あなたと映画を。#1
ここからはチームhappy endsでお送りします。ハルショカからスタートですが、やや順不同。
1.『うそだよダーリン』より
今日の私たちは別行動。それぞれの友人と映画鑑賞することになってたから。
「あ」
「あれ?」
別行動の筈なのに、シネコンのロビーでばったり遭遇。映画館なんてたくさんあるのに、同じシネコンの同じ時間にいるって、なんかすごくない?
しかもよくよく確認したら、なんと同じ映画を観るって分かって、四人で妙に盛り上がったまま、横並びの座席を指定した。
あなた、あなたの友人、私の友人、私の並び。中の二人は初顔合わせなのに、映画の趣味が似てるとかで会話に花が咲いている。――いいなあ。私も、あなたとおしゃべりしたいなあ。
顔では笑いながらしょんぼりしてたら、上映が始まる少し前にあなたが突然立ち上がった。
「はい、みんな左に詰めて」って謎の指示。三人して頭の周りに『?』マークを出しつつとりあえず素直に従うと、私が座ってた席に、あなたが座る。左端のお友達の方に向かって「あとはカップルタイムでいいだろ?」って。お友達もそれを受けて「そうだな」、だって。
私と友人は顔を見合わせてちょっと照れくさそうに笑った。それから、あなたと手を繋いで、映画のはじまりを待った。
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2.『春先に逢いましょう』より
アウトドア男子の誠二さんと断固インドア派の私が、双方愉しめるデート。それが、映画鑑賞だ。
映画なら、彼寄りの『山岳サバイバルドラマ』も楽しめる。山で遭難しても、渡したロープから谷底に転落しても、リアルじゃないから怖がらずに安心出来る上に、体も駆使しないし。
そう思って、誠二さんに誘われた映画を観に行ったんだけど。
「!」
冷たい風が、髪を嬲る。
「!!!」
雪が、こちらに向かって雪崩れてくる。4Dだなんて、聞いてないよ……!
上映後、涙目の私に誠二さんが恐る恐るの態で「……夏南、怒った?」と聞いてきた。
「怒ったよ!」
「ごめん。どうしたら許してくれる?」
そのかわいい云い方に、本当なら続けて彼の苦手なジャパニーズホラームービーを観るの刑だったところが、キス一つで許してあげちゃった私って本当に誠二さんに弱いな。
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3.『時を駆ける寅ちゃん』より
「じゅんじゅんコレ!」
自称デートしないと死んじゃうイキモノである寅ちゃんと土曜日、訪れたシネコン。ずらりと並ぶ上映中の一覧から一体何を選ぶかと思ったら。
「俺ねえ、この主役の俳優さんが好きなのー」ってよりにもよってヤクザが主人公の昭和の日本映画(デジタルリマスター版)をにこにこ顔で指差すとは。 ――せっかくデートだからラブストーリーかラブコメ要素のあるハリウッド映画がいいな、でも寅ちゃんはアニメとか観たいかな、なんて思ってた私の想像のはるか上をゆく、そのチョイス。
「ええー……」
あっからさまに、イヤそうな顔をしてみせたけど、寅ちゃんも珍しく引かない。
「じゅんじゅん、お願い」
上目遣いのきらきらお目目でそれを請うのは卑怯だ。――結局押し切られて、由緒正しきヤクザ映画を観た。
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4.『契約満了日』より
初デートって、大人でも緊張する。
せっかくのデートが流れてしまわぬように体調管理に気を付けて、服とメイクが気合入り過ぎないように吟味して、そして迎えた当日。――待ち合わせ場所のシネコンのロビーにて、初めて見る片岡さんの私服姿に、ときめきすぎて顔が緩んでしまいそうなのを何とか堪えて「こんにちは」と声を掛けたけれど。
「こんにちは」
こっちが必死に普通を装っているというのに片岡さんたら仕事の延長みたいにしれっとしたままだ。そんな通常運転も、初デートの今日ばかりは憎らしい。
