弓も始めてみましたっす。
ここの警備隊詰所に入るのは2回目か。
俺が馬鹿にからまれるとここに来なくてはならない場所なんだな。
決闘のシステムは聖騎士団のジャクソン団長に詳しく教えてもらっていた。
奴隷救出作戦の後に警備隊本部にジャクソン団長とともにトリーの操縦するゴーレム馬車で帰るときに教えてもらっていたので助かったな。
流石のジャクソン団長も教えてすぐに使うとは思ってもみなかっただろうけど。
しかし心配していた通り『権力を振りかざしてくる人間』には反発してしまう。
俺自身の少年時代の経験も関係してきてると思うのだが、権力をかさにして暴力を使って力づくで解決しようとしてる人間に対して、俺自身が同じ事をして解決してるだけの事なんだけどな。
毎回こうしてるのに正義のヒーローになってる自分の噂にビックリしていた。
今日のこのときから俺の噂は『大量虐殺者』になるんだろう。
正義のヒーロー=大量虐殺者ってのは定番中の定番なんだけどなぁ。
非常に残念なんだが俺は今日からは食料品市場は俺は歩き回らない方が良さそうだ。
首都シーパラに行く準備を進めておいた方がいいかもしれん。
警備隊の隊長の作成してる調書に応答して、調書に書かれている事を確認してサインをする。
調書作成作業中に俺の並列する思考の部分で自分の今日の行動と今後の事を考えていた。
調書も終了したので歩いてアゼット迷宮へ向かう。
念輪でアイリに話しかけるために回線を開く。
「今、調書の作成が終わって警備隊の詰所から外に出たところだよ。みんなはどこまで行った」
「今は大森林の街道をキャンピングバスで走ってるところね。後20分ぐらいで到着するかな」
「俺もヨークルの外門を出たらいつものアゼット迷宮近くの場所に転移するからそこまで遅くはならないと思うよ」
「到着してからしん君を待ってたほうがいい?」
「ああ、待っててくれ。一緒にダンジョンで狩りをしよう」
「そう、それならキャンピングバスの中で待ってるわね」
ヨークルの都市の中をおにぎりを食べながら歩き、食べ終わったら大森林の中に入り装備を整えるために防具に着替え腰に天乃村正を帯剣し、いつも転移しているアゼット迷宮近くの場所へ転移魔法で移動した。
アゼット迷宮のゴーレム馬車駐車場で周囲の気配を探ったが、どこにも人影らしきものもなかった。
ダンジョンアタックを開始するには中途半端な時間なんだろう。
キャンピングバスのドアを開けて声をかける。
「みんなおまたせ。さぁ、チーム早乙女遊撃隊のダンジョンアタックを開始しよう」
「とうちゃん早かったね」
チームのみんながゾロゾロ降りてくる。
全員降りたらキャンピングバスをアイテムボックスに入れる。
しかし『チーム早乙女遊撃隊』・・・まさしく遊撃隊に相応しくなってしまったな。
前衛職『シールダー』のアイリと後衛職『魔道士』のクラリーナ。残りは俺『剣客』・ミー『ランサーorレイピア』・るびの・マリア・セバスチャンなので2人以外は全部『スピードを使って敵を仕留める遊撃タイプ』ばかりになってしまったな。
この際だからシーフのナイフ使いとかアーチャーなんかも集めて遊撃を極めるか?
