突撃!魔王城!?勇者さんマジですか?
〜スライム狩りから数日後〜
「おはよ〜、アテナ」
「あら、おはようございます」
スライム狩りから数日、いやーやっと筋肉痛がとれてきたよ。やっぱり慣れないのにあんなに重いの振り回したらね。あと、あれからラゼに説明するのダルかったな。何か色々問題あるみたいなこと言ってたし。「魔力が無いと神のから授かった力や魔法も使えない〜」とか何とか。でも実際に使えたしなー。
そんなことを考えながら、着替えをし、出かける用意をした。
「またセレン様とですか?」
「まぁね」
そう言うと玄関に行き、いつもの靴を履き、ドアに手をかけた。
「じゃあ、行ってきまーす!」
「お気をつけてー」
向かいにある鍛冶屋「ラーストチカ」はいつもよりも賑わいを見さていた。
「こんにちは〜」
「おっ!ヤッホーエリス!!」
「今日はすごく混んでるね」
いつもは空いてるのになとは流石に言わなかった。
「あぁ、そうなんだよ。だからわりぃ、もう少しだけ待ってくんない?流石に親父のワンオペはキツイだろうし」
「うん。じゃあ外で待ってるね」
「オッケー。すぐ行くよ」
それから待つこと十分ほど───
「いやーお待たせお待たせ」
「ううん。だいじょぶ。お店はもう大丈夫なの?」
「ああ、だいぶ空いてきたからな。じゃ早速……ん?何だアレ?」
セレンが指差す方には、ここらでは見掛けない豪華な馬車が街へ歩いてきていた。
「おー!!何アレ凄くない!?あんな豪華なの見たことないぞ!!」
目を輝かせながら凝視するセレン。
「確かにこの辺では見ないよな」
すると、馬車は検問をくぐり抜けると広場で停止した。
これをチャンスと言わんばかりに、
「よしエリス!!あの馬車の人に話しかけてみよう!!稽古はそのあとだ」
と言い、僕の賛否を聞く気もなくガンダッシュで馬車まで向かっていった。
「えっ!?ちょっ、待ってよー!!」
「ほーら、エリス遅いぞ」
「はぁはぁ……速すぎだよ…セレン」
僕もガンダッシュで走り、少し遅れて馬車までたどり着いた。
「あのーすいませーん」
馬車の近くなのにものすごく大きな声で呼びかけている……
すると、「ガチャッ」と音がなり、扉が開いた。
「一体なんだい?そんなに大きい声で……ってなんだ子供か」
中からはガッチリと装備を着込んだ金髪の若い青年が出てきた。それとその奥には、おそらく魔法使いであろう、青年と同じくらいの女性が乗っていた。
「し、失礼しました。えっと……」
「こんなに豪華な馬車、生まれて初めて見たからつい興奮しちまってさ。にーさんたちはこの街に何しに来たんだ?」
流石のコミュ力…羨ましい限りだほんと。
「うーんまぁ、子供に言うことじゃないよ」
「何だよケチだなー……さては奴隷商人か?」
「いやいやセレン!奴隷なんて一人も見当たらないでしょ、、」
「あーそれもそうか」
コミュ力は大したものだが、この子にはもう少し知性をつけてほしい。
「別に良いんじゃない。それにちょうどいいじゃないですか♪」
奥の女性が何やらノリ気で青年に言った。
「いやでも、まだ子供だぜ」
「大丈夫ですよ。アタシたちも広い目で見たら子どもな訳だし」
「な〜あ〜何コソコソしてんだよー」
痺れを切らしたセレンが急かすように問う。
「あーごめんごめん。実は僕達は勇者としてこの国の魔王を討伐しに来たんだ」
「ま、魔王の討伐!?」
先程よりもセレンの目がキラキラしている。
それにしてもいくら勇者といえども、たった二人で魔王討伐は流石に無茶じゃないか?それともこの世界の魔王って、僕の知ってる魔王とは違うのかな?
「えっと、流石にたったの二人で魔王を倒すのは……」
「それは問題ない!…ただ、君たちにちょっとお願いしたいことがあって……」
「おう!何でも言ってくれ!あたし達が手を貸すよ。な!エリス」
「えっ!……あ、うん……」
要件を聴く前に言っちゃったよ!しかも僕まで……
「それは助かるんだけど……お願いしたいのが───」
「えー!一緒についてきてほしい!?」 「はー!?一緒についてきてほしい??」
「そうなんだよ!実は───」
聞くと、どうやら元々は四人でパーティを組んでいたそう。しかし一人は余命宣告を受けた母の看病、またもう一人は魔王討伐よりも彼氏とのデートを取ったとか。一人目はまだしも、二人目の理由何だよ!!クズ過ぎるだろそいつ。まっっったく、リア充が!!
……で、今まで旅をしてきたその二人のにも、『魔王を倒した勇者パーティの一人』という称号を与えたいらしく、四人で行けば、後からその内の二人がさっきの二人だと言うことができるから、僕たちについてきてほしいのだとか。
聖人すぎるだろこの勇者………まぁやってることは勇者に有るまじき行為何だけど。だって七歳の男の子と12歳の少女を魔王との決戦の戦場に連れて行こうとしてるんだよ!?ヤバいでしょ!
