから今着てくれない? と秋斗が言おうとした時だった。

「じゃあ、コレ健に上げるよ!」

「えっ!?」

 チトセが健に言った。

「ほ、本当にいいのか?」

 驚いた健はチトセに何度もそう聞いた。

「うん、アタシは遊園地のチケットが貰えただけで満足だからね! 秋斗がアタシにく

れるって言ったから、お礼は秋斗に言いいなよ」

「岩神、恩にきるぞ―――!」

「あ、ああ・・・・・・」

 本当はチトセに着て欲しかったがすごく嬉しそうな健を見て、まあいいかと思う秋斗

だった。

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