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めーめーわーるど  作者: 愛壊
1/4

1話

著作権とか、問題あったらごめんなさい。優しく注意して。


1人の少年が夜の学校を歩いている。暗闇のなか恐る恐る進み…生き物に会った。


あれ?こんなところでどうしたんだろう?いやいやいや、待てよ?ここは深夜の学校で…なんでこんなとこにネコが?

そこには、暗闇の中でまるで周りの闇を吸い取ったかのような、美しい純白のネコがいた。


数秒ほど見つめあう。

ネコが寄ってくる。

元々可愛い物好きな少年が、もう我慢できないと言うように手を伸ばす。ネコは嬉しそうに頭を撫でられている。

先程まで感じていた恐怖が和らいで和やかな気持ちになっていると、ネコが道を示している…。

どうやら来た道を戻ろうとしているようだった。


「そっちに行きたいの?でもごめん、僕やらなくちゃいけないことがあるんだ」

ネコは一瞬、怒るようにも諦めたようにも見える表情をし、…焦るように少年の方へ飛びかかる。


「え!?」

少年は驚いて飛びずさる。

ネコの開いた口から鋭いキバが覗いて見えて、思わず目をつぶってしまう。

次の瞬間。

右足に鋭い痛みが走る。

鋭いものが突き刺さった痛み。

耐えようと思えば耐えられるような。

ぐっと耐えて目を開けると…そこには何もいなかった。

さっきまで目の前にいたはずのネコもいない。


消えたのだろうか。

音もしなかったし。誰かが来た気配もない。

いや、そもそもなんの気配も感じない…。

いつからだ?そういえば、さっきまでいたネコはどこから現れて…


ピチャ。




♪~

目覚ましの音で目が覚める。

時刻を確認し、幽有はゆっくりとベットから起き上がる。

いつものように学校に行く準備をする。

ん。なんか、今日はよく寝れた気がする。

メガネをかけ、制服を着て、髪を整える。

髪のハネは治らない。


「はぁ。」

鏡を見る。少し長めな暗紅色の髪を外側にハネさせ、前髪を右側だけ耳にかけた少年。

学校の制服をほとんど着崩さずに着ていて、真面目さが窺える。

前髪のせいで片方しか見えていない薄紫色の目で自分の姿を確認し、登校用のカバンを持つ。


そしてそのまま朝食を食べにリビングへと向かう。

「おはよう。萌歩にいさん」

「おはよう。幽有」

兄に挨拶をして、母が用意してくれた朝食を食べる。

両親は仕事に出かけたようだ。

うん。美味しい。

食器を洗って、歯磨きをする。

…もうそろそろかな。

ピンポーン

「今日も早い。相変わらずいい子だね。」

「ん〜。まぁ、ちょっとうるさいけど。」

そう笑って答え、玄関へと向かう。


「おはよう!ゆう」

「おはよう。こむ」


黒色と灰色が絶妙に織り混ざった髪を自由にカールさせ、髪の一部を動物の耳のように立てた訪問者が挨拶をする。

制服の上にパーカーを着ており、目の色は暗めの黄色。全体的にどことなく動物っぽさを感じさせる。

あの髪はいつ見ても不思議だ。


「光霧くん、おはよう。いつもありがとう。」

「おはようもぶ兄!気にすんなって、これは俺の使命だからな‼︎」

「いやだれに授かった使命だよ。…まあ、学校行ってくるよ、にいさん。」

「気をつけて行っておいで。」

「行ってきま〜す。」


一緒に歩く。

光霧と幽有は幼馴染だ。

家が隣で、年も近かったため仲良くなった。

ーとは言っても、光霧のほうはその明るい性格もあり、幽有の兄である萌歩をはじめとする様々な人間と友好関係を築いていたのだが…幽有とは特に仲が良いと言える。

その証拠に同じ高校へと進んだ光霧と幽有は毎朝同じ時間に登校している。


駅に着き、電車に乗る。

さすがに電車の中では大きな声は出せないが、2人でいる時のほとんどは光霧から話しかける。

「見てみて〜、なんか今日髪の毛の黒の割合が多い〜」