「それめっちゃ危険じゃないですか!?」
「一様僕たち二人で闘って、君たちはただいてくれればいいんだ」
いや、「ただいてくれれば」じゃないでしょ!最悪、全員死亡endだよこれ。とにかく断ろう。
「申し訳ないですが───」
断ろうとしたその時、嫌な予感がした僕。まさかね……さすがにこれは………
恐る恐る横を見る。
案の定そこには、まるで「今日のご飯はシチューにしょうか」とアテナに言われた僕のごとく、目に星を宿し、声を出されなくてもわかるほどテンション爆上がりな顔をしている彼女の姿が……僕もあんな顔してたんだろうな。
「せ、セレン?」
あ…あ…やめてくれよ?
「………………」
「お〜い、セレ〜ン」
さすがにそれは……
「………」
「えっ…えっと……」
洒落にならん!
「…あ」
「あ?」
「あたし達も、いーーーくーーーーー!!!!!!!!」
あぁ、やっぱりね。そうなっちゃうんだ。
「うわ!!え?あ、そ、それは良かったよ……」
勇者さん、ドン引き……
「なぁエリス!聞いたか?あたし達が魔王を討伐だってよ!考えただけでワクワクとドクドクが止まらねぇよ、心臓の!!(倒置法)」
やばい。めっちゃハイになってる。早いとこ落ち着かせないと。
「せ、セレン!?一回落ち着いて───」
「なあエリス!!」
そう言いながら腕を鷲掴みしにしながら訊いてきた。
「お前は行ってみたくないのか?魔王城!」
うん、すごく行きたいよ!ゲームとかのラスボスがいる城とか、ロマンの塊じゃないか!!めちゃくちゃ気になるよ!
「そりゃ行きたいよ!でも……」
「だったら行こうぜ!こんな機会、もう来ないかもしれないんだぞ!それともあれか?びびってるのか〜??」
子供の煽りかよ、それ。そんな安い挑発にこの僕が乗るわけないだろ。でも、これは目標達成のいい機会かもな……よし!
「びびってないし!!行こうよ!魔王のとこ」
(めちゃくちゃ挑発乗ってんじゃん……)
(これは違う!舐められないようにちゃんと否定してるだけだ)
(はぁ〜こんなんでホントにダイジョブかな〜?選ぶ主、間違えたかも……)
(一言余計だぞ)
「よっしゃ!そう来なくちゃだよな。あ!それと……」
そう言うと僕の耳元でそっと呟いた。
「実はうちの国の魔王、かなり優しいって聞いたんだ。だから万が一の時は見逃してもらえるかもな。所詮は魔王も、ただの称号なわけだし。人の心、情あるさ」
まったくセレンは……いくらなんでも舐め過ぎだろ。
「おお!それじゃあ決まりですね!ささ、早く行きましょ。ほら、勇者様も」
「「お願いします!!」」
この時は生半可な覚悟で魔王の元を目指していたが、僕らは侮り過ぎていた。
◇◇◇
「クションッ!」
「おや?風邪引きましたか?レン様」
「いや、多分違うと思う。多分ね」
「可愛らしいくしゃみですね。誰かがレン様の噂をしてるんですよ」
「それは迷信だろ?」
「そうそう、噂といえば……」
「ん?どうしたクリス?」
「二週間ほど前に帝国ロクリクスを出た勇者一行がマテリアスに到着したそうで、なので明日にはこの魔王城まで来るかと」
「本当か!楽しみだな〜♪そういや、勇者が来るのはいつぶりだ?」
「最後に来たのが二年前ですかね?その時は私が全員庭の妖魂桜の肥やしにしましたが」
「リアン……お陰であの木は一年中花弁が舞ってますけどね」
「あらクリス、とても綺麗でいいじゃない」
「そうですか……レン様、これからは散った花弁の掃除はリアンがするそうです」
「な!クリス!何を言って───」
「あ、じゃあよろしくな〜。あれは俺も気に入ってるから」
「くっ、まぁレン様が言うのであれば渋々……」
「てか話がそれたが、今回は俺が相手する」
「まだかまだかと暇してましたからね」
「まあな。それと、危険だから召使いには全員休暇を取らせてやってくれ。行く宛がない奴には宿代として銀貨三枚ぐらい渡しておけ。あ、もちろん、お前らは俺とだから」
「承知しました」 「りょーかい」
「さーて、勇者……一体どのぐらい耐えてくれるかな。ふふふ、保って三十分ぐらいだろうけどな」
「もちろん“手加減して”ですよね?」
「そんなの当たり前だろ?玩具を全力で楽しんだら、たちまち千切れて、もげて、バラバラじゃん。すぐ終わっちゃつまらないしね」
そして何も知らなかった。魔王が人間ではない事も。僕たちが挑もうとしているのは、七柱いる《七星魔王》の最恐、『神星』のレンであることも………
ハロー、アイム シリウス デス。
はい、今回はいかがでしたか?
前回よりは落ち着いたと思います。
……これぐらいしかかたることがありませう。そうですネタ切れです(泣)
えー次回は遂に初魔王とエリスくんが直接対峙です!
察してる方もいると思いますが、さくしゃは主人公ではなく、レンに感情移入しております。なので俺はレンです。異論は認めません!!よーし次回は全員フルボッコだ!
次回
勇者 死す
デュエル スタンバイ♪




