閑話 第20話直前・座談会スペシャル
今回はお遊びです。
「木村さん、特別室用意しましたから!」
「わざわざ別室ですか。」
「なんせ、メタ的座談会ですから。」
「何それ?」
「この部屋を出ると、これがフィクションのお話だとか、作者がそろそろネタ切れしてるとか、そういう裏事情は全部忘れます。」
「…今なんか聞き捨てならないセリフが聞こえたような?」
がしがしと頭をかく木村に、にっこり笑って遥が内線電話の横にぶら下がっていたメニューを渡す。たぶん洋風のラグジュアリー空間を意識したと思われる豪華なインテリアに、年代物の内線電話と出前っぽいメニュー表がとてもミスマッチだ。
「細かいことは察してください。私たちが政策推進室に来てから約一年経って、イベント1周させたらそろそろけっこうネタが尽きてきたらしいですよ。」
「…じゃ、完結させたらよくない?」
「それが、官庁訪問とか、法制局審査とか、お盆休みとか、それなりにまだ書きたいことはあるんですって。でも書いてみたら面白くない、ただでさえ最近学習漫画ぽくなってきたのに…と頭を抱えてるそうです。」
「うーわ、無計画。」
「特に、日常回のネタがないらしいです。この前はご主人にネタ提供してもらったとか。」
「行き詰まってるねー、あの人。」
さっくり斬り捨て、どこからか登場した注文品のホットコーヒーを一口飲む木村。コーヒーが苦手な遥の前には、甘さ控えめのジンジャーエールが置いてある。
「だいたい、私たちもキャラ変わってきましたしね。」
「ここ、コーヒー美味しいね。ソファーも座り心地いいし。…鳥越さんの感情読めない設定とか、たまに忘れてんじゃない?」
(ぎく。)
「…なんか聞こえました?」
「天の声システムがあるらしいよ。電話のとこにマニュアル置いてある。」
「いつ読んだんですか。」
「さっきー、コーヒー頼んだときー」
「なんというか、早業ですね。」
「さすが私、というか、極端に私、超人設定されてるような。」
「そういうところと、単なるボケ扱いされてるところが木村さんの場合は共存してます。」
「便利だねー。」
今度はチョコバーを呼び出してぽりぽりかじる。会場を用意した遥よりよほど馴染んでいる気がするのは何故だろうか。
「だいたい、異動あるの忘れて書きはじめるってどうなのよ。夏になって慌ててるんでしょ?」
「そうなんですよね。あれ、誰か異動させなきゃ!って焦ってるとか聞きましたよ。」
(結論からいうと、そんなにメインキャラに異動はない予定でーす。)
「…雑!」
「いいんですかね、そんなんで。」
(タイミングによってはそういうときもあるので大丈夫。それより出張ネタが使えないのが痛い。)
「…私、非常勤ですもんね。」
「非常勤さんはさすがに出張しないなー。」
(あと、さっきも出たけど法制局審査とかも、非常勤さんが参画するとさすがにマズイ。)
「非常勤、省によっては学生バイトですからね。」
「あぁ、若手男子がほぼ写真「ピーーー」
-不適切発言ヲ規制イタシマシタ。-
「…喋れませんでしたが?」
「…規制されたそうです。」
「…便利だな、おい。」
「木村さんて、口悪いですよね。」
「今更?」
RRRRR
「はい、異次元室です。…木村さん、局長室呼び込みです。」
「繋がっとるんかい!」
思わず突っ込む木村に、何が?と顔だけで返事する遥。
「時間は同期してますから大丈夫です。」
「ここ出たらいろいろ忘れるんじゃなかった?」
「扉から出て3歩歩くと、コンビニに行ったけどなにも買うものがなくて戻ってきた、という記憶に変わります。」
「適当だなー。呼び込みはどうなったんだ…」
「鳥越さんから再度伝えて貰えるはずです。」
「なんかご都合主義ー。」
しぶしぶ、という顔でコーヒーを飲み干して出ていく木村と入れ替わりに、おっかなびっくりといった体で喬木が室内に入ってくる。
「おわっ、なんだここ。木村が関係なさそうな扉から変な顔して出てきたから覗いてみたら…なんか無駄に豪華なセットだな。」
「えーっと、お時間少しあります?何飲まれますか?」
「…ほうじ茶アイスで。あとプリンアラモード。」
注文と同時に、ぽん、と今度は音をたてて登場する注文品。ご丁寧に煙とキラキラのエフェクトまでついている。相手を見ているのか、びっくりさせたかった様子だ。
「おっと、びっくりした。なんだここ。」
「深く考えたら負け、という感じでしょうか…」
「よくわかんねーな。」
「とにかく、作者に言いたいことがあれば今のうちにどうぞ。」
「…俺の描写がひどい。」
(愛です!)
「いちいちびっくりさせるなあ。アレ作者か。」
「そのようです。」
「なんか疲れるな…」
(遥さん、地味に常識人の喬木さんには、なかなか辛い状況かもです。)
「なんか同情されてますね…」
「そうだな…」
(記憶は改竄しますが、時間は遡及しないので疲労は蓄積されます。)
「役所用語使うなよ…」
(役所用語ってより、漢語?)
「もういい…」
なんだかんだでプリンアラモードを綺麗に平らげてのち、しおしおと立ちあがり出ていこうとし、扉の前でふと振り返る喬木。
「そういえば、鳥越はいいのか。」
「呼びたかったんですけど、こういうところでは固まってしまって、話してくれないかな、と。」
「まぁな。まだ、俺の前でも固いしな。」
「ハイパーモードの鳥越さんはすごく面白いですよ。特に家族回りの話。」
「そうか。どっちかが異動する前に聞きたいな。」
今度こそぱたん、と扉が閉まる。
「ということで、目先を変えて座談会にしてみましたがいかがでしたでしょうか?引き続き、我々のどたばた官庁生活をお楽しみに!」
(よろしくお願いします!)
1回やってみたかった(笑)
次回は通常更新です。




