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第八話 政策推進室の忘年会

なんとか間に合った…

更新時間は迷走中。

 

「やっぱ、アロマディフューザーは外せませんよ!」

「だよねー。あと美顔器?」

「…お前ら、自分がほしいものばかり選んでないか?」

「「それが幹事の醍醐味です!!」」


 喬木の突っ込みに仲良くユニゾンする木村と遥。来週金曜に室の忘年会を控え、ビンゴの景品探しに夢中である。


「それより木村さん。トップ賞、いろいろ探してみたんですが、ちょうどいいのがなくて。予算7000円って微妙ですね。やっぱり10000円はないと。」

「うーん、じゃ残念賞を…」

「今300円です。これ以上削れません、というか削っても不足分出ません」

「うーん、困ったなぁ。中間層をこれ以上減らすと…うーん、でも一人300円ずつ削れば…」


 今度は真剣に予算内での配分を検討する木村と遥に、鳥越が呆れたように声をかける。


「…いいですよ。合計であと3000円足しても。」

「いいの?!ほんと?」

「少し予算に余裕はありますし。」

「ありがとう鳥越さん、やっぱ素敵!」


 狂喜乱舞、とまでは行かないが、手を叩いて喜ぶ木村。呆れたように鳥越は言った。


「なにも出ませんよ。」

「豪華景品が出る!」

「確かにそうですが。木村さんに当たるかどうかは。」

「そっか。残念だー。」

「…当たることを祈っててください。」

「しつちょー、部下が冷たいんですぅー」

「全面的にお前が悪い。」

「ひどーい。もう、仕事してやる!」

「おう、頑張ってくれや。俺、さっきから待ってる」

「…すんません。」


 ***

 政策推進室の忘年会は、例年局長を交えて行われる。予算は局長のポケットマネーから15000円、それから職階に応じて各自の負担額がある。遥は2000円だ。更に、ほとんどビンゴの景品に消えるが、毎月お茶代として室員から徴収している積み立て額から、多少の補助が出る。金庫番は鳥越で、「今年の補助額は30000円」とお達しが来ていたため、その枠内で必死に考えていたわけだ。

 ちなみに一部のご意見をいただく方からは、お茶をだすと「茶なんかほしくない、どうせ税金無駄遣いして買ってるんだろ」と言われることもあるが、水道光熱費はともかく、お茶やコーヒー等は自腹である。大抵の課室でそのために積立てをしており、少し多目に徴収して忘年会等で還元する。


 それはさておき、こんな楽しい企画を「課長補佐よりむしろ宴会部長の称号がほしい」と豪語する木村が逃すわけもなく、二人でああでもないこうでもないと語り合うことになっている。木村の仕事は今それなりに落ち着いているらしい。


「残念賞はあれですか?定番の。」

「駄菓子詰め合わせ?コンビニでリボンつきで売ってるもんね(笑)」

「最近いろんな課で見かけますね、あれ」

「それだけじゃつまんないから、旦那経由でとっておきのを用意するよ!」


 木村の夫は他省に勤める同期で、海外出張がそれなりにある職場に配属されている。なんでも、ン年前に仕事で揉め事が起き、対立する省の担当者どうしとしてやり取りをしている間になぜか同志愛が発生、交際に発展したらしい。正直、何がどうなって結婚に至ったのかは理解できないところではあるが、大学の同級生や職場の同僚、先輩後輩ほどではなくても割によくその辺りに転がっている馴れ初めだったりする。


