サイドストーリー1『日常に飛び込んで来た手紙』
この物語は本編の裏話程度です。
多分読んだ方が本編を理解しやすいと思うので、読むことをオススメします。
「クリス〜。暇だ〜」
あまりの退屈さに耐えられなくなった俺は、一番信頼している側近の名を呼んだ。
「どうしましたか、レン様」
流石はクリスだ。俺が呼んだだけですぐに来てくれる。実に頼もしい。
「クリス、単刀直入に言おう」
「はい」
「……」
「……」
「……退屈だ」
「知りませんよそんなの」
そう言って立ち去ろうとするソイツの袖を掴み、引き止めた。
「だってさぁ……最近は帝国が仕掛けてくる勇者が極端に減ったじゃん」
「そりゃそうですよ。シンテオはともかく、大国であるマテリアスとも同盟を結んだじゃないですか。下手に手も出せないでしょう。あと、帝国が直接仕掛けて来てる訳ではないのですが」
「でもさ〜、弱いとはいえ少しは退屈凌ぎになってはいたからさ」
「はぁ……貴方、ご自分がだのような身分か分かっているのですか?」
あぁ、勿論理解しているさ。俺の名前はレン。この国、アマタルの魔王だ。まぁ、魔王といってもただの肩書きに過ぎない。なったからといって、特段利益がある訳でもない。それでも、さぞかし影響力があるのは事実らしいけどな。
「さりゃあ勿論。じゃあなに?それとも、クリスが遊んでくれるの?」
「私は仕事がありますので。リアンに遊んでもらっては?」
「まるで私には仕事がないかのように言いますね。ですがレン様!レン様の申し付けならばいつでもお相手いたしますよ♡」
「厭、それはいい」
「ガーン、何でですかぁー」
このメイド服を着た側近もまた、俺の頼れる側近の一人、リアンだ。俺への忠誠心は誰よりも堅いが、どこかちょっと抜けている。所謂、残念美人だ。
「だって相手にならないじゃん」
「な、心外ですね。これでもレン様に近づくだめ、毎日腕を磨いているのですよ!」
「まあ、それが原因で居眠りをして、仕事に支障をきたしているようじゃ意味ないですけど」
「それに先ず目指すは、俺じゃなくてクリスでしょうよ。その差は圧倒的だろ?」
「ぐぬぬ……」
……とまぁ、こんな感じの会話が日常的なんだけど、どうにも世間では『魔王=恐ろしい』みたいな固定概念が貼られててさ。もっとみんなカジュアルでいいのに。それこそ、クリスとかリアンみたいに……
「あ、そう言えばレン様。ギルドマスターから手紙が届いておりましたよ」
「ギルマスから??」
そう言って俺は封筒を受け取り、中の手紙を読み始めた。
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拝啓
魔王レン様
貴方様はあまり堅苦しい挨拶を好まないでしょう。なのでもう本題に移ります。
本日の昼過ぎ、七つになる少年と若いメイドがギルドへの入会手続きを済ませに参りました。そしてそ
の少年は名を“エリス・リーゼル”を名のっております。
もし間違いのなければ、これは彼の息子様であります。
その為、即急にレン様にご報告をさせてもらった所存であります。
この件に関して、貴方様がたがどの様な意向を示そうと、我がギルドはそれに従う方針であります。で
すので、何かあり次第、ご連絡下さい。
ギルドマスター ロン・ウェルバート
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まったく、何が『堅苦しい挨拶は好まないでしょう』だ。十分本文も堅苦しいだろ。まぁそれはさて置き、これは───
「レン様?どんな内容だったのですか?」
「ああ、リアン。そしてクリス。これは朗報だ。アイツの子がギルド入りしたらしい」
「レン様、アイツと言いますと?」
「何だよクリス。忘れたのか?しかし、これは面白くなったぞ。なんてったってうちの魔王帝国闘争軍の元壱番隊軍長の息子だぜ」
「『あ〜、彼ですか』」
そう、魔王の幹部で十本指に入るほどの逸材、恐らく“Sランク”ほどの実力はあった、
「あの『宣戦のクロム・リーゼル』の息子なんだからな!!」
どうも、亜ヒ酸アルデヒドです。←(久しぶりにまともな挨拶)
という訳で、今回は魔王レン視点のサイドストーリーを書いてみました。
魔王レン、意外と軽いですね〜(多分エリスくんの想像してる魔王のイメージ図と大幅に違います)
にしてもなんでこんないきなりサイドストーリーなんて書いたかですよね。完全に書きたかったからです。気分です。気分。いつも通りの。
これは完全に裏話になってしまうのですが、元々はレンを主人公にした小説を書きたかったんですよね。ですがあまりに自己満で理解不能。おまけに自分で考えた設定まで忘れてしまう始末だったので辞めました。(良かった)
なのでレン、クリス、リアンに関してはかなり設定がしっかりとあります。また、他の一部キャラも同様に、設定が細かい者もいます。完全に無駄にならなくて良かった。
ではでは、本日はこの辺で。また気が向いたらサイドストーリーを載せますね!それじゃ!!