宇宙人は存在した!
ある日の休日。秋斗とカナは、買い物をしにショッピングセンターに来ていた。
「カナ、それは手続きして、家に宅配して貰えよ?」
「えー! 帰ってからすぐ食べたかったのに~!」
「俺は持たないぞ?」
「手続きしてこよ~」
「早っ!」
ショッピングセンターで大量の買い物をしていたカナは、明らかに持って帰れない量
の買い物をしていた。
「あれ、全部俺に持たせようとしてたのか・・・・・・」
そんな事を思いながらも、買い物を終わらせた秋斗達はショッピングセンターを出た。
「カナ、秋葉行きたいー!」
「秋葉?」
「うん! プリキュオの新しい洋服が出たから、欲しいの~」
「秋葉ね~・・・・・・」
秋葉は、この街で一番アニメのグッズを売っている場所だ。カナの提案で、秋斗達は
秋葉に行く事にした。
「キャー! 可愛いー!」
「は、早くしろよ」
「ね~秋斗、コレとコレ、どっちがいいと思う~?」
「・・・・・・どっちでもいいよ」
「なにそれ! 秋斗つまんないー!」
「・・・・・・」
カナは可愛らしい洋服を秋斗に見せてきたが、秋斗は早くお店を出たかった。お店に
売られているのは、全部女の子の洋服ばかりで、明らかに秋斗が居るのは場違いだった。
外で待ってると言う秋斗を、カナが強引に一緒に中に入れた。
店員の女の子が、秋斗をチラチラと見てきていた。
そんな羞恥プレイの様な物を受けて、2時間。秋斗はようやくその視線から開放された。
「女の買い物は長いんだよなー」
「だって迷っちゃうんだも~ん」
全然悪びれる様子もなく、カナはそう言った。辺りも暗くなってきていたので、秋斗達
は帰る事にした。駅に向かっていると、なにやら大きな人だかりがあった。
「なんだぁ?」
「あ! あれプリキュオのイベントだー!? ちょっと行こーよ秋斗!」
そう言ってカナが人だかりの方に行くと、そこでは大人気アニメ、プリキュオの声優
の握手会をしていた。
「秋斗! カナも握手したい~!」
「マジかよ・・・・・・」
あまり列に並ぶ事が好きじゃなかった秋斗には、地獄の様な列だった。目を輝かせるカ
ナに渋々折れて、カナと秋斗は列に並んだ。列に並ぶ事2時間。秋斗達にようやく握手が
出来る順番が回ってきた。
「モモちゃん、いつも応援してま――――えっ!? ネモちゃん!」
「あっ! カナちゃん!」
「えっ? ネモ・・・・・・?」
沢山のファンと握手をする、プリキュオの声優役のモモちゃんを見て、秋斗とカナは驚
いた。そこには、クラスメイトのネモが居た。
「モモちゃんって、ネモちゃんが声優してたんだー! 凄ーい!」
「ありゃりゃ、バレちゃったのね~。皆には内緒なのね~」
「えっ? 内緒なの~?」
「そうなのね~。事務所てきにNGなのね~」
「へ~そうなんだ・・・・・・うん! わかった! 内緒にする~」
事務所てきにNG・・・・・・?
ネモは少し変わった奴だった。
「んじゃ、ネモちゃん、これからも頑張ってねー!」
「ありがとなのね~」
そんなネモにエールを送って、秋斗達は家に帰る為、電車に乗った。
「でもビックリしちゃった! ネモちゃんがモモちゃんの声優さんだったなんて~!」
「本当、ビックリだよな」
電車を降りて、秋斗達はそんな話しをしながら家に向かって歩いた。
「あっ! あれ、ネモちゃんじゃない~!?」
「えっ? 本当だ・・・・・・何してんだ? こんな時間に・・・・・・」
時間はすでに9時を過ぎていて、辺りは真っ暗になっていた。それなのにネモは、公
園の地べたに一人で座っていた。
「ネモちゃん!」
「あ・・・・・・カナに秋斗・・・・・・またまた見つかっちゃったのね~」
秋斗とカナがネモに声を掛けると、ネモはそんな事を言った。秋斗は当然と言える質問
をした。
「こんな時間にこんな所で何してんだよ?」
ネモの座る周りには、今にも宇宙人を呼び出そうとでもしてるかの様な魔方陣らしき
ものが描かれていた。
「もしかして、宇宙人とコンタクトでも取ってるのかよ?」
「も~秋斗、何言ってるの~?」
「うぬぬ、秋斗、凄いのね~。正解なのね~」
「「・・・・・・」」
冗談で言った秋斗の言葉に、ネモは一瞬、驚きながらも真剣な顔をして言った。
「見つかっては仕方ないのね~。二人共、誰にも言わないって約束するのね~?」
「ネモちゃんって、宇宙人とお話できるの~?」
「お話が出来るというか、ネモは宇宙人なのね~」
「えっ! そうだったの――!?」
「・・・・・・」
驚くカナとは反対に、秋斗は信用できなかった。
「じゃあさ、なにか『宇宙語』話してみてよ」
「あ、カナも聞いてみたい~!」
「宇宙語? いいけど、二人には意味が分からないと思うのね~」
「いいよいいよ」
「そうなのね~? じゃあ、言うのね~」
そう言って、ネモはいつものおっとりした表情をキリッと引き締めて言った。
「うんこ!」
唖然とする秋斗達とは反対に、ネモの表情は真剣そのものだった。
「な、なんだよ! うんこって!」
「ん? 宇宙語で好きって意味なの~」
「・・・・・・じゃ、じゃあ他の言葉は?」
「他の言葉なの~?」
ネモは少し考えて、キリッと表情を変えて言った。
「しっ―――むがむが! 何するの~! 秋斗~!」
秋斗は急いでネモの口を塞いだ。可愛い年頃の女の子から、うん○とか、しっ○とか
聞きたくなかった。
「わかったわかった、信じるよ。でも、何で誰にも言っちゃいけないんだよ」
「地球人に宇宙人の事がバレたら、大変な事になるからなのね~」
「大変な事~?」
「そうなのね~。地球人が宇宙人の事を知ったら、絶対沢山の人間が宇宙人の星に行こう
とするのね~。そしたら、ただでさえ地球の温暖化とかが騒がれてるから、きっと宇宙人
の星も、悪くなっちゃうって思ってる宇宙人が沢山いるのね~」
「「・・・・・・」」
秋斗達はなにも言えなかった。ネモの言う事は事実だったから。
「だから、ネモが内緒で地球の調査に来てるのね~。地球人の星が綺麗になったら、宇宙
人の皆もきっと皆と交流を持ってくれると思うのね~」
「そうだったのか・・・・・・」
「カナ、誰にも言わないよ――!」
「ああ、俺も言わない!」
「二人共、助かるのね~! 日本人はいい人なのね~! だから日本は大好きなのね~!
何がいいと言えば、やっぱり一番はアニメなのね~! 日本のアニメは世界の中でも最高
にうんこなのね~!」
「うんこは止めろよ・・・・・・」
「はっ! ついつい興奮して地元の言葉が出ちゃったのね~。スマソ、スマソ、なのね~」
「スマソって・・・・・・」
そんな事を言いながら、秋斗達は誰にも言わないという約束をして、ネモと別れた。