8*国家指定除霊官の不適切発言に関する顛末報告および始末書の提出について
特務割内部共有文書
文書番号: 特務割 第2024-0618号
作成日: 2024年6月18日
発行元: 防衛省特務割事務局
標題: 国家指定除霊官の不適切発言に関する顛末報告および始末書の提出について
1. 経緯概要
2024年6月15日、埼玉県内における特定怪異連鎖事案の共同除霊作戦において、国家指定除霊官・西園玲(以下、西園除霊官)が、共に前線に立っていた逆枝八千代氏に対し、戦術的協調を著しく阻害する不適切な言動を行った。
本件に関し、逆枝家側から特務割事務局に対して猛烈な抗議申し入れがあり、事態を重く見た事務局は西園除霊官に対して厳重注意を行い、本人の直筆署名入り始末書を徴収した。本文書はその顛末および始末書の記録である。
2. 当該発言の詳細(現場通信記録および前線要員の証言より)
作戦第3フェーズにおいて、対象の出力上昇に伴い前線が一時膠着。逆枝氏および式神「巴婁」の防衛ラインが後退した際、西園除霊官が単独で前線を押し戻しつつ、逆枝氏に対して以下の通り発言した。
「なぜ後衛を頼んだのに前へ出るのですか?わざわざ不向きなことをする必要がありません。後衛だって立派な除霊ではないですか」
「そもそも除霊にこだわる必要性はありません。逆枝さんは若くてお綺麗ですし、働かずとも専業主婦として生きていくことだってできるでしょう」
3. 影響および問題点
協力関係の破綻: 逆枝氏は伝統的な霊能家系の矜持を著しく傷つけられたとして激昂。その後の戦闘継続をボイコットし、式神と共に戦線を離脱した。これにより広域防衛網に一時的な空白が生じ、後続の山吹家門弟への負担が急増した。
【添付:始末書】
令和6年6月17日
国家指定除霊官 西園 玲 (印)
私は、令和6年6月15日に埼玉県内で実施された特定怪異連鎖事案の共同除霊作戦において、共同出動中であった民間協力者・逆枝八千代氏に対し、同氏の能力水準および今後のキャリア選択に関する極めて不適切な発言(戦線離脱および専業主婦への転身を促す言動)を行った。
本発言は、現場における戦力評価および効率性を優先するあまり、国家指定除霊官としての公的な立場、ならびに共同作戦を円滑に遂行するための協調性を著しく欠いたものであった。また、民間協力者側の心理的動揺や政治的立場に対する配慮を欠いており、結果として前線の統制を乱し、作戦行動の遅延および逆枝家との信頼関係に重大な支障をきたした事実について、厳粛に受け止め、深く反省するものである。
今後は、自らの発言が組織に与える影響力を厳に自覚し、官職にある者として適切な言動に努め、二度と同様の事態を起こさないことをここに誓う。
以上
4. 事務局付記
西園除霊官は始末書の提出および形式的な謝罪文の作成には応じたものの、事務局による面談の際、その本質的な問題点を理解していたとは言い難い。
本人への聴取を行なった事務官によれば、同除霊官は「専業主婦」等の言動自体は不適切であったと認めているものの、その根底にある「共同で業務にあたる者を弱者と断定し、一方的に戦線から排除・配置換する」という独断的評価については、他者の尊厳を著しく傷つける行為であるという自覚が著しく欠如している。
「他者の尊厳を尊重すべきである」という一般的な組織論・倫理観には口頭で同意を示すものの、現場において実際にそのような配慮を実践できるかについては、今後の改善の余地は皆無であると評価せざるを得ない。
もちろん彼女の持つ圧倒的なサイキック出力は前線の維持に不可欠である他、第3医科学研究所開発室における精神感応出力拡張実験等において、彼女の、自身を絶対的な強者と定義する強固な認知構造は、精神的汚染や実験からの撤退申請を防ぐ極めて重要なファクターとして機能している。
一方、他者の心理的摩擦を完全に無視したスタンドプレーは、旧来の霊能家系との政治的・戦術的協調を決定的に破壊するリスクを孕んでいる。したがって、今後も厳重な監視を継続するとともに、同除霊官に対する、霊能者との相互理解及び他者尊重の技術を身につけることを目的としたプログラムの実施を提言する。




