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学園際



「いよいよ明日か~」

「カナ、超楽しみ~!」

 秋斗の通う白龍学園の学園際が、いよいよ明日に迫った。

 超金持ち学校の学園際は、他のどの学校よりも盛大に開かれる。

 その学園際の費用は全て学園持ちで、皆やりたい事を決め、学校には屋台やら綺麗な

装飾が飾られていた。

 学校が終わり皆と別れた帰り道、秋斗とカナは明日の学園際の準備を済ませた学校を

思い出していた。

 秋斗達のクラスはメイド喫茶をする事になった。良子と翔の強い希望があり、皆説得

させられてだった。

 メイド喫茶をやるという事はチトセのメイド服が見られる。という事で、秋斗もメイ

ド喫茶をやる事に賛成した。

「ただいま」

「ただいま~」

「おかえりなさいませ!」

 家に帰ると優が出迎えてくれた。

 カナがお風呂に入り、秋斗が次に入りお風呂を出ると、優がご飯をテーブルに並べて

くれた。

「いよいよ明日、学園際ですね~。すっごい楽しみです!」

「カナのメイド姿、ちゃんと見に来てね~」

「はい!」

 明日の学園際は優が見にくる事になっていた。

 それどころか優だけでなく、この島以外の人も学園際に来れる様になっていて、この

学園際には毎年、沢山の人が集まってくる。

 それぐらい大きなイベントで、なんと1日中、朝から夜まで学園際が開かれる。まる

でお祭りの様な物だった。

「そういえば明日、達也が来てくれるんだっけ?」

「ああ、来るって言ってたな」

「わ~久しぶりに会える~!」

「だな」

「達也・・・・・・様・・・・・・ですか?」

「ああ」

 秋斗とカナの聞きなれない名前を聞いて、優が聞いた。そんな優に、カナが嬉しそう

に言った。

「達也は~カナと秋斗の幼馴染なんだよ~!」

「そうなんですか」

 カナの嬉しそうな顔に、優も顔をほころばせた。秋斗も腐れ縁の幼馴染を思い出して

嬉しい気持ちになった。

 そんな話しをしながら優の作ってくれた美味しいご飯を食べ終わり、秋斗が食器を片

付けようとした時、優が慌てて秋斗を止めた。

「秋斗様! いつもいつも言ってますが、片付けは私の仕事ですから!」

「あ、ああ・・・・・・」

 秋斗は優に片付けをするのを止められて、怒られた。秋斗はいつも優に言われていた

が、いつも自分で片付けようとしていた。

 それは、単に優に気を使っていたから。・・・・・・ではなく。

「どうして私にやらせてくれないんですか・・・・・・あ・・・・・・キャ――!」

「っと」

 お皿を片付けようとして、お皿を持ったまま足を滑らせた優の体を支えた。

 秋斗に抱き寄せられた優の顔が、何故か赤く染まった。

「だから俺がやるって」

「あ・・・・・・」

 少しボーっとしていた優をよそに、秋斗は優からお皿を取り上げて、台所に持ってい

った。

「そ、その先は私がやりますから、秋斗様はあっちに行って下さい!」

「へいへい」

 秋斗は優に台所から追い出されて、カナの居るリビングのソファーに腰を下ろした。

「ベティ~ベティ~」

 リビングでは、カナが通信販売のベティーちゃんのオープニングを口ずさんでいた。

 テレビでは、陽気な格好をした人気司会者のベティーが楽しそうに踊っていた。

『は~い皆さんコニャニャちは~!』

「コニャニャちは~」

『いよいよ明日は待ちに待った白龍学園の学園際ですね~! そこで今回ご紹介する商

品はこちらー! 最新機能が搭載されたこのカメラ!』

 そう言ってベティーちゃんが見せたのは、手のひらサイズの小さなカメラだった。

「わ~可愛い~!」 

「ちっさいなー」

「ん? 秋斗、何か言った?」

「お前に言ってねーよ!」

 カメラの小ささに驚いていると、カナに怒られた。

『さあ、こちらの最新型のカメラなんですが~実はなんと、どんなに動いていてもブレ

ないという優れものなんですよ~』

 ベティーちゃんがそう言って、実際に動かしながらカメラのシャッターを切り、撮影

した画像を見せた。

「スゴーぃ! 全然ブレてな~い!」

「本当だ! 凄いな!」

 映し出された映像は、動かしながら撮影していたにも関わらず、綺麗に写っていた。

『こちらのお値段は~・・・・・・なんと! 特別価格のジャスト一万円になります』

「い、一万円か・・・・・・」

「カナ、買う!」

 中々の値段はしたが、性能の事からいえば、格安の値段といえた。それに、学園から

支給された金額を使えば、全然買えない値段ではなかった。あまり無駄遣いをしない性

格の秋斗だったが、学園際でチトセの姿を残すと考えれば買わない手はなかった。

『さあ! これで明日からの体育祭の思い出を綺麗に残しましょう! こちらは60個

かぎりの商品となります! さぁ~皆さん急いでこちらにお電話を!』

「電話しなきゃ~!」

「お、俺のも予約してくれ」

「秋斗も? 秋斗が物買うなんて珍しいね~。わかったー!」

 珍しく商品に食いつく秋斗に、カナは驚いたが、すぐに携帯を出して、テレビに映し

出された電話番号に電話をかけた。

「そんなに急がなくても大丈夫だろ・・・・・・」

 慌てて電話をかけるカナを見て、秋斗はそんな事を呟いたが、カナの発した言葉に驚

いた。

「うえ~・・・・・・秋斗~・・・・・・売り切れだって~・・・・・・」

「なっ! すぐ電話したのにか!?」

「まぁ、ベティーちゃんの通販はすぐ売り切れになるって有名だしね~」

「そんなに人気なのか・・・・・・」

「まぁ、今日は運がなかったね~。しょうがないよ~」

「運の問題なのか・・・・・・」

 ベティーちゃんの通販番組の人気さに驚きながらも、高性能のカメラでチトセの姿を

映せなくなり、秋斗は肩を落とした。


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