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夢野良子(ゆめのりょうこ)


 チトセと一緒に暮らし、チトセと一緒に白龍学園に通うiQ200の天才少女、夢野

良子。今回は、そんな良子の視点から見ていく。

 秋斗達は平穏な日常を送っていた。授業も終わり、休み時間。良子は最近よく見る光

景を見ていた。

「ねぇねぇ秋斗、この間の話なんだけどさー」

「おー」

 また喋っている。

 最近、休み時間にチトセと秋斗は二人で仲良く喋ってる事が多い。そんな光景を静か

に見守っていた良子は内心穏やかではなかった。

 チトセ、私というものがありながら・・・・・・なんで秋斗とばっかり話しているのよ! 

 私がそんな事を考えていると、バカが話しかけてきた。

「よう良子、そんなに眉間にしわ寄せてどうしたんだよ~」

「うるさいわね!」

「そんな・・・・・・話掛けただけなのに・・・・・・」

 良子に怒鳴られて、翔はとぼとぼと自分の席に戻っていった。

 幼稚園の頃にチトセと知り合いだったからってなによ!

 私の知らない頃のチトセに会ってたのは悔しいけど、私なんて10年間チトセと一緒

に居たんだから。

 そんな事を考えながら秋斗を睨みつける。秋斗はそんな視線を感じてチトセに言う。

「・・・・・・なんだか良子機嫌悪いな・・・・・・」

 そう言われたチトセは、秋斗に小声で言った。

「最近機嫌悪いんだよね。機嫌悪い時の良子には関わらない方がいいわよ」

「なんでだよ」

 秋斗はそう言われて、聞き返した。するとチトセは、秋斗にさらに近寄って小声で言

った。話す為とはいえ、チトセが近寄ってきた事に秋斗は嬉しかった。

「昔、アタシ良子に男にされたことがあるんだよ」

「・・・・・・はい?」

 言ってる意味が分からず秋斗は聞き返す。

「だから、薬を飲まされて1日だけ男の姿になった事があったのよ」

「薬で男に・・・・・・? ハハっ、んな漫画みたいな事があるわけ・・・・・・」

 少し笑い飛ばそうとした秋斗がチトセを見ると、チトセは真剣な顔をしていた。秋斗

は一度行った事のある良子の部屋に飾られていた、沢山の賞状を思い出した。

「・・・・・・まじかよ」

 そんな二人のやり取りを良子は遠くから見ていた。何を言っているのかは聞こえない

が、良子から見るとチトセと秋斗がイチャイチャしているようにしか見えない。

 なんなのよ、岩神秋斗!

 

             