「映画、何観ましょう?」
やんなっちゃうなあ、と心の小っちゃい自分に少々落ち込みつつ明るく聞いてみたら。
「予定変更」
「え?」
私の手を繋いだままロビーを突っ切りながら、片岡さんが淡々と云う。
「お茶しよう。まずはお仕事モードじゃない私服の椎名さんをじっくり堪能したい」と、やっぱりそんな台詞を云っているとは思えないそっけない表情。――今はそう見えても、いつかは些細な変化も読み取れるようになれたらいいな。
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5.『ハングオーバー・ダンディーズ』より
洋介さんが「なんかチケットもらったから、誰かと行って来れば」と、少女漫画の実写化映画の前売り券二枚をこちらに差し出してきた。
「一緒に行こう、じゃないのそこは」
そうつっこんだら、「残念ながら俺の守備範囲外」と首を竦める。確かに洋介さん、『オレのものになれよ』って壁ドンするような高校生の恋愛映画を楽しめる人じゃないもんね。
「んじゃいただくね、楽しみだなー!」
それからあたしはこの映画の見どころを、原作で知っている範囲であれやこれやと挙げてみたのだけど、それに年上彼氏が食いつく事もまたなかった。そりゃそうか、壁ドンなんて、きっとたっくさん色んな人にしまくってるもんね、今さらそれ位でときめいたりしないか。この人恋愛経験値無駄に高いんだもんね。ふんだ。
軽くムカつきつつひとしきり語り尽くして、洋介さんが淹れてくれた香り高いジャスミンティーをごくごくと飲み干してマグを置いたら、即座に手を取られて。
「映画観て、イイシーンあったら教えて。もっとすごいこと、若菜にするから」って色気ダダモレの洋介さんが『すごいキス』を仕掛けてきたので、語ったの無駄じゃなかった、かも。
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6.『花とコーヒー』より
水曜の夜は、徳丸君のお店の定休日だ。なので、頑張ってなるべく早く上がるようにしている(一応、ノー残業デーだし)。彼のおうちで待ったりすることもあるし、最寄りの映画館は『水曜はどなたも一律一〇〇〇円』の日なので、今日のように二人で映画を観る事もある。
待ち合わせ兼夕食であるモスの窓際席で座っている、人待ち顔の徳丸君をガラス越しにこっそりと堪能してから店内に入り、「おまたせ」と声を掛ける。彼は席の横に立ってる私を見上げると、今日の仕事のストレスや疲れが全部が吹き飛んじゃうんじゃないかってくらい爽やかに甘やかに笑ってくれた。
急に騒がしくなった心臓を知らんふりで「私もなんか買って来るね」とレジへ向かおうとしたら「桂さん、待って」と緩く掴まれた手首。
「ポテト、桂さんの分も頼んだからね。あつあつは苦手でしょ」
「――ありがと」
私がモスのポテトが大好きで、でも作りたてを提供してくれちゃうからふうふうしてもなかなか食べられないのが難点、と前回来た時にもらしたことを、覚えてくれててちゃあんとフォローしてくれて。
この人とおんなじくらい、優しくなりたいな。そう思って、ポテトの最後の一本を「どうぞ」ってさしあげた。
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7.『月が欠けても』より
「今度の休みに、映画でも一緒に行く?」
そんな、口にしたら三秒足らずの言葉を何日も伝えられずに、大苦戦している。
誘う相手は、安河内。
焼肉行こうだの飲みに行こうだの、色っぽくないお誘いなら数知れず。でも、『私のことを多分好きで、私も好きになりたい相手』としてきちんと向き合って誘うのは、多分初めて。
いや、映画なんて友達としても観るよ。分かってる。でも。
――多分、もうただの友達として、あいつを見られない。
ドキドキする。手が震える。何回深呼吸しても、駄目。
電話じゃなければとメールを開いたけれど、文章を何とか組み立てては「あああああ!」って全消しする、の繰り返し。
