【2】
ティアの一日はこんな感じでした。
朝、目が覚めて質素な灰色のお仕着せみたいな服に着替えると、また質素な食事を済ませて『涙の川』に宝石を流す。
それを、幾度となく繰り返す。
お昼ごろになったら、質素なサンドイッチを食べまた仕事。
夜になると仕事は終わり、質素な食事を済ませてお湯を使って体を綺麗にし就寝。
こんなサイクルを何回過ごしたのか、ティアは特に気にも留めてなかったのではたまた一年が過ぎたのか、二年が過ぎたのかもう分からなくなっていました。
ある日のお仕事のことでした。
今日は、ヴィーくんという男の子が悲しくて流した涙の滴の宝石をティアは壺によいしょと受け取りました。
青くて青くて、見ているだけで悲しくなってしまうような色の涙の滴の宝石でした。
小さな壺はすぐに青い涙の滴の宝石でいっぱいになってしまいました。
ティアはその壺を『涙の川』にそっと傾けます。
青い涙の滴の宝石はキラキラと寂し気に輝いて、静かに川の中で融けてゆきました。
ティアはそれをじーっと眺めます。
ティアは、いつまでもそれを眺めていたかったのですが……。
お空に雲がもくもくと湧いてきたから長いスカートの裾をパッと払って立ち上がりました。
川の畔の空に、雲が湧いたら涙の滴の宝石が降るという合図なのです。
ティアは無表情で壺を空に掲げます。
今度はお空からピンクの涙の滴の宝石が降ってきました。
それは音もなく壺に溜まっていきます。
ティアはピンクの涙の滴の宝石がいっぱいになると、『涙の川』に流しました。
「なりくん、大好きだよー‼」
びくっとティアは身を竦めました。
たまにあるのですが、想いが込められた涙の滴の宝石が融ける時。
まるで、融けたくないというように滴の宝石から声がするのです。
ティアは逃げるように川から離れます。
少しだけ胸がドキドキしたティアは、なぜ胸がドキドキしたのか首を傾げました。
それはいくら考えても分かりませんでした。
お読みくださり、本当にありがとうございます。