 その日、学校が終わるとチトセは秋斗と用事があると言う事で、良子は先に家に帰る

事になった。家に着くと、家政婦のつぐみとレオが出迎えてくれた。リビングでじゃれ

てくるレオを撫でながら、良子は今日の事を思い出す。最近やたらと仲のいいチトセと

秋斗を。

 せめて秋斗が女だったら私もこんなに焼きもちなんて焼かないわ・・・・・・。

 そんな事を思いながらふと横でグーたらしている家政婦のつぐみを見る。

 秋斗が女の子だったら・・・・・・私も焼きもちやかない・・・・・・か。

「そうよ!!」

 良子の大声にレオもつぐみもびっくりしていたが、そんな事はお構いなしに良子は自

分の部屋に行き、なにやら難しい本を取り出した。良子は昔、自分の作った薬でチトセ

を男の子にする事に成功した事を思い出した。

 あの時は、効き目が1日しかなかったし、チトセにもう2度とやっちゃダメと怒られ

たこともあり、あれ以来一度も作っていなかった、女の子が男の子になる薬を、今度は

逆で男の子が女の子になる薬を作る事にした。

「フッフッフッフ、今に見てなさい。岩神秋斗・・・・・・!」

 そんな良子の不気味な笑い声が部屋に響いてから3時間後、薬は完成した。

「フー、久しぶりに作ったから時間かかっちゃったわね~」

 汗もかいてしまい、洋服が少しベトベトする。

 しかたない、秋斗の家に行く前にお風呂に入るか・・・・・・。

 そう思って良子はお風呂に入る事にした。良子がお風呂に入って居る時、良子の家の

チャイムが鳴った。

「どちらさま~?」

 つぐみが出ると、そこには見知らぬ男の子が居た。

「あ、あの、俺良子と同じクラスの者なんだけど、良子に用事があってきたんだけど・・・・・・」

「あらそうなの! でも今良子お風呂に入っちゃってるのよね~。私はこれから買い物

に出ちゃうんだけど・・・・・・良子が出るまでちょっと良子の部屋で待っててちょうだいな」

「は、はあ・・・・・・」

 そういわれ、翔は良子の部屋で待つ事にした。

「それにしても、女の子の部屋って良い匂いがするんだな・・・・・・」

 そんな事をいいながら翔は、初めての女の子の部屋に興味心身だった。壁に掛けられ

た写真を見ると、全部チトセが写っていた。

「・・・・・・まあ、好きってのは知ってたけどね・・・・・・俺の写真とかねえのかよ・・・・・・」

 ありもしない事をいいながら部屋を見回していると、翔はテーブルに置かれた小さな

ビンを見つけた。

「ん? なんだこれ・・・・・・香水か・・・・・・?」

 おしゃれな瓶からは、良い匂いがした。

「少しだけなら・・・・・・バレねーよな?」

 翔が少しだけ自分の体に香水の様なものをかけようとした、その時だった。

「グルルルル――――!」

「わっ! なんだ!?」

 翔が声のする方を見ると、そこには良子の部屋をウロチョロする翔に、警戒心をむき

出しにしたレオが居た。

「へ・・・・・・豹・・・・・・? いやいや、まさか・・・・・・アハハハ・・・・・・」

「ガオ――――――!」

「ギャ――――――!」

 レオに襲われた拍子に翔は持っていた瓶の、中身の液体を全部かぶってしまっていた。

だがそんな事よりも、翔はレオから逃げる事で精一杯だった。

「・・・・・・ん? なに!?」

 良子がお湯につかっていると、風呂の外から叫び声が聞こえた。急いでタオルを巻い

たままの状態で、良子が声のする方に行った。

「私の部屋・・・・・・?」

 声のする自分の部屋に行くと、そこには見た事のない女の子と、その女の子に襲い掛

かるレオを見つけた。

「レオ! ストップ!」

 良子の一言で、レオは動きを止めたが、目の前の女の子には依然警戒心を剥き出しに

したままレオはうなり声を上げていた。良子は、そんなレオを落ち着かせ、自分の部屋

に居た、見知らぬ少女に聞いた。

「あなた・・・・・・誰・・・・・・?」

「へ? なに言って・・・・・・っていうかその格好・・・・・・!」

「あっ!」

 良子は自分の作った薬が床に零れているのをみつけた。中身は、床に全部こぼれてし

まっていた。

「あ~折角作ったのに・・・・・・」

 落ち込む良子を見て翔が話かけた。

「あの・・・・・・」

「あら、あなた」

 が、翔が言い終わる前に、翔に薬がかかってしまっているのを見た良子は「ちょっと

来なさい」と言って翔を無理やりお風呂場まで連れて行った。

「わ! ちょっ! なにすっ・・・・・・な! なんだ・・・・・・体が・・・・・・!」

 何故か抵抗する少女の洋服を剥ぎ取り、良子は一緒に見知らぬ少女とお風呂に入った。

「ほら、ぬれちゃってるじゃない。さっさと汚れ落としなさい」

「・・・・・・」

 少女は洋服を脱がせると、急に大人しくなった。

「まあ、今日作った薬はダメになっちゃたけど・・・・・・また作ればいいわね。・・・・・・ん?」

 良子は大人しくなった、というよりも挙動不審になった少女を見る。

 ・・・・・・変な子ね。

「早く、体流しちゃいなさい」

「・・・・・・!」

 翔は驚いた。というより、頭が真っ白になっていた。

(何で、体が女になってるんだ―――!? これは夢か? 夢なのか!? 俺の願望が

こんな夢を見せているのか!?)

 なんて事を思いながら、横で物思いにふけりながらお湯に浸かっている良子を見る。

(もしこれが現実だとして、この状況で俺が翔だとバレたら・・・・・・俺はきっと殺される!

