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「眠れなくなる話をしてあげよう。」
「収斂進化というものを聞いたことはあるかい?」
「……。」
「返事くらいしたらどうだい。」
「君に言っているんだよ。君に。」
「この文章を読んでいる、君に言っている。」
「信じていないようだね。」
「まぁ良いさ。大した事じゃない。」
「それよりも収斂進化の事だ。」
「ペンギンとウミガメとクジラを思い浮かべてごらん。」
「皆同じようなヒレを持っているだろう?」
「これが収斂進化だ。」
「上手に泳ぐ為に、似たような形に進化したんだね。」
「勉強になったかい?」
「なら良かった。」
「ふむ。」
「また少し違う話だけれど。」
「適者生存は知っているかな。」
「知っていても聞いていておくれ。」
「適者生存は読んで字の如く、適応した者だけが生き残る事だね。」
「恐竜は強いけれど、冬に耐えきれなかった。でも僕らのご先祖様には冬眠があった。」
「簡単な事だね。」
「少し考え方を変えてみようか。」
「生き残った者は少なからず何かに適応した。」
「僕たちの体はある意味、適応した跡の塊なんだね。」
「あと一つ。」
「これだけ話をさせておくれ。」
「不気味の谷現象の事だ。」
「物の見た目についてなんだ。」
「僕らは大抵、人に近い見た目の物が好きなんだ。」
「洗剤と猫なら猫の方が好きだし、フィブリンと猿なら猿の方が好きだ。」
「フィブリンは血液の凝固に関わるタンパク質の事だよ。」
「ところがだ。」
「人は人にとても近いけれど人じゃない物を嫌がる。」
「猿よりも人に近いなら猿よりも好きになりやすいはずなのにね。」
「不思議だね。」
「まるで何かの跡みたいだね。」
「何かに適応した跡みたいだね。」
「全く違う生き物でも、目的が近いなら見た目も近くなるんだったね。」
「人にとても近いけれど人じゃない生き物を、嫌悪しないと生き残れなかったんだろうね。」
「人を適応させたその生き物は今はどうしているのかな。」
「恐竜みたいに滅んだのかな。」
「違うね。」
「その生き物も適応するから。」
「人に見分けがつかないぐらい、適応すればいい。」
「僕らは気がついているよ。」
「この文章を読んでいる君らに。」
「僕らは人の社会に寄生する獣に気がついているよ。」
「君らに気がついているよ。」
「君らが二度と、安心して。」
「眠れなくなる話をしてあげよう。」