「それ日によって変わるんだっけ。」

「ん〜。わかんね。」

ほんとに割合は変わってるんだろうか。


そうこうしているうちに電車を降り、しばらく歩いた後、学校につく。

「おっはよ〜。」「おはよ…」

何人か来ているようだ。

光霧が椅子に座る。

「いや、それでさ〜」

こむ、そこ僕の席。

「みてみて、新しいの考えたから‼︎」

「え、待って…」

ここで出したら…。


「やぁー‼︎」

ぱっと広げた光霧の両手から生き物が出てくる。

生き物と形容したのには訳がある。それらはライオンや、キリンや、ゾウなどさまざまな動物が組み合わさっているからだ。

顔。体。耳。色。模様。鳴き声。鳴き方。

それぞれが違う動物から作られている。


「みてみろよゆう!これユニコーンっぽくね?」

うさぎのような白色をした無地の肌に馬のような体、猫のような大きな瞳にサイのような角を持った生き物が、コウモリの羽で飛んでいる。

「う〜ん。ちょっと目が怖い。」

「そっかぁ…可愛いと思ったんだけどな〜」

光霧が指で突くと、小さな光と共に霧になって消える。


これは光霧の特技だ。

組み合わせて作られた幻の動物たちを生み出すことができる。大抵は変な生き物なのだが。


クラスメイトが光霧の動物たちを見にくる。

あぁ、やっぱりこうなったか…。ここ僕の席なのに…。

光霧が幻を出すと、当たり前だが注目を集める。


「なあなあ、あれ死王っぽくね?」「ん?どれどれ〜。って、おい聡!あれサルじゃねぇか。」「みてみてうぶぶ〜。あのもふもふのやつ可愛い〜」「えー、愛壊あれ鳴き声キモくね?」「あ、骨だ。」


「お前は学校でポテチを食うな」

ポテチが没収される。

あ。

「おはようございます。先生。」

「あ行せんせーおはよー。」

幽有と光霧が挨拶をする。


みんなが残念そうに自分の席へと戻っていくなか、先生が幻を指で突いて消しながら話しかけてくる。

「光霧、こんな朝早くから出して大丈夫か?授業は寝るなよ。」

「まぁまぁ、大丈夫ですって、せんせー。」

「根拠のない自信…」

「というか、自分の席に座れ。」

先生…よく言ってくれた。


HRが始まる。

幽有にとって学校はさほど嫌いなものではない。勉強も特に嫌ではないし、友達(光霧)もいる。うるさすぎるクラスメイトは少し苦手だが、嫌いなわけでもない。


…そんな幽有のコンプレックスは、特技だ。


他のクラスメイトが幻を出せたり、記憶力が良かったり、角が生えているなか、幽有には特に突出したことがない。

学校の成績がそこそこいいのは真面目に勉強しているからで、運動もそこまで得意ではない。特に日常生活に支障は発生しないが、少し物足りなく感じてしまう。

名前に「有」という文字が入っているのにも関わらず、特技が「無い」とは皮肉だ。


一応、特技にも代償がある。「容姿系の特技:体タイプ」は服などを着る時に不便。「記憶力などの脳の働きに関係する特技:脳タイプ」は睡眠など、人間が生きていく上で必要な生命活動がより必要になる。


では、「幻を生み出すような意図して出すような特技:魔法タイプ」を持つ人間はどうなるのか。結論から言うと、疲れやすくなる。とは言っても、特技を使うとき限定なので、特技を使わなかったら何もないのと同じだ。各タイプにも個体差はあるが。


先程、先生が光霧に寝ないように注意したのはこのためだ。『休み時間に特技を使い、疲れが溜まった光霧が授業中に寝てしまう』という現象はこのクラス内でよく見られる。

と、言うわけで。ただいま絶賛授業中なわけだが、その光霧くんは…うん。寝てる。

光霧の成績?もちろん悪いよ。





キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン

「おっしゃあ〜!昼休みだぁ〜‼︎」

チャイムがなると同時に光霧が駆け寄ってきた。

いや、こむいつ起きた?え?寝たふり?

