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もし、社畜が異世界の第三王子に転生したら【連載版】  作者: りな


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私はクロウフォード家当主からの手紙を受け取った。封蝋は丁寧に押され、紙質も上等だ。形だけの礼ではないと、触れた瞬間にわかる。

封を切り、読み進める。

そこには、まず娘の無礼に対する深い詫びが記されていた。だが、それ以上に多くを占めていたのは――感謝だった。



第三王子殿下

この度は、我が娘の拙い振る舞いに対し、貴重なお時間を割き、数々のご教示を賜りましたこと、クロウフォード家当主として、深く御礼申し上げます。

頂戴したご助言は、単なる助言に留まらず、

我が領地の停滞を打破するための、明確な道筋でございました。

早々に、街道の仮補修に着手し、鍛冶職人の呼び戻しと、遊水地の候補地選定を開始します。

結果が出るまでには時間を要するでしょう。

しかしながら、我々はもはや迷っておりません。示していただいた順序を、一つずつ実行に移して参ります。

未熟な娘ではございますが、この経験は必ずや、将来の糧となるはずです。

今後とも、ご指導ご鞭撻を賜れましたら幸いに存じます。

クロウフォード伯爵


私は、静かにうなずいた。

文面に、無理がない。見栄も、過剰な飾りもない。ただ、実行している者の言葉が並んでいる。

そして、封筒の中には、もう一通、手紙が入っていた。筆跡が、少しだけ荒い。リディアからだった。

私は、わずかに眉を寄せた。

……厳しく、叱られたのだろうか。



第三王子殿下

先日は、大変失礼な態度をお見せしましたこと、改めてお詫び申し上げます。

私は「考えたつもり」になっておりました。

ですが、自分がどれほど足りていなかったのか、思い知らされました。

今は、父と共に、示していただいた順序を一つずつ形にしています。

紙の上では見えなかったものが、現場でははっきりと見えます。人が動き、金が巡り、領地が息をし始める様子を、見ていこうと思います。

教えてくださったことに、心から感謝しております。

いつか胸を張って、もう一度資料をお見せできるよう、努めます。

リディア・クロウフォード


読み終え、私はわずかに微笑んだ。




第三王子殿下より


クロウフォード伯

貴書、確かに受け取った。事情は理解した。

領地の現状を直視し、即座に動きに移されること、見事である。

急な方針転換は、貴殿にも少なからぬ負担であったはずだ。まずは身体を労われよ。

結果は時を要するだろう。だが、正しい順序で進んでいる限り、憂うことはない。

また、令嬢の件については、すでに意に留めていない。あの行動は、貴殿の領地が領民に真摯に向き合っている証と受け取っている。

書面からも、そして動きからも、貴殿の統治の確かさが伝わった。

そのような領主のもとであれば、領地は必ず立て直る。

今後、必要とあらば遠慮なく申し出よ。巡りを戻そうとする領地に、国は惜しみなく手を貸す。

第三王子



リディア・クロウフォード殿

先の件は、すでに意に留めていない。

あれは私に向けられたものではなく、領民を思う真剣さゆえの言葉だと理解している。

自ら考え、動き、責任を負おうとした姿勢は見事だった。

領地を思う者の行いに、咎はない。示された順序を、一つずつ形にしていけばよい。

現場に立ち続ければ、心も体も思う以上に疲れる。無理はするな。

結果は、後から必ずついてくる。

そして、覚えておけ。頼ることを厭う必要はない。それは弱さではなく、国の将来に繋がる選択だ。

励むように。



手紙を重ね、端を揃える。

よし。今日も定時だ。


……文章というのは、不思議なものだ。

考えを書けば、必ずその人間が出る。

癖も、迷いも、性格も。

だからこそ、読む価値がある。

そして――書くというのは、存外に難しい。


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― 新着の感想 ―
>……文章というのは、不思議なものだ。 考えを書けば、必ずその人間が出る。 癖も、迷いも、性格も。 だからこそ、読む価値がある。 そして――書くというのは、存外に難しい。 失礼ながら↑↑↑作者様の…
第三王子殿下のお人柄と彼が考える王家…じゃなくて《国》としての《役割と姿勢》が温かく眩しい回でした(*^^*)♪ ……一言だけ言おう! ー推せる!!!!!ー
そして――書くというのは、存外に難しい。 数字を相手にすると定時終了仕事マン。 文章を相手にすると殿下の為人もこぼれてくる。 相手を慮って一生懸命お手紙書いたんだよね。 やさしい。エラい。かわいい…
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