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象の鼻

作者: 卯月匠

 「猿の手」をご存じだろうか。「猿の手のミイラ」にはまじないがかけられており、願いを3つ叶える魔力があるが、全て皮肉な形で叶えてくれるというものである。


 では「象の鼻」については、いかがだろうか。


 「象の鼻のミイラ」にもまじないがかけられており、願いを3つ叶える魔力があるが、全て皮肉な形で叶えてくれるというものである。


 ある日、象の鼻のミイラを手に入れた黒井家の旦那は、象の鼻を握りしめて、「お金」と唱えた。


 翌日、黒井氏の息子の上司という者から電話があり「息子さんは会社の金を横領してしまった。今日中に損失を穴埋めしないと息子さんはクビになる。今はこの対応のため本人は立て込んでいるから、同僚がお金を取りに行くので渡してほしい」と言ってきた。

 黒井氏はあわてて示された額の現金を用意して、自宅まで取りに来た息子の同僚という人物に渡した。けれどもすぐ最近はやりの詐欺だと気づき、象の鼻を手にして「元に戻してほしい」と願った。


 その日の夕刻、黒井氏の家のインターフォンが鳴った。黒井氏の夫人が玄関ドア越しに「どなたですか?」と尋ねると、「母さん、オレだよ。オレオレ」との返事。とても切迫しているような口調。横領の帳消しに関して象の鼻に願ったのだから、息子が焦る事由はなくなったはずだし、そもそもあれは詐欺だったでしょ?

「どうしたの?家の鍵は持っていないの?」

「今朝急いでいたから、鍵は部屋に忘れたんだ。それより早く開けてよ、母さん」息子は玄関をノックし始めた。

 黒井夫妻は不審に思う。「ダメだ。決してドアを開けてはいけない。」

 黒井氏は象の鼻を握りしめて最後の願いをかけると、ノックは止んだ。

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