何とかバレないうちに、早いとこ、ここから離れよう・・・・・・!)

 そんな事を思って翔は急いで体を流した。

「さ、出ましょうか」

「え・・・・・・」

 翔が体を流し終えると、良子はお湯から出た。豊かな良子の体が、翔の目の前にさら

けだされる。

(良子の・・・・・・体・・・・・・)

 自分を見てボーっとしている少女を見て良子は言った。

「あらあなた、鼻血でてるじゃない」

「うわ!」

「のぼせちゃったのかしら・・・・・・来なさい」

 急に鼻血を出した少女の腕を引っ張って、お風呂場から出ると良子は少女の体を拭い

てあげ、自分の洋服を着せて上げた。少女が良子の洋服に着替え出てくると、良子は言

った。

「それで、あなた・・・・・・誰なの?」

「うっ!」

 さっきより挙動不審になる少女を見て良子は言う。

「あなた・・・・・・どこかで見た事があるような気がするのだけど・・・・・・私の気のせいかし

ら・・・・・・?」

「・・・・・・!」

 女の子は大きく頭を縦にふった。

「ふ~ん・・・・・・」

 ふと、レオを見るとレオがまだ警戒心を剥き出しにして、見知らぬ少女を見ていた。

 珍しいわね・・・・・・レオが女の子にこんなに警戒してるなんて。

 良子がそう思っていると、買い物に出ていたつぐみが買い物から帰ってきた。

「あら良子ちゃん、良子ちゃんに用事があるってお友達がきてたから、部屋にあげちゃ

ったわよ」

「私に・・・・・・用事?」

 そう聞いて良子が隣にいた見知らぬ少女に目を向けて言う。見知らぬ少女は、恐る恐

る口を開いた。

「あ、あの・・・・・・秋斗が、今日家に来てくれって・・・・・・」

「秋斗君が・・・・・・? そう、あなた秋斗君のお友達だったのね」

 良子は少し考えてつぐみに言った。

「私、今から秋斗君の家に行ってくるわ」

「わかったわ~。あら? でもさっき来てた子は・・・・・・」

「夕食までには帰るから」

 「男だったんだけど・・・・・・」そういうつぐみの言葉を最後まで聞かずに良子は女にな

った翔を無理やり連れて秋斗の家に向かった。

「ほら、早く行くわよ」

「う・・・・・・」

 逃げるタイミングをのがしてしまい、良子に何も言い訳が見つからずに翔は渋々、良子

について行った。

「それにしても秋斗君・・・・・・私になんの用なのかしら・・・・・・」

 そんな独り言をいいながら良子は秋斗の家に向かう。

 まさか私に、チトセを賭けて勝負しろ。なんて言うんじゃないわよね・・・・・・いいわ、そ

の時は勝負してやろうじゃない!

 そんな事を考える横で、女の体になり逃げるタイミングものがした翔も、物思いに耽る。

(なんで、体が女になっちまったんだよ! まあ、それで美味しい思いもできたんだが・・・

・・・いや! そんな事言ってらんねーぞ! 今、良子にバレたらマジで殺されるかもしんね

ーからな・・・・・・今日はどうにかごまかして、明日病院にいこう・・・・・・)

 二人共まったく違う事を考えながら歩いていると、秋斗の家に着いた。

 岩神秋斗! チトセは渡さないわよ!

 良子はそう意気込んで秋斗の家のドアを開けた。

 ―――――パーン!

 ―――――パーン!

 ―――――パーン!