駄目だこれ以上は絶対無理と諦めて携帯を手放して、背後のベッドにへちゃっと頭をあずけるけど。
直後に届いたメール。――あっさりと、『映画でも観に行くか』なんて、気軽に誘わないでよ。
自分に出来なかったことを軽々やられて、なんかムカついたので『行かない』って速攻で返信してから「――バカか私は」って低―い声で突っ込んで、慌てて『やっぱ、行く』ってもう一度メールした。
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8.『暫定的運命の人』より
さて、念願かなって真壁君の彼女になった私だけど、ここのところずっともやもやしてる。だって。――真壁君たら、手を繋ぐ以上のことをちっともしてくれない。
ってなんか欲求不満の肉食女子みたいだけど、そんなんじゃない。ただ、キスしたいなあとかハグしたいなあとか、そう、思ってるんだけど。
いいタイミングになる時ってあるじゃない。放課後の教室に二人でいて、廊下にも誰もいない瞬間とか。駅の柱の陰に立ってる時とか。フラグ立ってるね! っていうそれを、真壁君はあっさりと容赦なく折りまくる。だからもう、こっちから攻めることにしたよ。
コマ撮りアニメの映画を見に行こう。そう誘ったら、真壁君は私の不埒な計画なんて気付かずに二つ返事で乗ってくれた。
そして、当日。
照明が落ちて予告編が始まると、二人の間の肘掛けに置いていた真壁君の大きな手を、上から重ねた手でギュッてした。それから続けて、ほっぺたにちゅ、ってした。うーん、満足満足!
私が自分に課したミッションを無事にクリアしたその達成感に浸りつつ座席で寛いでいると、「羽鳥を怖がらせちゃいけないと思って、俺はずっと自重してたのに……」ってぶつぶつ文句云ってから、真壁君は長らく待ちぼうけしていた唇にやっとキスをくれた。
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9.『long,slow,distance』より
部活が休みの日、長距離チームみんなで映画を見に行くことになった。
高校生が三人以上なら学生証提示で割引になるシネコンで、皆してでっかいサイズのポップコーン買って。思わず自分もLサイズにしちゃったけど、食べきるのかなあコレ。不安になって、バケツのようなそれを抱えながら座っていたら。
「余ったら、俺が食いますよ。四次元胃袋なんで」って、四月に加わった後輩君が、そう云ってくれた。
「ほんとに? お任せしちゃっていい?」
「任せてください」
そうやって、私より年上みたいに優しく笑うから、ちょっとだけ心臓、誤作動。
違う違う、恋じゃない。まだ違う。――まだ?
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10.『誘惑ビフォー/アフター』より
スーツの腕にツッと指を這わすと、中川君は喜ぶどころか怯えた顔をした。
「宮迫、」
ここ、外。って云いたいんでしょ、分かってる。にっこり笑って見せたらもっと怯えるってどういうこと。
「宮迫、」
「だーいじょーうぶ、こんなとこでディープキスする趣味はないって」
「……」
疑ってるな。無駄に恋愛センサーが働くようになっちゃって。でもほんとにしないよ、ここではね。
「そろそろ、中入っておかない?」
「そうだな」
声を掛けたら、あからさまにホッとした顔しちゃって。考えが甘いったら。
今日の映画鑑賞デートで手配したのはカップルシート。二人掛けのソファに座っちゃったら、私の理性がどこまで持つかは保証できないなあ。
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11.『追風参考少年』より
駅に貼り出されていた映画のポスターを、「いいなぁ」と眺める彼女。でも見ていたそれは。
「――怪獣映画、観たいの?」
「違います! 単純に、映画、観たいなって思って……」
「じゃあ、行こうよ」
「行きません」
