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小さき者共の宴  作者: 帽子男/Hatt
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平和主義者

「これ、半分こにしませんか?」

必死になって探したのだ。そういうわけにはいかない。この薬草を今諦めたら次は何時同じ物を見つけられるか分かった物ではない。それに、一つでも全然足りないのだ。

「俺の村の為だ。悪いな。」

剣を抜いて杖を構える。杖はただの脅しだ。俺は魔法は使えない。

「じゃあ半分こにしないんですね?」

「そう言ってるだろ。これは俺のだ。」

「別に言ってないじゃないですか…。」

自慢じゃないが俺はそれなりに強い。今までも数々の修羅場をくぐって来た。きっと今日も乗り越えて見せる。…修羅場?なぜ今が修羅場なんだ?目の前にいるこいつは丸腰で、身構えもしていない。一方こちらはすぐにでも切り伏せられるように剣を構えている。それにこの男…女?いや、どっちだ?

中性的な顔立ちで、身長も高くなく低くない。体格は体の大部分を覆う砂よけのローブのせいでよくわからない。

「僕ら、争い事って嫌いなんですよね。」

いろんな奴らと戦ってきたし、出会って来た。大体の人間ってのは適当な分類に分ける事ができる。

賢いやつ、良いやつ、悪いやつ、強いやつ、アホなやつ、弱いやつ。すこし見れば予想が付くというか、なんとなくどんなやつかは雰囲気でわかるはずだ。なのにこいつはおかしい。そのどれにも当てはまらない。

いや違う。より正確に言うならば、そのどれにもあてはまるのだ。

「どんなに些細なことでも争いって良くないと思うんですよ。」

「それなら諦めて帰ればいいだろ。」

「そういうわけにもいかないんです。」

こいつと会話しているだけなのに、だくだくと汗が流れてきた。遺跡の入り口の方からの風が頬をなでる。俺の中の理性は言っている「今すぐこいつを斬り殺せ」と。本能は「逃げろ!!」と叫ぶ。2つの意識に板挟みにされて、俺は一歩も動けない。

「私たちの妹の使う分だけでもいいんです。少しだけ分けてください。」

喉が乾いてきちんと声を出せない。つばを飲み込もうとするが、口の中はすでにカラカラだ。うまく声を出せない。

「ふむ。貴方はこの薬草がほしい。我々もこれがほしい。薬草は一つしかないですし、我々は二人です。となると、どうすれば争わずに済むでしょうか。うーむ。」

目をつむってうなり始めた。今なら逃げられるんじゃないか?どうみたって油断と隙きだらけだ、今すぐにここから立ち去ればたすかるんじゃないか?

「薬草を増やす!…は無理ですね…。」

そっと音を立てないように剣を置く。この重たいのを持っていくわけにはいかないし、さやに治す時間も惜しい。そーっとしゃがみこんで剣から手を離す。そしてふと気がついた。薬草が手の届く場所にあるのだ。これをパッと掴んで持ち去ってしまえば良いではないか。

「では、僕らのほうを一人にしますかね。」

そうすれば俺の嫌いな争いは起きずに、ただ走って逃げるだけで良いのだ。いい考えではないか。

薬草に手を伸ばし、目線の先にいる俺の姿を確認する。まだ目をつむっている。

俺?そうだ。俺は…なんだ?僕は妹の病気を…村の病気を直さないといけないんだ。だから薬草を早く取って我々から逃げないと…我々?どうやって自分から逃げるんだ?なんだ?おかしい。いつから俺は我々で僕で私なんだ?

「素晴らしい考えだと思いませんか?これで平和的な解決です。そう思いますよね?俺?」

目の前の私の目が開く。その目には俺が写っていて、その目は俺の目でもあるのだ。

すこしもったいない気もする。いつもどおりこの俺と混ざっているが、そのたびに思うのだ。腕とか足とかも混ぜてしまうと、元通り全部一つずつになってしまうのです。

だからといって腕とか足とかがたくさんあるのも動きにくそうだとは思うのですが。

足りなくて困っている人もたくさんいるのですから、分けてあげればもっと世の中は平和になるのではないでしょうか。

思考がずれていってしましました。無事薬草が手に入ったのですからこの辛気臭い遺跡からはさっさと立ち去ってしまいましょう。さっきと同じことを考えてしまいました。

そういえば問題が一つ増えてしまいましたね。

「村には病気の人が沢山います。しかし薬草は一つしか無い…。さて、どうすればいいですかね。」

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