4th period
新キャラ登場。
キーパーソンになるかもしれません。
さあ、前回は話が全然進まなかったからなー。今回はテキパキ進めていくぜ。
あれから、更に力をだしてエルンと、雷によるスピードアップを得たオレの二人は、案外目的地のワイナールには早く着くことができた。
それで、今はここを率いているいかにも位が高そうな黒い甲冑を身につけているベルケって人に戦況を聞いたところ。
ほら、こんな感じで進めれるからさー、これからもオレの語りで勘弁してくれよ?
話を聞いたところ、なんでも今まではいなかった敵の新戦力の金髪が暴れているらしい。なににしてもソイツの情報がないから後手、後手になっていて押されているようだった。
暴れていると言っても武力や能力をおおっぴらに使うんじゃないらしい。それなら、対処の仕様が幾らでもあるとかなんとか。
つまり、その金髪は戦略家のようだ。巧妙に罠を仕掛けるらしく、対処が難しいらしい。
「なるほど、平和維持を目的にしてるだけあるな。武力を行使して、叩き潰すんじゃなくて緻密に確実に侵略してくるわけか」
それは確かに厄介だ。ただ力が強いやつならそれ以上に力があるやつを向かわせればいいだけだから、楽に対処できるからな。
最もソイツが本当の意味で『力』が一番強いならどうしようもない脅威になるだろうけどさ。
腕力とかそういう意味での力が強いだったら、相手にもならないだろう。
そーゆーことは色々本を読んできたから、なんとなくわかる。
そして、頭が切れ、傲慢でなく、情報が無いに等しいなんてやつはかなりの脅威になるだろうってこともわかる。
「はい、そういう訳でありますから今回は援軍を要望したのですが・・・・・・貴方様は?」
「ん、ああ。オレは今日付けでこの・・・(あれ?なんて言うんだ?)ぐ、軍団に参加することになった者だ」
「そうそう、アルって言うんだよー」
「なるほど、承知しました。エルン様もよくお越しくださいました。貴方様がいれば金髪の男など脅威ではありません」
ベルケはそう言いながら片膝を地面につけた。ん?コイツって偉いのか?
そんな風には見えないけどなー。アホだし、アホだし、跳ぶし。まあ強いって言われたらなんとなくわかるような気はするけれど。
人外の運動神経持ってるしな。
「んー?今回あたしは戦わないよー?」
「は?」
青ざめた顔をしながら言う。確かにそりゃそーだ、援軍を呼んだのに戦わないとか言われたら訳わからんわな。
同情するぜ、黒き騎士!でも仕方ないんだ!コイツはアホなんだ!
だが黒き騎士!そんな顔をするな!折角良いルックスしてんのに勿体ないぜ?
でも、だとすると一体全体どうするんだ?現地の戦力じゃ全く歯が立たないって言ったような口ぶりだったし、折角来た意味がねえじゃねえか。
戦力アップは望めない、となると敗戦は濃厚だよなあ。
「大丈夫大丈夫。今回はちゃんとあたしの他につよーい味方を連れてきたから」
「は・・・はあ。そうですか。だったら良いんですが・・・・・・」
「ほら、もうここに居るじゃん」
あれ、意外とエルンって頭が回るのか?いつの間にそんなやつを連れてきたんだ?見直さなきゃな。ちょっぴりだけ。
「で?何処にいんの?」
「へ?」
オレが尋ねると如何にも不思議そうな顔を浮かべた。
いやいや、そんな顔されてもオレらはまったくわかってねえんだから。それともなにか?気付いてて当然ってことか?
「ああ、そうですか」
と言い、さっきまで青ずんだ顔をしていた男の顔はいつの間にか晴天となって、頬を紅潮させていた。なんでお前そんな期待してるよーな目でこっち見てんだよ。さっき良いルックスっつったけどやっぱなしだ。なしなし。
あーそうか、お前はアホじゃねえんだな。オレなんだな、アホは。なんでお前わかってねえの?ってことを目で訴えかけてきてるってわけか。
わかってねえのはオレだけなんだな。
・・・・・・連れてきた?