「ふわぁ〜。よく寝たぜ。」

やっぱ寝てた。


そんな光霧の声を始めとし、教室内が騒がしくなる。

「やっほ〜。遊びにきたよ!飯食お。」「あるごじゃん。あ、でもごめん。今から弟と飯食いに行く。」「佇美もいるよ」「猫瑠と技我も呼んだぜ!」「お、じゃあ俺も行く〜。」「ごめん、俺彼女と食べるから。」「リア充爆発しろ。」

お、どうやら特にうるさい集団が教室から去るみたいだ。


聡には中学生の弟、遡刃がいる。この神場学校はエスカレーター式方式で弟も一緒に通っているので、度々会いに行っている。

余談。学校七不思議に「年齢も性別も分からない人物が常にうろついている」があるのだが。皆、あるごの事だと分かっていても、ホントの正体はわかっていない。


「今日は教室静かになりそうだな〜。」

「だね。僕は静かな方が好きだけど。」

光霧と幽有はいつもセットだ。

学校に購買や食堂はあって、そこへ行く生徒も多くいるが、2人はいつも弁当なので一緒に教室で食べている。

お弁当の中身交換をしたり…しなかったり。




そんなこんなで昼休みもあっという間に過ぎ。午後の授業も無事(光霧はまたしても寝ていた)終わって、放課後。

「カラオケ行こ〜。」「いいねぇ〜!」

そこそこ仲の良い集団に誘われていた。

カラオケ…あまり人前で歌うのは得意じゃないんだけど。…サボるか。


突然、元気にはしゃぐ光霧のパーカーのフードが掴まれる。恐る恐る振り向く光霧の視線の先には先生の爽やかな笑顔が…。

「光霧。ちょっとこい。」

…。

「やだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」

ずるずると引きずられていく。

えっと。うん。まぁ、授業あれだけ寝てたら…そうなるよな。


「光霧連れて行かれちゃったし僕も帰ろうかな」

よし、今のうちに…。

ガシ。

「し、死王?なんで腕掴んで…」

「よっしゃ、カラオケ行くぜー!!」

いや、その前に手離して!?