「「「良子、誕生日おめでとーう!!」」」

 良子がドアを開けると、そこには秋斗だけでなく、カナも、優も、チトセも居て、皆

がクラッカーを鳴らして、家に入ってきた良子を迎えた。

「え・・・・・・?」

 勢い込んでいた良子が唖然としていると、チトセがなにやら小包を持ってきて言った。

「良子、今日誕生日でしょ?  折角だから、皆でサプライズパーティーしようと思っ

てね」

「チトセ・・・・・・」

 笑顔で自分の誕生日を祝ってくれるチトセに良子は感動した。何よりも、自分の事を

思って誕生日パーティーを開いてくれた事が嬉しかった。

「はい、コレは俺から」

「カナも良子にプレゼントあげる~」

「良子様、私からも受け取って下さい!」

 そう言って、秋斗とカナと優も、それぞれ良子にプレゼントを渡す。

「皆・・・・・・」

 皆からの気持ちが嬉しくて、良子は感動していた。そんな喜ぶ良子に秋斗が聞いた。

「あれ? 翔はどうした?」

「え?」

「うっ!」

「確か、良子を迎えに家に行ったはず・・・・・・」

「あ―――っ! ご飯冷めちゃうぜ! 早く食おーぜ!」

 秋斗が言い終わる前に、女の姿の翔が割ってはいる。そんな見知らぬ女の子を見て、

秋斗が言う。

「・・・・・・お前誰だ」

「うっ・・・・・・!」

「えっ? この子、秋斗の友達なんじゃないの?」

「違うぞ? 一緒に来たって事は、良子の友達じゃないのか?」

「私は秋斗の友達って聞いたから・・・・・・」

「そうなのか!?」

「うっ・・・・・・(や、やべー!)」

 そう話す秋斗達の話しを聞いていた皆も、良子と女になった翔を見た。

「わ、私は・・・・・・翔子! そう、翔子! 翔の妹だよ!」

「翔の妹?」

 怪しげに秋斗が翔を見て言う。

「翔のやつ・・・・・・良子を呼びに、妹に行かせたのかよ。ったく」

 そう言われて、翔はホッとした。

「早く食べようよ~」

「ああ、そうするか」

 カナの言葉を聞いて、秋斗が頷いた。

 皆で料理を食べていると、良子は皆から貰ったプレゼントを開け始めた。

「チトセのは・・・・・・聖書・・・・・・?」

「・・・・・・・・・・・・」

 秋斗はまたコイツは変な物を・・・・・・と言う顔で、チトセを見ていた。

 だがチトセはドヤ顔をしながら言った。

「良子はいろんな難しい本持ってるけど、コレは持ってないでしょ?」

「チトセ・・・・・・ありがとう! 一生大切にするわ!」

 良子の喜ぶ顔を見ると、まあこれもチトセらしいなと思える。

「秋斗君のは・・・・・・あら、可愛い! 手帳ね」

 秋斗は無難な手帳を選んだ。

「ありがとうね、大事にするわ。カナちゃんが・・・・・お菓子の詰め合わせに、優ちゃん

がブレスレット・・・・・・皆、本当にありがとう! 最高の誕生日だわ」

 カナは、カナらしいお菓子を選んでいた。優も家政婦としての少ないお小遣いがある

らしく、ブレスレットをプレゼントしていた。

「あ、コレは俺から・・・・・・じゃなくて、俺のお兄ちゃんから・・・・・・」

 そう言って翔子(女の姿の翔)はプレゼントを渡した。

「「「「えっ!!」」」」

 プレゼントを渡した翔子いや、翔を見て皆が固まった。

「ん? どうしたんだよ」

 固まる皆を見て、翔が言った。そんな翔を見て、秋斗が言った。

「お前こそどうしたんだよ・・・・・・翔」

「えっ!」

 秋斗の言葉に翔は、ハッとなって自分の体を見た。顔は見れないが、さっきまで女の子

の細い腕だった腕が、元の男の腕に戻っている。

 秋斗の言葉からも、きっと顔も元に戻っているであろう事は容易に想像できた。

 良子の洋服を着た翔が皆に向かって弁解する。

「あ、いや、違うんだ!これにはその・・・・・・深~いわけが・・・・・・ヒッ!」

 理由を説明しようとした翔が、良子の鬼の様な形相を見て言葉に詰まる。

 良子は鬼の様な形相から、一旦何かを思い出したらしく、今度は顔を真っ赤にした。

「翔・・・・・・」

 怒りに震える良子を宥めようと、翔は必死に訴えた。

「違うんだよ良子! なんか知らないけど勝手に・・・・・・」

「死ね―――――!!」

「ギャ―――――!!」

 翔の言葉なんて聞く耳持たずに、良子は翔をボコボコにした。

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