「…ちょっと怖いんですが。」

「えー、ちょっとした海外土産だよー。ネタ系の。」

「…それ、持って帰るの大変なやつ!」


 昼休みに夫とランチに行った木村が持って帰ったのは、いわく形容しがたい感じの大きなゾウの置物(木彫り)だった。


 ***


「えー、では、皆さんの日頃のご苦労に感謝すると共に、来年のご活躍とご健康、それに政策推進室の益々の発展を祈念して、かんぱーい!」

「かんぱーい!お疲れ様でした!」


 木村が満を持して探しだしてきた、有名銘酒が飲み放題の隠れ家的居酒屋で、局長を加えた政策推進室の面々は飲み会を開始した。


 180分飲み放題コース、5000円也。外れの方とはいえ、銀座でよくもまぁやっていけること、という値段設定だが、料理の味も悪くない。

 局長もフランクな性格であり、10人ほどのメンバーは適宜盛り上がる。


「うっ、これ開かない」

「貸してー。一升瓶はー、栓を引っ張るんじゃなくてー、栓を親指で支えて、瓶との間に少しずつ空気をいれてく要領でー。ほら。」

「おー!」

「…補佐、一升瓶の持ち方が堂に入りすぎです」

「うふ、プロっぽい?」

「というかただの飲ん兵衛…」

「ひどーい。はるちゃんーっ」

「すみません何も救えません」

「ひどいよう。…ちなみにスパークリングは栓を抜くんじゃなくて栓を持って瓶を回すと抜けるよ!」

「全然懲りてないじゃないですか。」


「もう一本「川音」の一升瓶いれろ!この幻の酒、ここで飲み尽くすんだ!」

「いやそんな気合い入れなくても…まぁ、いいや、すみませーん、川音くださーい」

「ご注文ありが…えっ、もう呑んだんですか?」

「ええ、すっからかん。ほら。」

「うわ、ほんとだ。川音一本入りまーす!」


 座がほどよく温まったところで、鳥越が音頭を取りビンゴゲームをはじめる。局長がいるので、解放モードではなく比較的仕事モードのほうだ。


「では皆さんカードは行き渡りましたか?補佐がスマホアプリで出た数字を読み上げますので、リーチ!ビンゴ!は大きな声で申告してください。」


 ビンゴの結果、なんとトップ賞は遥。自分で選んだ特選海鮮セットが後日送られてくることになった。お正月の準備はばっちりだ。ちなみに年末年始は混むし高いので帰省はその次の連休の予定だ。


 美顔器は無事に(?)実は自慢の美人の奥さんがいる鳥越に。ハンドクリーム詰め合わせはいい感じのお付き合いをしている彼女がいる若手の桝谷に、とそれなりに落ち着くところに落ち着く。


「さぁ、最後は残念賞ともうひとつ。大山さんと木村さん、どちらが残念賞でしょうか?」


 鳥越がいまいち乗れていないことに気づき、遥は途中から実況とビンゴの数字読みの両方をを買って出た。残念賞を自分で用意した木村は、結構必死に回避を祈っている。


「つぎはー、5!」

「やったー!ビンゴ!!」


 祈りが通じたか、木彫りのゾウは無事大山の元に落ち着くこととなり。


「うわ、これはひどい。めちゃめちゃ重いし。」

「旦那の課でウケ狙いで買ってきて、結局二年ほど持て余していたらしいので…」

「そんなもん持ってくるなよお前…」

「えー、でもー、おまけの民族衣装人形のUSBメモリーは実用的…」

「首が取れるの怖いだろ!」


 開封後、ある意味大ウケ(?)するのであった。


 ***

 翌朝、遥が部屋のドアを開けると、目の前のかなり目につく胸高の書類棚の上に、


 どーん。


 と、置いてある書類を押し退けるように件の木彫りのゾウの像が鎮座ましましていた。


(…お、大山さん。)


 まぁ、好意的に解釈すれば文鎮がわりになるような気もしなくもない。かなり無理があるが。


「お。」

「…これは。」


 出勤してきた面々は一瞬驚き、そしてにやにやしている。なんせ、場所のせいで「わたしは政策推進室のマスコットです」といいたげな雰囲気なのだ。妙に写実的な、高さ30cmの木製のゾウが。


 出勤してきた大山を訊問したところ、USBメモリーはともかく、象は処分に困って本多に押し付け、本多も家に持って帰りたくなくて、解散後一度職場に立ち寄り置いて帰ったとのことで…


(やっぱり本多さん訳わかんない。)


 それを1番目立つところに何の気なしにおいておく本多のセンスに頭を抱える遥であった。

室長のツッコミを「それより」扱い。課長補佐を訊問。

遥さん地味に大物です。

そして歓迎会との落差…


大山さんと本多さんは第四話で出てきた他の班の人たちです。何だかんだで木村さんとはそれなりに仲良くしている模様。


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新連載はじめました。更新は不定期になりますが、よろしければこちらもどうぞ。
「Miou~時を越えて、あなたにまた恋をする~」

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