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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

卒業パーティで王太子に冤罪をかけられて婚約破棄、さらに処刑までされた公爵令嬢は過去へと戻り王太子の手紙を見つけました。

作者: 騎士ランチ

まずはおめでとう。


この手紙を読んでいるという事は、君は以前とは桁違いの魔力を手に入れ、そして僕に強い憎しみを抱いているという事だ。


素晴らしい。今の君なら全力で愛せるよ。


ごめん、いきなりこんな事伝えても意味が分からないよね。だから、最初から書き記そう。ここから先に書いてあるのは僕の計画の全て。君にとっては過去の話だが、僕にとっては未来の話だ。


今から半年後、卒業パーティの日に僕は君に冤罪を被せ婚約破棄をする。適当な頭の弱い男爵令嬢を薬で言いなりにし、『僕は真実の愛に目覚めた!真の聖女であるこの男爵令嬢と結婚する!』とか言っちゃうのさ。


計画通りに行けば、君は偽りの聖女として処刑。僕は冤罪がばれて幽閉からの暗殺。婚約破棄の為に用意した男爵令嬢や取り巻きも病死扱いで暗殺。真の聖女を失った国は衰退。多分帝国に吸収されるだろう。


勿論、これだけの被害が出る行為を計画しているのは、それ以上のリターンが期待出来たからだ。


君はループを経て、僕を調べ上げこの手紙の隠し場所に気付いたのだろう?それこそがリターンだ。君がループ能力に目覚めた事実に比べれば、王国が滅ぼうとも前の世界が滅ぼうとも何の問題にもならない。


以前の君は、あらゆる精霊に愛され歴代最強の聖女として王国民に愛され、敵からは恐れられた。それだけで無く、国政にも参加し、国力を数倍に引き上げた。


一方の僕は、小さい頃からもっと努力しろと親や教育者から言われてきた。婚約者の君が凄まじい結果を出し続けているから、平凡な僕は一層頼りなく見えたのだと思う。


だから、僕は僕なりに努力した。そして、一つの結論に行き着いた。僕がどれだけ努力しても、君の成果に対しては誤差の範囲。だから、僕がやるべき努力ってのは君の邪魔にならない事、そして、可能ならば君のやる気を引き出す事だと。


それからは、君の尻に敷かれて言いなりになる事に全力を注いた。聖女に頼り切りの情けない王太子、そう思われて結構。寧ろそれが誇らしくも感じたよ。


でもさ、何年も傍で君の働きを見てると気付ちゃったんだよなあ…。












お前、本当はいっつも仕事で手を抜いてただろ?


俺はお前が十分に働ける様に場を整え、結果を見てきたから流石に分かったよ。お前は全然本気を出してなかった。


お前がその気になれば、もっと犠牲を減らせた。お前が本気を出せば、王国はあっという間に大陸を統一できた。お前がもっと自分の力を研究していれば、神そのものにだってなれた。


でも、お前はそれをしなかった。自分の持ってる厖大な力と知識を小出しにして、弱き民から称賛されて悦に浸っているだけだった。


最悪な気分だったよ。俺はお前がいたから努力を続けてこられたのに、お前の実態はこの世の誰よりも怠惰だった。


だからさ、お前も全力で頑張らないと不公平だろ?婚約破棄の計画はお前を追い込んで本気にさせる為に実行した。


俺は誰よりもお前の本当の実力を知っている。伝説にしか存在しない逆行魔法もお前を追い込めば習得するだろう。


お前は俺の事なんて何とも思っていない。だからこそ、俺の裏切りに直前まで気づかなかったお前は、自身の無関心を後悔し反省し心を入れ替えたんだろう。


卒業パーティで馬鹿をやらかした俺は脱出不可能な塔に幽閉されたが、ループが起こったと同時に世界が徐々に崩壊し、皮肉にも俺が幽閉された塔が最後まで残った。俺をここに閉じ込めた奴らが、中に入れてくれと懇願しながら入り口の前で息絶えていったのは中々に爽快だったな。 


まあ、数時間後には俺も世界の崩壊に飲み込まれて死んだけどな。あっぴゃぴゃぴゃぴゃ!!!













…なんてね。

僕には一周目の記憶なんて存在しないから、今のは完全にただの妄想さ。二周目の世界が生まれた結果一周目の世界が消滅するなんてのはあくまでも仮定だ。実際、あちら側がどうなったかは確認のしようが無い。


で、話を戻すと、この世界の僕はまだ君に何もしていないし、君に失望しきってもいない。冤罪を作るのもまだ先だし、誰と組んで婚約破棄するかも決まってない。僕がやった事はこの手紙を書いて隠しただけだ。


ただ、君を怒らせた事実は変わらないし、それについては一周目の僕の分も謝るよ。僕だってこの手紙が発見されないままある程度日が経てば、この世界を一周目と判断して計画を実行に移していただろうしね。


これで僕の計画についての話は終わりだけど、最後にもう一つ言わなきゃいけない事がある。


実はこの手紙には三つの魔術がかけてあったんだ。


一つ目は、僕に殺意を抱いている人物しか封を開けられない魔術。これは最初に説明したよね?


で、後の二つなんだけど、一つはこの手紙を読み始めたら読み終わるまで手紙を読む事に集中し、周囲に注意が向かなくなる魔術。本来、僕なんかの魔術が君に通用するはずないんだけど、これは君がこの手紙を読もうとする意思をさらに強化するバブ的な魔術だからきっと成功しているだろう。


そして、最後の一つは一番単純な魔術。手紙の封が解かれた事を僕に知らせる魔術だ。そう、僕は今、花束を持って君の後ろに立っている。


僕はもう、君の事を恨んではいない。それどころか、以前以上に愛し尊敬している。君が僕の事を許しても許さなくても後悔は無い。勿論、襲ってくるのなら全力で抵抗はするけどね。


これで今度こそこの話は終わりだ。さあ、振り返り顔を見せてくれ。


「愛してるよ」

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― 新着の感想 ―
[一言] 愛だなぁ………俺が公爵令嬢なら惚れちゃうよ。 誰より自分を理解してくれて、評価してくれて、誰も彼もが自分に頭を垂れる中ただ一人“挑み“あまつさえ神にすらなれる才覚を凌駕して殺害せしめた。自分…
[一言] この王子の気持ちが、わかって しまいますね…(;^ω^) 面白かったです(*˘︶˘*).。.:*♡
[良い点] これ、手紙を読み終わった公爵令嬢どうするんでしょうね。 個人的にはこの王太子、ぼっこぼこにされてヤバいことになりそうな予感しか…!
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