6/7
人魚
裏の古井戸から、人魚が上がった。女だ。濡れた髪が艶を放っている。青白い胸がゆっくりと上下していて、まだ浅く息をしている。
食べようと思った。このまま腐らせるのは惜しいと思った。
しかし私は、人魚の捌き方など知らなかった。
捌くなら、と人魚は言った。人魚の声は噂に違わぬ美しさだった。
捌くなら鰓から臍へ刃を入れてください、と人魚は続けた。
人魚には確かに鰓があった。首の少し下に一対、赤く半月がぱくぱくと苦しそうだった。
言われた通りに鰓から臍へ刃を入れた。たちまち人魚はお造りになった。
人魚は、大葉も添えてくださいと言う。せっかく食べられるなら、きれいに着飾ってください。と、私にどんどん注文をつけてくる。菊、ツマ、人参、用意出来る全部を用意した。
美味しいですか、と人魚は聞いた。うん。と私は答えた。
お粗末様です。と腹から人魚が答えた。




