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これからも変わらず

 


 広い会場内から父を見つけるのは案外簡単だった。ベルティーナも顔を知っている貴族達が父の周りにいて、濃い紫の瞳がベルティーナを見つけると断りを入れて輪から抜け出した。



「殿下との話は終わったのか?」

「はい。お互い、今後は公爵となる者として頑張りましょうと」

「そうか」



 次の婚約について父からは何も言われない。多分だがアルジェントがいるからだと予想している。少々疲れた表情の父に帰宅の提案をしてみた。もうしばらくはいると答えられ、ベルティーナは戻りたい時に戻ればいいと告げられ別の方へ行ってしまった。


 今まではアニエスが常に引っ付いていた父の側には紳士しか近づけなかったものの、今は女性達も話し掛けていた。殆どが愛人狙いか後妻の座を狙っている欲深い人ばかりでも、中には昔から交流があって心配そうに話し掛ける人もいる。


 知らないことが多くてもこれから知っていけばいい。


 結局ベルティーナは舞踏会が終わるまで父と残り、二人馬車に乗り込みアンナローロ公爵邸に到着した頃には既に日付が変わっていた。


 



 ――半年後。


 今日も今日とて小公爵の仕事を熟すベルティーナの机周りには大量の紙の束が積まれている。数日前、邸内で風邪が流行りベルティーナや父も漏れなく引いてしまった。人間ではないアルジェントは風邪に倒れた父娘と使用人達の看病にベルティーナに走らされ、ぐうたらしている暇がないと零しながらも面倒を見た。


 風邪を引いて寝込んでしまって溜まった書類仕事を熟すベルティーナの側にはアルジェントがいて。書類に不備がないかを確認していた。



「ある程度ケリがついたら休憩しようよ」

「そうね。ずっと書類を睨めっこしていたら肩が凝ってきたわ」

「揉んであげようか?」

「お願い」



 手にしていた書類を机に置き、ベルティーナの後ろに回って肩に触れた。



「はは、凝ってるね」

「いたた、自分が思う以上に凝ってるみたい」

「ちょっとくらい休んだっていいのに」

「あら、それは私の台詞ではなくて」



 昔、アルジェントを拾った際に言われた。ぐうたらしたい、退屈は嫌いだと。退屈が嫌いならぐうたらは実現出来ないのでは、とベルティーナは自分の従者になるよう求めた。



『魔法で何でもしちゃおうか?』

『いらないわ。自分の力でもどうしようもなくなったら頼むわね』

『変わってるね。人間って楽が好きな奴が多いって聞いたのに』

『自分の力でどこまで出来るか試したいじゃない』



 確かにと納得したアルジェントはベルティーナに頼まれる以外では魔法の使用を抑えた。



「今でもぐうたらしたい願望はある?」

「まあね」

「ぐうたらさせてくれるご主人を探す事ね。私はアルジェントをただぐうたらさせるつもりはないもの」

「酷い飼い主だね。ペットの面倒は最後まで見てよ」

「勿論。一生面倒を見てあげる。その代わり、私の手伝いをしてちょうだいね」

「はいはい」



 婚約破棄をリエトからされるかもと期待していた時、アンナローロ家を出るなら結婚しようとアルジェントに言われていた。当時は行く当てのないベルティーナを気遣っての発言と捉えた。本当はどう思っての言葉なのかと今になって訊ねると目を丸くされ、もう、と苦笑された。



「本心だよ。ベルティーナなら、君が死ぬまで一緒にいたいと思える」

「今は?」

「今も同じだよ」



 従者でも夫でもベルティーナの側にいるのに変わりはない。

 肩揉みを終え、凝りがマシになったとお礼を言い。


 椅子から立ち上がってまだ後ろにいたアルジェントを抱き締めた。珍しいね、と言いつつ背中に腕が回った。



「偶にはいいでしょう」

「そうかもね」

「さあ、休憩が終わったら続きをするわよ」

「はいはい」



 アルジェントから体を離すとまた椅子に座り直し、書類仕事を再開させたベルティーナ。


 呆れつつも彼女らしいとアルジェントも手伝いを再開した。

 



本編完結となります。

最後までお付き合い頂きありがとうございました!



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― 新着の感想 ―
[良い点] ハッピー?エンドで良かった!
[一言] 色々考えたけれど、明らかに嫌ってるとわかる言動をアルジェントがクラリッサにすれば良かったのじゃないだろうか? 二人を追い出す頃に。 主人公以外の皆から愛されてるといつまでも思ってるから、姉…
[良い点] 完結おつかれさまでした、面白かったです!
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