もう既にここにいる?
辺りをもう一度確認する。オレは目は悪くない。寧ろ良い方だと思う。しかし、どれほど良く見回してもここにいるのは、三人だけだ。
・・・・・・・・・・・・。
「まさか――――」
彼女――エルンは此方を指で指しながら、オレとは対照的に、顔色ひとつ変えず、口調を何一つ変えずに、言った。
「アンタ」
「オレかあああああああ」
・・・オホン。では気を取り直して再スタートだ。
最も、皆普通なんだろうけど。取り直す気もないんだろうけど。
「オレがそんなやつに勝てるわけねーだろォオ!」
即席のオレだぜ?ついさっき『力』があるということを知って、やっと初めて使ったばかりのオレだぜ?
そんなの無理だろ?
「いいえ、いきなり彼女と行動を共にできる辺りから見ましても、貴方様は通常ではありません。相当な実力を持ってして、この軍に入られたのでしょう」
「うんうん、勝てるって」
コイツらが促してくれるお陰で段々ポジティブになってきた!勝てるような気がしてきた!――ってなるか!!
ふざけんな!揃いも揃って何言ってやがる。
やっぱアホだったよ、お前!
ついでになに信じてんだよ、アンタ。
まあいい、本当に窮地になったらなんだかんだ言って助けてくれんだろ?仲間ってそういうもんだよな?主人公は死なねえよな?
そうだ。オレは主人公。死んでも死なねえようにできてんだ。窮地になった瞬間、主人公補正がかかって、急に強くなって、今までの攻撃の数倍の威力を手に入れて、敵――その金髪野郎がオレに叩き込んだ攻撃数の一〇分の一にも満たない数の攻撃喰らわせて、最終的に勝つようになってんだ。最近の漫画やライトノベルなんかのバトルが絡む主人公はそう言ったものばっかりだよなぁ!
ワンパターンでつまんねえ、なんて思ってたけど、なんだよ、自分が主人公になってみりゃあ使い勝手最高じゃねえか。
だから最近こういった類のもん増えてんだな。今回ばっかりはこのシナリオに乗っかるとするぜ。幸い状況は酷似してやがるからな。
一〇〇%勝ち目がない戦いって。それはもう勝つパターンの定石だろうがあ!
なんだよ、恐れることはねえじゃねえか。まず、こんな冒頭部分で人が死ぬなんてありえねえじゃねえか。ましてや、主人公だぜ?
案外、ここに居るベルケってやつ程度の『その他』ならあっさり死んじまうかも知んねーけどな!
極論を言っちまえば、オレ意外、『主人公』意外は皆、そう、リヒトも、エルンも、ベルケも、金髪も、政府の連中も、昔の同級生も、オレたち側の人間も、オレが知っている連中すべて、それに顔も名も知らない連中、まだ登場していないキャラクター、昔のオレだって!
