勇者一行ご案内
なんやかんやあって、現在、勇者さんたちと四人で魔王城へ向かっている最中である。
「なあなあ、あとどんぐらいでつくんだ?」
待ち切れないと言わんばかりに足をばたつかせているセレン。
「あと三十分ぐらいかな」
馬車に乗ってから既に一時間。もういつもの街の姿はなく、どんどん山の方へと進んでいた。
「てか、ほんとにこっちに城なんてあるのか?見たことないぞ」
「魔王は狡猾ですからね。《迷彩魔法》で隠しているのですよ」
「じゃあ、どうやって見つけるんだ?」
「それはアタシの識別魔法で一発です」
この魔法使いさん、どのぐらいの実力者なんだ?
(少なくともAランクぐらいはありそうだね。あとそこの勇者もかなりの手練れだね)
え、Aランク!?おいおい、もしかしたら僕たち、とんでもない人たちについてきたのでは?
「え〜と、お二人はどのような経緯で…?」
恐る恐る尋ねてみた。
「ん?ああ、そう言えば自己紹介がまだだったね。僕の名前はロスラン・マーロン。そしてこっちが、僕のパーティの魔法使い、リリシャだ」
「リリシャ・ロイム。よろしくです」
「僕たちは東の帝国ロクリクスからの直属の依頼でこのアマタルの魔王を斃すようにいわれて来たんだ」
なるほど、国からの依頼じゃ簡単には断れないわな。なのにパーティの半数がいないの大丈夫かよ!
「それなのにお二人だけで大丈夫ですか?」
流石の僕でもツッコミを入れた。
「確かにかなりの強敵とは聞いているが───」
「そんなの勇者様にかかればよゆーですよ!ね、勇者様!」
「……あぁ、当然さ」
まぁどうやらこの人たちは只者じゃないらしいし、期待できるな。
「さあ、遂に着きましたよ、魔王城に」
そこにはただ広い、何も無い空間が広がっているように見える。
「ほんとにココにあるのか?」
「まあ見てなって」
そう言うとロイムさんは手を伸ばし、
「……術式解除」
すると目の前が光だし、徐々に城の輪郭が姿を見せてきた。
「うお!何だ!?」
そして遂に城全体が姿を表した。
それにしても実に大したものだ。これだけ大きな城を《迷彩魔法》一つで隠すのだから。
「よし、それじゃあ……行こうか」
「「はい!」」
さあ、いざゆこう……魔王のもとへ!
◇◇◇
「……レン様、奴らがようやく到着しました」
「来たか!ヨシ、じゃあ案内してやれ。この魔王の間までな」
「御意」
そう言い残し、クリスはスッと姿を消した。
「……にしても、なんだか妙だな。なんかこう、体の根本的な所から拒絶するような、嫌な気配だ…」
◇◇◇
なんか……思ってたんと違う。
魔王城だってのに、まず門番がいない。セキュリティガバガバじゃないか。次に人影がないどころか、なんの気配も感じられない。相当身を潜めるのが上手いのか、或いは本当に誰もいないのか。「ここホントに魔王いるの?」と思うレベルだ。
「勇者様、誰も居ませんね。逃げ出したのでは?」
「いや、確かに上の方から強いオーラを感じる。これは僕らを誘っているんだ。つまり、魔王は間違いなくここにいる」
さすが!《解析者》で調べると、確かに勇者さんの言う通り、ここの九階層ら辺に悍ましいほどのオーラを感じる。これは間違いなく魔王だ。
「にしても、もっと邪魔な取り巻きがいるもんじゃないのか?期待外れだぞ」
緊張感ないなセレンは、、、でも……
「確かに、勇者が来るにも関わらずこれは……もしかして舐められてます?」
「なっ!?勇者様を軽視するしていると!?おのれ……」
「別に舐めてないですよ」
その時、後ろから明らかに僕ではない声が響いた。
一斉に振り向くとそこには、執事の姿をした黒髪の青年が立っていた。
(気づかなかった!気配が全く無い。《解析者》にも引っ掛かるらないなんて!?)
咄嗟に剣を構える。横を見るとセレンも剣を抜き、ロイムさんも詠唱魔法の準備をしていた。ただ、マーロンさんだけ冷静に、敵であろう青年の様子を伺っていた。
「君は誰だい?魔王の手下かな」
今まで以上に真面目な顔で問いかけている。
「おや、そこまで警戒する必要はないですよ。私の名はクリス・ノエルと申します。魔王、レン様より貴方たちをレン様のところへ案内するよう命じられて参りました」
こいつが魔王の側近……気配を隠すのは上手いが、それほどの実力はないか?
