サイドストーリー2 『今も、昔も』
前に「サイドストーリーは読まなくても本編に支障ありません」と言ったな。あれは嘘だ。
バリバリ絡んでくるぞ。だから読め。
〜同日 午前8時〜
今日も紅茶を飲みながら新聞を読む。私の朝のルーティーンです。ただいつもと違うのは、この新聞が、東の国々、主に『東方帝国群』の国で出回っている『帝国新聞』であるということ。
「……『東南の勇者、魔王討つべく神聖へ』ですか」
『神聖』とはこの地、アマタルのことだ。東方ではそう呼んでいるらしい。正直こちらではあまり見掛けない新聞だから、新鮮で面白い。しかし……
「勇者が来るのは久しぶりですね。確か東南の勇者は最もSランクに近いとも言われていたはずです。流石の魔王様でも……」
魔王様が負けようが、関係はない。そうよ、関係ない。今まで通りの……
「…………今まで通り…?」
……本当にそうなのか?また、あの頃に戻ってしまうのでは?あの昔の生活に……もしかしたら、エリス様も。
「東南の勇者……ロクリクス。東方の国の一つ。確かこの国は………」
手に力が入る。新聞がクシャクシャと音を立てる。
手が震える。手が……
「おはよ〜、アテナ」
この声は、エリス様!?いけない、平常心、平常心。……よし。
「あら、おはようございます」
もうこんな時間になっていたとは。新聞はここまでにしておきましょう。
「じゃあ、行ってきまーす!」
「お気をつけてー」
バタンッとドアがしまった。
「では、部屋の掃除をしますか」
◇◇◇
「よーし、粗方終わりましたね」
掃除を終え一段落つこうと思ったその時、ドアをノックする音が聴こえた。
「はーい」
ドアを開けると、そこには見慣れた人が立っていた。
「どーもー、ギルドのものでーす。依頼を届けにきましたー」
「あら、どうも。いつもありがと」
「いえいえ、ではまたー」
バタンッと思いっ切りドアを閉める。まったくせっかちなことだわ。
私は月に一、二回程度でギルドの依頼を受けている。その際に、オススメの依頼が入ると、家に届くようにしている。さっきのは依頼宅配人のレティス。人はいいんだけれど、どうもせかせかしてるのよね。何をそう生き急いでいるのかしら?
「さて、今回の依頼は……」
どうやら、アマタルの西の方にある森で奴隷商の目撃情報があり、その奴隷商の確保と奴隷の保護の依頼らしい。アマタルでは奴隷売買は違法で、重罪として厳しく罰せられている。魔国の中ではこの国だけだ。
私は主に、奴隷商の確保・殺害の依頼のみを受けている。しかし、
「これ、Aランクの依頼ね。私はB+の依頼しか受けないから……あの子、間違えたみたいね。どうしましょう」
悩んだ末、このまま受ける事にした。 そのほうが報酬が弾む。
私は素早く身支度を調え、エリス様に置き手紙を残し、西の森へと向かった。
「ここがアジトね」
森に入り二時間、ようやく奴隷商の根城を見つけることが出来た。しかし、内部はもぬけの殻。既に逃げてしまったようだ。
「勘付いたのかしら?奴隷を置いて逃げるなど、よっぽど捕まりたくないようね」
見たところ奴隷は四人。私は素早く奴隷の入った牢を開け、開放した。
「ほら、これで自由よ。ここから東に行けば街に着くわ。さあ、行きなさい」
奴隷は怯えながらも、走って逃げていった。
「さぁ、後は彼奴等の足跡を追えば───」
その瞬間、体が痺れ、身動きが取れなくなった。
(くっ!?これは…拘束魔法!?体が痺れて、一体どこから?)
すると奴隷商の残党であろう奴らが三人ほど物陰から出てきた。
「はっ!奴隷どもは逃がされっちまったが、これはイイ女が手に入ったなぁ」
(くそっ!声も出せないから詠唱魔法も使えない。このままじゃ……)
「さぁて、この女、どうするよ?」
奴隷商の一人が尋ねる。
「最近溜まってたからな。満足に使わせてもらってから奴隷として売り捌くか?」
嫌……それは………!
「いや、使っちまうと価値が下がる。それにこのくらいの年齢だとろくに言う事も聞かないだろう。バラバラにして闇市に流そうぜ」
「いいなそれ。じゃあこいつは連れてくか」
一人が賛同し、動けないアテナを籠に入れた。
(嫌……嫌!やだ……ここから出して!……もう……)
手に力が入らない。籠が運ばれ、ガサガサと揺れる。
手が震えてるような気がする。もう────ない。
「しかし、ギルドの差し金か?早めにまいて正解だったぜ」
「こいつ、確かギルドで見たことあるぜ。ちっちぇえガキを連れてたな。かなりいい見た目だったぜ」
「じゃあこいつの住所調べて、そのガキも仲良く捕まえて奴隷としてうるか。あーははははっ」
(駄目っ!エリス様…エリス様だけは………もう…やめて……)
しかしアテナは何もできず、只々心の中で懇願するのみであった……
アリさんです。
……さっき本編を投稿したばかりなので何も言うことがありません。
ぜひそっちも読んてみて下さい。
にしても急展開……アテナ、彼女には何らかの過去がありそうですね。
今後の動きに要注目!!