永遠に『主人公』にはなれない。『モブキャラ』、もとい『その他大勢』なんだ。
『世界はオレを中心に回ってる』
『オレなしには世界は成立しねえ』
「――――ふう」
少し色々と考えすぎたな。途中からかなりエスカレートしたような気もするが・・・。
しかし、これでいい。昔のオレような他人依存・協力型の人間は永遠に『今のオレ《主人公》』にはなれねえ。
自己中心の、自分のことしか考えてねえようなやつが英雄になれるんだ。他人を救ったなんてのはあくまで、ついでだ。
本当に必要な『強さ』は意志の強さだ。
筋力が強い、頭が切れる、強い能力がある、精神力が人並み外れている、泥臭く強い、美しく優雅に舞うように戦う、こんなのは必要ねえ。
たとえ筋肉が一切なくても、一般知識のペーパーテストで〇点しか取れなくても、他の人にはできないようなスキルがなにもなくても、打たれ弱くても、勝負をすぐ諦めるようなやつでも、地面に足つけてでしか動けなくても、
「何かを達成しようという絶対に揺るがない強い意志を持ったやつが一番、強えんだ!」
「ア、アル様!?」
「ど、どうしたの?黙りこくったと思ったら今度は急に叫びだして・・・」
つい声にだしてしまった。が、これはこれで良い。自分を内に潜めてるやつより、自分のすべてを晒け出してるやつのほうが格好良い。それに、そっちのほうがよっぽど『主人公』だ。
「え?あ、あ――――ごめん」
我を通す為には時に人に懇願し頭をさげることや、感謝し頭をさげる必要もあるだろう。
頭をさげてばかり、媚びてばかりの者は言わずもがな、論外だが。
これらをせずに自分だけで全てやってしまおうなんていうやつは、愚か者か、自身を見誤っている者か、『その他』か、人間じゃねえ、化物だ。
人はやっぱり人として生まれたからには人として死にてえよなあ。だからオレは他人に頭をさげることを厭わねえ。こんなこと恥ずかしがってやらねえ人間は死ね。
この世の中はそんなもんだ。
「い、いえ私は気にしていませんが」
「んー、あたしもー。急に叫びたくなることなんかよくあることだよねー」
「・・・・・・そ、そうですね。エルン様」
「でしょー!」
・・・絶対に無いな。明らかな沈黙に気付かないとは・・・。致命的なアホだ。逆に才能か?
「まあ、それはともかく行こうよ。金髪野郎なんざ軽く叩き潰してやる」
「あ、うん。そーだねー、そろそろ行こうかー。こっちだっけ?」
「あ・・・はい、此方ですが。くれぐれも迂闊には敵の中に飛び入ってはいけませんよ。一体どんな罠が張り巡らされているか・・・・・・。お気をつけてください」
「うん?おっけー任せて!んじゃ、一気に敵陣に飛び込むとしようか、アル!」
言ったそばから!?いや、まあオレも別に注意力を最大限まで高めて敵陣には突っ込む気はなかったけどさ・・・。
今、ここでそんなこと言っちゃう?
「エ、エルン様!迂闊には飛び入ってはいけませんと!アル様からも申してください!」
うわー、大変だなー。ってゆーか嫌だな。あんな上司がいたら。同情するよ、黒き騎士くん。
「・・・・・・まあ心配はいらねえよ!行ってくる!」
「アル様まで!それでは私が必要なかったキャラになってしまいます!貴方様は私があっさりと死ぬとか思っているんでしょう?きっとそれは合っています。きっと私はあっさりと難なく命を落とすでしょう。それまで一分一秒存在意義を見出したいのです!」
――――っ。なんだ?心の中が読めるのか?完璧にあってんじゃねえか。実は終盤で鍵を握るキーパーソン・・・・・・いや、もしかしたら今からのバトルで活躍するかもしんねーな。
もしかしたらこんなことも当たるかも・・・。なーんて。
「ははは。まあ存在意義は別のところで見出してくれ。案外、死ぬような経験をすればすげーわかるかもよ?オレたちに心配はいらねえよ。ほら、オレたちってアホだろ?アホはけっこーしぶとく生き残るもんなんだぜ」
「・・・・・・。」
「ははっ。認めてくれたみてーだな。それに生憎オレたちのペアは『主人公』と『ヒロイン』なんでね!死んでも死なねえさ」
こうしてオレたちは戦地へ向かう。
なんだか心が少し晴れたような気がしていたこのときは、知るよしもなかった。『主人公』という存在がいかに無力であるかということを。
そしてオレは『主人公』なんかじゃない、ただの通常で、自分の理想を他人に押しつけてるだけの通常以下だということを・・・・・・。
ヤツに、金髪野郎に痛烈に思い知らされるなんてこと。
もう次回から次の話、ここまで進むっていうのやめます。
ここまで全部裏切ってるんで。
書きたいことが多くて計算して書けないようです。
これからもこんな感じで続きます、どうぞよろしく。
以上、4th periodでした。
話数とperiodが一致していない・・・・・・。