受験生だもん、と口を尖らす彼女は真面目だ。まだ本格的な受験シーズンじゃない今、二時間息抜きするくらい、きっと誰でもやっているのに。――まあ、そこも彼女のいいところの一つだって知ってる。だから。
「うん、じゃあ俺も来年の春まで映画断ちしようっと」
「え、やだ、先輩は観てくださいよ」
「いいの。これ位しか、出来ないからさ」
今まではお茶がてらお勉強を見る、なんてお題目で会えてた。でもこれから先は塾通いが彼女の優先すべき事項だろう。となると、俺が彼女にしてやれる事なんてほんとに少ない。気持ちに寄り添うくらいしか出来ないなら、それをしたい。
――ああ、今日ももう帰さないといけない時間だな。帰したくないけど。そう思っていると、彼女から手を繋いできた。
「春になったら、映画たくさん観に行きましょうね」
「ん、そうだね」
約束を交わす。映画にデートに、色々。そんな他愛のない話でとびきりかわいく笑う彼女の横顔に、しばし見惚れた。
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12.『女子ならみんな知ってること』より
コドモか! って云われちゃうのがイヤで誰にも教えたことないけど、大きい音とかストロボとか苦手だ。だから、コンサートや映画に行くのは、楽しみ半分、心臓に悪いドキドキ半分のミックスってかんじ。それでも、安田君と映画を観に行くことになって、楽しみの割合がどんと増えた。映画も、どうやらうるさいっぽいものじゃないみたいだし。
――って。
ほんと、私って見通しが甘い。大甘。
いくら見る映画がしっとりしたものだとしても、予告編までしっとりなはずないじゃない!
大きなスクリーンで映し出されているのは、ド派手なアクション映画の予告。爆発音のたびに、びく! ってしてしまった。――もう、なんでこうなんだろ。
せっかくのデートなのに、どんどん落ちていく気持ちと頭。
でも。
おっきな手がよしよしって私の頭を撫でて、それから肩をぽんぽんってして、最後に肘掛けの上でかたくグーにしてた手を、ふわんと包んでくれた。
予告が終わって静かな本編がはじまってもその手は離れて行かずに、最後まで私を包んでくれていた。
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13.『アイなんて』より
このところ、私の現場は東北、八雲さんは東京。せっかくプロポーズしてもらったのに、あれから思いっきりラブに浸れる日なんてまだ数えるほど。それでも。
指環を、拵えてもらった。気持ちに、一本太い芯が通った。
なのに、それじゃ足りないなんて思ってる自分はなんて贅沢になっちゃったんだろう。
毎日窒息しそうなほど愛して欲しい、訳じゃない。そんなの窒息して気持ちが死んじゃう。
会いたいと思った時に、会いたい。
そんな、子供みたいなきもち。
お休みの日にまでホテルの部屋に籠っていても気持ちが鬱々するだけだから、前々から見たいと思っていた映画をチェックして、最寄りの映画館へ足を運んだ。恋愛映画を観て幸せをおすそ分けしてもらって、現実を思い出してはちょっと心に影が差して。
――会いたいけど。今から東京行ったとして向こうが休みとは限らないし。
指環をぎゅっと握りこむ。自分の強さと弱さについて考える。弱気なのはきっと、ホームから遠く離れたところへ遠征してるからだ。
よし、八雲さんの社長にメールして、うちのおネエ社長の楽しい近況でも教えてもらおうとロビーの片隅で携帯を取り出すと、目の前で「あず」って声が聞こえたような気がした。――――――えーと、会いたさが募って、脳みそバグったかな。
おそるおそる、顔を上げる。髪の毛、いつも通りの、そのてっぺんのとこだけくくってるスタイルの恋人。大好きなひと。
「八雲さん?」
「おう」
「なんで、こんなとこに」
「お前んとこの社長から電話あったんだよ。『そろそろあの子電池切れる頃だから、休みの日に顔見せに行ってやんなさいよ』って、なんであのおっさんお前の今日の動向まで知ってんだよ、おかげでこうして会えたけど」
