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学園祭三日目 告白


 ライガーの騒動が起きて、学園祭は中止になるかと思われたが、校長がみんなにもう

安全だと説明し、学園祭は最終日までおこなわれた。

 秋斗達は時間の許すかぎり学園祭を楽しんだ。夜の10時になり、百発の大きな花火

が打ち上げられ、学園祭は幕をおろした。

「あー楽しかったー! それじゃ、帰ろう良子!」

「え!?」

「え?」

 学園祭が終わり、帰ろうと言ったチトセに秋斗が聞いた。

「・・・・・・帰るのか?」

「ん? 帰るわよ?」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 秋斗は学園祭二日目に、ネモの占いで言われた言葉を思い出していた。


『・・・・・・長年の想い人が、秋斗に告白するって出てるのね・・・・・・』


 それは、今日の出来事だと言われた。

「なにかしら~、チトセが帰ったらまずい事でもあるのかしら?」

「え、い、いや、別に・・・・・・」

 良子に怪しまれながらも、秋斗はチトセに確認したかった。

「あ、あのさチトセ、何か俺に言う事とか忘れてない?」

「・・・・・・ん? ああ、また明日!」

「・・・・・・お、おう、また明日」

「・・・・・・? 変な秋斗~!」

「それじゃ、また明日」

「ばいば~い!」

 元気なカナがチトセと良子に手を振ると、二人はさっさと帰ってしまった。

「カナ達も帰ろうよ~」

「・・・・・・そうだな、帰るか」

 結局、チトセに告白なんてされる事なく秋斗はカナと家に向かった。


 なんだよ、昨日眠れないぐらい緊張したってのに・・・・・・。

 ボーっとしながら歩いていると、カナがポツリとつぶやいた。

「好きなの」

「・・・・・・え?」

 意味がわからなかった秋斗はカナに聞き返した。

「カナ、秋斗の事が好きなの!」

「・・・・・・冗談・・・・・・だろ? てか急になに言って・・・・・・」

 カナの手を見ると、今日の出店で当たった賞品のお酒が開けられていた。カナを見る

と、ほっぺがほんのり赤くなっている。

「お酒飲んだんだな? ・・・・・・はぁー、ひと口で酔っ払うなよ」

「酔っ払ってないもん・・・・・・」

「からかってるんだろ?」

「本当だもん・・・・・・」

「はい、はい」

「本当だもんっ!!」

 そう言って見たカナの顔は、今まで見た事もないくらい、悲しい顔をしていた。

「ちょっ、どうしたん―――」

 秋斗の胸倉を掴んで、カナは秋斗の顔を自分の顔に引き寄せた。

 カナの震える唇が秋斗の口に触れた。ちょっとだけ、お酒の味がした。

「・・・・・・え? カ・・・・・・ナ・・・・・・」

 唇が離れて、秋斗が呆然とカナを見ると、カナの顔は耳まで真っ赤になっていた。

「秋斗の鈍感! バカッ!」

「あ、ちょっ・・・・・・」

 秋斗にキスをしたカナは、走って家から出て行ってしまった。

「カナが・・・・・・俺の事・・・・・・ウソだろ?」


 そこで秋斗はネモの言葉を思い出す。

『・・・・・・長年の想い人が、秋斗に告白するって出てるのね・・・・・・』

 それってこの事なのか? 

 追いかけるべきなのだろうけど、秋斗の足は棒のように動かなかった。

 信じられない・・・・・・。だって俺とカナは、兄弟なんだぞ・・・・・・?

 だけど冗談でキスなんてするだろうか? そんな事を思っていたが、秋斗はハッ

とすると、カナを探しに外に出た。

 色んな事を考えながらカナを探し回る事2時間。カナは中々見つからなかった。

「どこ行ったんだよ・・・・・・」 

 時間はもう夜の12時を過ぎていた。秋斗の不安は段々つのっていった。

 カナを探し続ける秋斗の携帯に、ネモから電話があった。

「もしもし、ネモか? 今、ちょっと忙しい・・・・・・」

「・・・・・・カナ、ネモの所に居るの~」

「えっ! 本当か!?」

「本当なの~。でも・・・・・・今日はネモの所に泊まるって言ってるの~」

「そ、そうか・・・・・・悪い」

「大丈夫なの~」

「ありがとうな・・・・・・」

 そう言って秋斗は携帯を切った。



「カナ、大丈夫なの~?」

「ネモ・・・・・・ごめんね・・・・・・ありがとう・・・・・・」

「カナ、ずっとそればっかりなの~」

「うん・・・・・・ごめんね・・・・・・」

「カナ・・・・・・」

 元気のないカナに、ネモはココアを入れてあげた。ネモはカナの隣に座り、カナが言

うのを待った。

「ネモ・・・・・・」

「・・・・・・ん?」

 何かを言おうとするカナの手が震える。ネモはそんなカナの手を握ってあげた。カナ

は一瞬ビクッと体を震わせると、ネモを見た。ネモは優しい顔をしていた。

 そんなネモを見て、カナの目から涙が零れた。

「カナ、秋斗が好きなの・・・・・・」

「うん」

 ネモはカナの言葉をちゃかしたりしなかった。

「でも秋斗はカナの事、妹としか見てくれないの・・・・・・血も繋がってないのに! こんな

に・・・・・・こんなに好きなのに!」

 そう言うカナの目から、沢山の涙が溢れる。

「いいの。いっぱい泣いていいの」

「うぅぅ・・・・・・うわー!」

 泣きじゃくるカナの体を、ネモは優しく包み込んだ。 



 次の日、秋斗が登校すると、カナはすでに教室に来ていた。

「カナ・・・・・・」

「秋斗・・・・・・」

 本当は、秋斗と顔を合わせたくなかったカナだったが、学校を休む訳にもいかなかっ

たので仕方なく学校に来ていた。

「ご、ごめん!」

「え・・・・・・」

 カナを見るなり秋斗が頭をさげてきた。

「色々と・・・・・・その・・・・・・」

「秋斗・・・・・・」

 昨日は全然寝れなかったのか、目の下に熊をつくった秋斗の顔を見て、カナは自分の

事を真剣に考えてくれたのであろう事を察した。

「ちょっとでも・・・・・・秋斗の心の中にカナ、入れたかな・・・・・・?」

「え?」

 カナの小さな呟きは秋斗には聞こえなかった。

「・・・・・・秋斗のバーカ!」

「な、なんでバカなんだよ!」

「秋斗はバカだからバカなんだもん!」

「ば、バカバカ言うなよ!」

 そんな事を言い合って、今はこんな関係が続けばいいかな。と、カナは思った。

 暫らくすると、こう太がカナの所に来た。

「なんか知らねーけど・・・・・・お前はそうやって笑ってる方がいいよ・・・」

「へっ?」

「な、なんでもねーよ!」

「・・・・・・ありがとうね」

「・・・・・・ふんっ」

 

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