パート3
7. 個人的に、作家は、食うためだけに書く職業作家になってしまってはいけないと思う。
曲がりにも小説は、自己表現の手段である。
売れるものを書くのは職にするのであれば大切なことだが、既に売れているものを真似して、自分も熟れるようになるというだけでは、歴史も生まれないし、自己表現としても役不足である。
歴史を作り出した作品は、しばしば批評家の常識を超えたものだった。
不協和音を使いこなしたワーグナー、セリフを極限まで減らして、神秘的なストーリーを『2001年宇宙の旅』で作り出したキューブリック、世界各地の神話を参考にしながら、壮大なスペースオペラを完成させたルーカス。
皆、型破りで批評家からは不評を買ったが、人々からは受け入れられた。
型破りであること自体が目的化してはいけない。
しかし、歴史に名が残るような表現を行う人は、自己表現を突き詰めた結果、自然と型から外れた境地に達するのではないかという気もする。
せっかく小説を書くのだから、私はこの境地を目指したい。
8. テンプレ物は、どれもそれなりには面白いが、言うなれば便利に量産されたコンビニ小説である。
コンビニ弁当と同じで、それなりにはうまいが、かといって真に頂上に立つ何かではない。
文学産業を支えるためには、そのようなものが必要なのも否定しないが、それしか書けない作家は、十年もすれば忘れ去られてしまうだろう。
そこには、伝えたい自己の表現がないからだ。