(いや、これは実力を隠し持っているよ。警戒しといたほうがいいかも)
(魔力を抑えるなんてこと出来るのか?)
(慣れれば簡単だよ。まぁキミには関係ないけどね〜)
ムカつく………いや、今は目の前の敵に集中だ。
「僕達を案内?なぜそんなことを」
「それを私に言われましても……まぁ、一言で言うなら、レン様は変わってるので」
「変わってる?」
「ええ、それも…常人では考えられないほどに」
「そんな主を、ましては魔王を侮辱するようなことを…」
「別にいいんですよ。レン様は軽い御方ですし、何より信頼を大切にしているのでね。貴方たちみたいに国の傀儡にされているわけではないのですよ」
「ちょっと!!それは聞き捨てならないわ!」
我慢が途切れたのか、黙っていたロイムさんが口を開いた。
「アタシたちだけじゃなく、国まで愚弄する気!?」
「挑発に乗っちゃダメだ、リリシャ。……つまり、僕達は国の言いなりになる操り人形だとでも?」
そう言いつつも彼の顔から若干冷静さが失われた気がした。
「はいそうですよ。自己紹介ありがとうございます。できればレン様の前でお願いします。それと───」
そう言うとクリスと名乗る青年はこちらを向き、
「私の仕入れた情報によりますと、勇者パーティは、剣士一人、魔法使い二人、そして弓使い一人の構成のハズです。ですが見るからに剣士が三人だと思うのですが?貴方達は一体?」
これ僕らに訊いてるのか?なんて言おう……
「おう!あたし達も勇者と共に魔王を倒しに来たんだ!な、エリス!」
「ちょ、セレン!?何言って……」
「ほう……なるほど……」
……これは不味いぞ。絶対に生きて帰してはくれない!どうしよう……
(そもそも、そんな装備で来るのが悪いんじゃないの〜)
(そうだけど……そんなこと言ってる場合じゃないよ!なんとか打開策を考えないと……)
「片方はともかく……貴方、鍛冶屋のテルス家のですよね」
「おっ!なんだ、知ってるのか?」
「ええ、まあ。そんなあなたがどうしてそんなことを?」
「そこの勇者に誘われたんだぞ」
「……うちの国民を人質にしようと……?」
青年はそう言いながらマーロンさんを睨みつける。
「そんな卑劣なこと、勇者様がするはずないでしょ!!」
透かさずロイムさんが反論する。
「にしてはいい人材をお選びで」
いい人材?セレンが?
「あー!もういい!あたしとエリスが相手するから、勇者たちは先に行け」
「は!?セレン!?」
「何だよ、こんな奴あたし達だけで十分だろ」
おいおい!魔王直属の手下だぞ?勇者が頼みの綱なんだが!?
「ま、いいでしょう。レン様は八階にいらっしゃいます。どうぞ」
そう言って道を開ける。いや、いいのかよ!
「……くれぐれも気をつけろよ」
そう言い残し、勇者達は魔王の所へと向かって行った。
「さぁ、さっさとケリつけて………」
そういう間もなく、セレンはドサッと地面に倒れた
「!?セレン!!?」
「大丈夫です。手刀で少し眠ってもらっているだけですので」
あの一瞬で!?全く見えなかった。しかも音すらなく……
「……さぁ、これで落ち着きましたね」
そう言うと少しずつこちらへ歩み寄ってくる。
慌てて剣を構える。勝てないのは分かってる。せめて生きて逃げるんだ。
刻々と迫ってくる青年、僕は今、この青年からどうやって逃げるかを考えていた。しかしそんな僕には予想外の一言が飛んで来た。
「……少し、お話しましょうか。エリス様」
「えっ……?」
どーも、おひさのラドンです!
遅れてしまいマジで申し訳ない、、、
春休みも終わり、新学期が始まりました。そのせいでどうもやる事が多く、投稿が遅れてしまいました。最近忙しくて……投稿はナメクジに戻ります。あと、誤字も多々あると思います。ごめんなさいm(_ _;)m
はぁ〜なんだか疲れちゃいますね。小説は俺にとって息抜きになるのでとても助かります。
明日からも頑張っていかましょう。ではまた次回!