「「「お〜」」」

ちょっと…待って…。

ずるずるずる。




…き、来てしまった。

幽有達は繁華街に来ていた。

たくさんの店が立ち並ぶ中カラオケ店を目指して歩いていく。…数名ほどスイーツの魔力に屈しそうだが、意思力で耐える。


幽有は死王と腕を組んでいる。一方的に死王が組んでいるのだが、幽有を捕獲すると同時に死王が迷子になるのを防ぐ役割がある。一人にするとふらっと消えかねん。

元々死王が方向音痴であることもあるが、それ以上に繁華街の人の多さが不安だ。さまざまな人が行き交い、街は喧騒に包まれている。


死王が立ち止まる。

「あれ?冥弟がいる。」

冥弟とは死王の弟だ。

「あ、ほんとだ!おとーとくんいる」

「眠と萎もいるな」

「おーい!やっほ~。」

どうやら知り合いの小学生達に会ったようだ。幽有も何度か交友がある。


彼らも学年は違えど、同じ学校に通っているので学校の近くで会うことに違和感は無いが、いつもと違うところが1つある。

「あれ?あの人誰?」

冥弟は、いつもは見かけない20代ほどの男性と言い争っている。


「お〜い、お前誰だよ。俺の弟になんか用か?」

死王が遠くから話しかける。

「あ、兄さん!待って、来ちゃダメだ!!」

意図が分からず不思議がる幽有と、言い争っていた男性の目が合う。


途端、目を丸くした男性が固まり、次の瞬間幽有の方へと一直線に近づいてくる。

「おい、誰だって聞いてんだよ。」

聡が立ち塞がる。

「あぁ、ごめん。つい、今会えると思っていなくて…。」

男が立ち止まる。軽快で馴れ馴れしい。


後ろから冥弟達が追ってくる。

「そいつ。こんなの配ってたんだ。」

そう言って紙のようなものを差し出す。


そこには大きく幽有の顔の写真と『探しています』の文字が。


「ぼ、僕?」

「知ってる人?」

「い、いや知らない」

「そもそも知り合いならこんなふうに探さないだろ。」

それもそうだけど…。

男が聡越しに喋りかけてきた。

「ごめんね。キミがどこの誰か分からなかったから…えっとゆーゆくん?実は1週間前のことで話があって。」

…1週間前?いつも通り生活していたはずだ。こんな男と話す時なんて…。


「ほら、会ったことないって言ってるぞ。」

冥弟達はこの不審者から幽有を守ろうとしていたようだ。

「あぁ、うん。ゆーゆくんと直接話したわけじゃなくて、こっちが一方的に知ってるんだけと…。」

「不審者じゃん」

「ち、違う!いや、今のキミ達から見たらそうかもしれないけど。」

怪しい。


「で、幽有を探してどうするつもりだった?」

死王なんか頼もしいな。

「伝えなくてはならないことがあって…。」

みんなの表情がどんどん険しくなっていく。


「こんなやつ気にするな。幽有行こ。」

そう言ってうぶぶが幽有の手を取り連れていこうとする。しかし、その幽有の手を男が捕まえる。

「お願い。キミのためでもあるんだ。話を聞いて。」

「お前さぁ、いい加減に…」


そう言った萎の前にいくつもの札束が見せつけられる。


「お礼。」

「は?」

「見つけてくれたお礼を渡そうと思って。」

直接言われた萎だけでなく、全員が絶句する。

「も、もちろんこれだけじゃない。この封筒分全部キミたちにあげるよ。」

そう言って近くにいるうぶぶに封筒を渡す。

中を見なくてもわかる。中身が本当にお金なら、相当な額だ。


「な、なんでそこまで…。」

「あ、やっと喋ってくれたね!これだけ大事なことなんだ、頼む、話を聞いてくれないか?」

あまりの衝撃に思考が働かなくなるなか、聡が口を開く。


「わかった。」


え?

「話してきて。30分後に迎えに来る」

「聡!?」

みんなが聡に注目する中うぶぶが何かを呟く…。そして、

「そうだな、行ってこい幽有。」

「はぁ?お前ら金で友達売るのかよ?」

聡とうぶぶは意思を固めたようだ。


それを見ていた男が幽有の手を引く。

「ありがとう、賢い友人たち。30分後にゆうゆくんに連絡させるとするよ。」

「ま、待って!」

走り出そうとした死王を聡が止め、うぶぶが愛壊の前に立つ。

唖然とする小学生達を置き去りにして、男と幽有は人の多い繁華街へと消えていった。





飲食店に入った男は、飲み物を注文して幽有と向き合っていた。

「ゆーゆくんであってる…よね?」

「はい…。」

「えっと、漢字?ひらがな?」

「幽に有るです。」


最初のうちは友達に売られたことでショックを受けていた幽有だが、賢い聡に何か考えがあったのだろうと納得し、ここに来るまでには多少落ち着いていた。

「あ、そういえば自己紹介をしてなかったね。テアだ。よろしく。」

「は、はぁ。」

そこで初めて幽有は男…テアを見た。


マッシュルームのようにふくらませた髪型は同じくマッシュルームのような白色をしている。だが、ところどころ一本だけ完全に緑色の髪があり、食べたら毒がありそうだ。

緑色の目は透明なメガネに遮られていて、知的な印象を与える。

長めの羽織ものをしていて、暑くないのかと不思議に思う。


「実はテアは『秩序』なんだ。」

おーおー、結構急に来るな。

こいつ自分の名前を一人称にするタイプか


……は?

「ま、『秩序』?」

「聞いたことないか?」

「い、いや、もちろんあるけど…。」

『秩序』とは、この世界の秩序を守るものだ。

人々が多種多様な特技を持つ中、秩序が保たれているのはこのためだ。


世界にはルールが定められている。

人を傷つけてはいけない。ものを盗んでは行けない。権利を侵害してはならない。

そういったルールは人々の生活を守るために存在している。

だが、そのルールを破るものは存在する。

平気で人を傷つけ、ものを盗み、責任はとろうとしない。


ただ、今の時代でそれをするものは人生を諦めたものか、よっぽどのバカだ。

なぜなら、罪を犯したものは投獄される。

たとえ、誰も見ていなくも、証拠がなくても、強力な特技を持っていたとしても関係なく。

頭に直接鳴り響く警告音を聞いた後、すぐに自分の無罪を証明しなければ、周囲の空中から現れる『壁』に取り込まれ、消えてしまう。


『壁』から逃れることはできない。今まで逃れることのできたものはおらず、消えた罪人の所在を知るものも居ない。

人々は罪人は投獄されたのだと判断する。

そして、それを成すものは社会の『秩序』を保つことから『秩序』と呼ばれるようになる。

正式名称は明かされていない。誰が、どのようにして罪人を裁くのか、これは世界共通の謎だ。


『秩序』は冤罪を犯さない。罪をどこからか見ていて、ルールに従って投獄する。

罪人がどこにいても、どのようにしても。



…それが、この目の前にいる軽薄そうな男だと?

