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待ってました!


 婚約者になったのだから、好きになってもらう努力をした。

 殿下の好きな物を覚え、殿下が好む本を読み、殿下が好きな女の子になろうと。そして王太子妃となるよう厳しい教育に毎日耐え続けた。

 相手に初恋の人がいようと王命によって決められた婚約が覆る事はない。


 ――と思っていた時期がべルティーナにはあった。

 八歳の時に婚約を結んだ王太子リエトも両親も兄も、皆従妹のクラリッサが可愛いと必ずべルティーナの前で誉め、べルティーナにはクラリッサのような可愛さがない、もっと可愛げがあればいいものをと耳に胼胝ができるくらい聞かされた。


 既に両親や兄、リエトからの愛情を諦めているべルティーナは今日お茶の日でもないのに呼び出された予想を従者アルジェントにさせた。



「なんだと思う?」

「近頃、クラリッサと王太子が頻繁に会っているから、べルティーナの待ち望んだアレじゃない?」

「そうよね? やっぱりそうよね?」



 ずっと待ち望んでいる――婚約破棄。

 叶うのなら、是非叶ってほしい。


 初対面の時から冷たいリエトから、嫌われ度が高くなったのは十一歳の時から。普段からべルティーナが何を言っても無言に近いのに、十一歳以降からほぼ無言となり、口を開けば嫌味しかない。

 両親といい、兄といい、リエトといい、口から必ずクラリッサは可愛いと言うのなら、クラリッサを養子にでも婚約者にでもすればいいものを。

 クラリッサをアンナローロ公爵家の養子にすれば問題はない。


 暫くすると執事が来て「お嬢様、馬車の手配を外に待機させております」と伝えに来た。



「分かったわ。さあ、行くわよアルジェント!」

「はーいはい」



 意気揚々と敵地へ乗り込むベルティーナの後ろをアルジェントは続いた。

 王太子の冷たい視線の先には必ずベルティーナを通り越したアルジェントがいて……強い嫉妬に濡れているのを……ベルティーナだけが知らない。


 馬車に乗って見慣れた景色が過ぎていくのを眺めず、心待ちにしていた婚約破棄をされる事に大きな喜びを感じているべルティーナは隣で苦笑するアルジェントに頬を膨らませた。



「何よ、その顔は」

「まだ確定していないのになって」

「確定よ確定。お茶の日でもないのに呼び出すのは婚約破棄しかない! 婚約破棄したらお父様の耳にもすぐ入るだろうから、その時はすぐに家を出て行くわよアルジェント!」

「そうだね」

「お菓子の国がある西の大陸に行く? それとも、海が見える南の大陸に行く?」

「大陸を越えなくても海が見える街もお菓子で有名な国だってあるじゃないか」

「だって、アンナローロ公爵家や殿下と全く関係がない土地に行きたいの」

「俺が言った国も無関係ですよ。この国から十分遠いので」



 アルジェントにここまで言われるとベルティーナも黙るしかない。

 不満げにしつつも徐々に機嫌を取り戻し、王城に到着すると胸を張って婚約者の待つ場所へアルジェントを隣に向かった。







読んで頂きありがとうございます。



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