わざわざ、社長の声真似までして。それどころか、口髭を弄る真似までして。
笑っちゃうじゃない。なのに、出てきたのは。
「やくも、さん」
「んー?」
「あいたかった」
「知ってる」
人目も気にせず胴に巻き付いて、弱音と本音を初めて素直に吐いた。そんなの、云えない人だったのにな。
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14.『水路にて』より
「映画行くぞ」
行かないか? じゃなく「行くぞ」って。佐野先輩は、まるで研究会の活動みたく云う。
「お前何観たい?」
「え、決まってないんですか」
「そうやって『人を誘っておいてノープランだコイツ』みたいに見んな! 高崎に合わせてやろうっていう優しい彼氏なんだぞ俺は」
「本当に優しい人は、自分で優しいとか云いませんから」
憎まれ口も、変わらない。でも。
「ほら」と差し出された手。繋いで歩くのが、当たり前だと云わんばかりの開き直りっぷりに、なんでかこっちの方が恥ずかしくなる。
構内で手繋ぎなんて、後から色んな人に冷やかされそう。そう思っても、繋がないって云う選択肢はなかったんだけど。
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15.『魅惑・当惑』より
『コラボ?』
「そう、映画の中で、主人公の男の子が着てるんだって」
近々店頭に並ぶ数量限定のパーカーは、とある映画とコラボした商品だ。人気の小説の実写化で、人気の若手俳優さんが主人公なのでお問い合わせもそれなりにあるということを、電話口で葛西君とつらつら話す。
「なんて云ったっけ主演の人の名前」
『俺も分かんない』
「んー、思い出せない! ドラマとか出てて、かっこいい人なんだけど」
『だめ』
「なにが?」
『他の男のこと、かっこいいって云ったらだめ』
――なんでそういうかわいいこと云うかな。
ちらりと時計を見る。一〇時過ぎ。
「葛西君のせいだからね」
『え、なにくららさん、』
通話を切って、大急ぎで『今から会いに行く』ってメールを送る。タクシーを呼んで、身支度とお泊りの支度をして。
葛西君のおうちに着いたら、いつもあなたが云う台詞を、今夜は私が云うの。
「来ちゃった」
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16.『恋せよセニョール』より
会場に戻ったら、ちょうど結果発表と講評の時間だった。日高君のチームは優勝こそ逃したものの、「今はまだ粗削りだけど、どんどん面白くなりそう!」ってゲストのダンサーさんから講評をいただいてた。でも、いつも本気で一番を狙いに行ってる日高君は、今日もちょっと悔しそう。
コンテストが終わると、みんな記念撮影やら撤収やらを手早く済ませて、夜の営業準備を始めたクラブを速やかに退出する。私も日高君の後ろを付いて歩いて外に出たけど、確か終わったら彼は打ち上げに参加するって云ってた筈。そう思って、「じゃあ、お疲れ様」と声を掛けたら、「待て」と引き止められた。
「真城、この後は?」
「家、帰るだけだけど」
「帰るの夜になっても平気?」
「連絡入れれば大丈夫」
「――じゃ、行くぞ」
てっきり打ち上げに私も参加するのかと思いきや、何故か仲間から離れて、足の痛い私に合わせてくれたゆっくり歩きでどこかへ向かって歩いて行く。
そうして着いた先は、ミニシアター。
「日高君」
「こういうの、好きだろ」
――今日、帰る前に一人で観ようと思ってた、ここでしかやってない映画。
私がびっくりしている間にチケットを買って、「ほら」って手を引いてさっさと席に着く。でも。
「――打ち上げ、いいの?」
「あいつらとはどうせまたすぐ練習で顔合わせるし。それよりたまには俺だってデートしたいんだよ」
「……!」
被ってたベースボールキャップをずり下げて顔を隠したまま、日高君がそう云うから。
映画が始まるまで私はずっと赤い顔しながら、何度もその言葉を再生してた。
15/12/08 一部訂正しました。