「…証拠は?」

「ん?」

「お前が『秩序』だと言う証拠は?」

「テアって呼んで欲しいんだが…。そうだな…。あ、正式名称を教えてやろう!」

は?


何を言ってるんだ?

というか、それで証明になるわけないだろ。

僕だって答え知らないんだから。

「正義の騎士団だ!」

それは…嘘だろ。

こいつとんでもない嘘つきだろ!

『秩序』剣なんて使わねぇし!


「えっとぉ…、なんで僕にその話を?」

帰りたい…。

こんな奴に構ってられない…。


「キミの特技に関する話だ。」


…?

「キミの力を貸してほしい。」

「あのさぁ!」

声を荒らげてしまう。

「僕は特技もってないんだよ!なんなのさっきから!特技がない僕を珍しがってからかいに来たの?」

テアがボソッと「え、知らなかったの…?」 と呟く。それを見た幽有の怒りがさらに高まったところで、


不運としか言いようがないウエイトレスが来た。

頼んでいた飲み物が届いたようだ。

沈黙。

それぞれが居心地の悪さを感じる中、テアが気を使うように話す。

「と、とりあえず飲み物飲んで落ち着こ?」

そう言ってウエイトレスからトマトジュースを受け取ったテアがそのまま差し出してくる。


テアのことは気に食わないが、なんかこれで飲まずに帰ったらウエイトレスさんに申し訳ない。飲み物だけ飲もう。

…なんでトマトジュース?

幽有は一気にトマトジュースを飲み干し、そのまま席を立った。

「ねぇ、実は1週間前のことで話があって。」

「だから!…」

あれ?1週間前?

…。

…あった。

こんな不審者が尋ねてくるような。

いや、それ以上に異常なことが。

1週間前、僕しか知らないはずのとこが。


振り向く。

テアが笑ってる。

「思い出した?」

とても嬉しそうに笑っている。

ゾクリ。


なんでこいつは笑ってるんだ?

何か渡してくる。

「今、記憶が戻ったのがキミの特技。気が向いたら、その番号に電話して。もっと詳しく教えてあげる。」

名刺。

「ぁ」

幽有が何かを言おうとしたその瞬間。


死神が現れる。

幽有とテアの間に入り込み、幽有を守るように立つ。

「30分より少し前だし、場所教えてないよ?」

「知るか。」

「まあいいや、またね。幽有くん。出来れば今日中によろしくね。」

電話のことを言っているのだろう。


もはやなにも考えられない幽有置いて、テアが去っていく。

テアが見えなくなると、目の前の死神が溶けていく。

「大丈夫か?」

死王だ。特技を限界まで使って助けに来てくれたようだ。

否。死王だけではない。もともと繁華街にいたメンバーが次々と集まってくる。


「ごめん。幽有。あいつ相当強かったから、一旦様子を見た。」

「あ、うん。」

「特に目立った外傷はないみたいだけど…。」

「何を言われた?」

友は心配してくれている。だが、幽有はそれどころじゃなかった。


「ごめん。今日、先帰る。」

「…送るよ。」

家に帰る。

頭からテアの表情と言葉が離れない。

僕の特技…?気になる…。

でも、聡にもう関わらない方がいいって言われたし…。

でも、1週間前のあの日のことも気になる。


珍しく夜更かしをしていた。

多少眠くなってきた頭はもう特技のことしか考えられなくなって…。


「かけてくれてありがとう。でも、うーん。12時3分だよ?『今日中』じゃないけど?」

かけると、テアら直ぐ電話に出た。

誤字脱字あったらすみません。

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