第3話、へー、お母さんもお父さんと入ってるんだ。じゃあお兄ちゃんも私と入らないとね?
「それじゃ、一緒にお風呂入ろっか? お兄ちゃん♡」
夜、家でソファーに座ってスマホを見ている俺に、妹が後ろから手をまわして抱き着いてきた。
父、母、俺、妹の家族4人で食事を終え、それぞれリビングでスマホを見たり、新聞を読んだり、片づけをしている最中。妹の美雪がさも当然かのように俺を風呂に誘ってきたのだ。
その突如、リビングの空気が凍ったような気がした。
父の新聞をめくる手が止まり、母の食器を洗う音も止まり、ただ水が流れ落ちる音だけが響いた。
当然だろう、親がいる中で高校生にもなった兄妹が一緒に風呂に入ろうと言うのだ。
常識的に考えて何かがおかしい。
妹に直接声をかけられた本人である俺が、聞き流すこともできず、どう返そうかと考えることもままならず、ただ思考停止していると、
「あら、いいじゃないの? 仲が良くていいわねえ」
と、母が代わりに応えた。
「えっ!?」
(え、何言ってるの? 母さん。もしかして美雪が言ったこと冗談だと思ってる?)
母の発言でさらに混乱する俺。
「私も若いころは、パパとよく一緒にお風呂に入ったものよ。まあ、今でもたまに一緒に入ってるのだけれどね」
(あ~、なんか聞きたくないこと聞いちゃったわ。そういうの子供に言わないでほしいわ)
「へー、お母さんもお父さんと入ってるんだ。じゃあお兄ちゃんも私と入らないとね?」
と、俺の腕を引っ張りながら言う妹。
(どういう理論でそうなるんだ?)
「いや、おかしいだろ?? 親父、聞いてるんだろ? 止めてくれよ」
俺が知らん顔で新聞を読んでいる親父に助け舟を求めると、
「何をいまさら恥ずかしがっているんだ? 兄妹なんだから気にする必要ないだろう」
と、信じられない答えが返ってきた。
「あがっ!?!?」
(冗談だろ? 恥ずかしいとかそういう問題なのかこれは???)
「どうしちまったんだよ。親父!?」
「どうって、小学生の頃は一緒に入ってたじゃないか? そうだよなあ、母さん」
「ええ、そうだったわよ。毎日仲良く入っていたじゃない? 逆にどうして入らなくなっちゃったのかしら? 二人が仲が悪くなったのかと思って心配したのよ」
まるで俺がおかしいみたいなことを言い出す両親。
(なんだこれ? 二人とも美雪に洗脳でもされてんのか? どうかしてるよこの家族)
「お父さんとお母さんもこう言ってるんだし、やせ我慢せずに一緒に入ろうよ。お兄ちゃん♡」
「いや我慢とかしてなかったから、別に」
「お風呂の中で、ぎゅって抱きしめあって、心を重ねあったら、きっとリラックスできるよ♡」
「できねえよ!!!」
(てか、親がいる前でよくそんな恥ずかしいこと言えるよなあ)
「いいなあ、父さんも一緒に入ろっかなあ~~」
「ちょっと、あなたぁ~? 年頃の娘と一緒にお風呂に入るとか、何考えてるのかしら(怒)」
(なんでそこは急に常識的になるの???)
美雪の発言に対して、若干ニヤけた顔になった親父にドスを利かせる母。
二人のやり取りは気にせずにマイペースな美雪は、
「それじゃ、行こ! お兄ちゃん♡」
と言って、俺の腕にしがみついて離れない。
「だああああああああああ!!!!!! もうどうにでもなれ!!!!!!」
俺はすべてを諦めた。
~つづく、かな???~
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