自分でアーチャーでもやってみようかな。
某狩りゲーでも一時期は弓を使っていたしな・・・今の神の創り手スキルがあれば、折りたたみ式の『ガシャン』って展開する弓が作れるかも。
ヤバイ俺の中で厳重に封印したはずの『中二病』を刺激してしまったな。
「しん君、そろそろ転送部屋なんだけど・・・どうかしたの?」
「悪いなアイリ。考え事をしていたよ・・・転送部屋か。今は13時半・・・今日は予定通り地下6階でミルクさん狩りに午後の休憩時間までの2時間は固定しよう。移動の並びはそうだなぁ・・・ミー・るびの・クラリーナ&アイリ。俺は最後尾。敵の捜索はるびのの担当でどっちの方角からどれだけの数の敵が来るか声に出して報告してくれ。アイリはクラリーナの護衛任務だな」
「うん。とうちゃんわかったよ。任せてね」
「俺はバックアタックに備えるよ。それと、ちょっと時間を貰っていいかな? 俺は作りたいものが出来てしまった」
「しんちゃんの作りたいものって何?」
「武器で『弓・ロングボウ』だな。ちょっとやってみたいと思ってしまった。弓はミスリルをオリハルコンコーティングで強化。弦は龍糸を寄り合わせて魔力であまり伸びないように固定化すれば、結構マジな弓が出来そう」
「しん君、それならば私にも何か作って欲しいな、双剣とか一時期あこがれたな」
「それは今日はちょっとやめておこう。いきなり実戦での練習は流石におすすめできないよ。シールダー特化型のアイリの場合、防具から作り変えないといけなくなるからな。今度防具も一緒に作ってあげるって事で」
「やったね。それじゃあまずは師匠ゴーレム達と練習だ」
「まぁ、ゆっくりとだな。さぁ地下6階に到着だ。これからは先程の予定通りミルクさん狩りに行こう」
俺は戦闘はチームのみんなに任せて、おやっさんが作ってくれた自分の鎧を、弓も撃つ事が出来るように所々をワイバーンの革で補強して滑り止めなどをつけていく。
背中側に折りたたんだ弓を上から取る事が出来るよう・・・いらないな。アイテムボックスから直接取り出したほうが早いし邪魔にならない。
矢もそうだな。矢筒も要らないファンタジーならではか。
アイテムボックスから直接出し入れするんだから折りたたみ機構もつけなくてもいいって事に気付いた・・・今更だけど。
それに俺のこの規格外スペックだと弓力が100kgだろうが1tだろうが軽々引くことが可能だし、その弓力から速射で正確な狙いもつけられる。
ミスリルの金属板を何重にも重ね合わせてオリハルコンでコーティング。
龍糸を寄り合わせて使った弦を張って製造した。
長さは1.2m。
ロングボウとしては小さな部類に入るが俺の170cmという身長を考えて取り回しのよさや扱いやすい長さに作ったらこのサイズだった。
矢を100本ほど製造してアイテムボックスの入れておく。
そこまで要らないだろう。転送魔法で取り寄せれば何回でも打ち込めるからな。
弓力は300kgにして矢は全金属製でオーガ鋼で製造した。
試しでひいてみたら弓力なのかパンパンと音が凄いので、弓の音を低減させるために工夫をいくつかつけたが・・・途中で諦めてしまった。
消音魔法を弓に付与させて無音の弓にした方が簡単だったな。
・・・おかげでバシュやピシュなんて擬音が消えてなくなってしまった。
ミルクさんは嫁3人とるびのが結構楽々と狩りしてる。
俺も途中から参戦した。矢が当たって突き抜けるのがハンパな威力じゃないな。
ここまで来るとちょっとえげつなくなってしまった。
ダンジョンで助かる。
ダンジョン内の魔獣は魔石・魔結晶・魔水晶・ドロップアイテムを残して消滅してしまうので飛び散った血や脳漿なんかの後片付けをしなくてもいいかもんな。
矢の損傷が想像以上に激しい。
もう少し頑丈に作りなおさないといけないな。矢を1本ずつ丁寧に作る事にする。
『どうせ矢なんて消耗品だし』
って、適当に作ったおかげで毎回弓で矢を放って回収するたびに作り直してる。
アホが極まってるな。
「しんちゃん、なんか凄い弓作ったね。一射でミノタウロス2頭の頭部をぶち抜いて突き抜けてダンジョンの壁に突き刺さる弓矢って始めて見たかも」
「威力が凄いです。バンって矢が当たった時の音も凄いです」
「ねぇ、しん君。矢がひん曲がってるのってわざとなの?」
「アイリ逆だ。あまりの威力に矢が耐え切れないでいる事を全く計算してなかった。これから矢の方も本格的に作らさせてもらうから、またみんなで狩りをしておいてくれ」
俺はそういうとまたモノづくりに没頭し始める。
矢の重量バランスなどよりも『頑丈さ』これが必要って事になると・・・金属から変えたほうが良さそうだな。
今使ってるオーガ鋼以上となると・・・難しいな。
ミスリルやオリハルコンなどの金属は魔力を込めれば感情には作れるが比重が金属としては軽いんだよな。オーガ鋼の半分ぐらいしかないし。
ミスリルコーティングよりも少し分厚めに作ってみる事にした。
矢をそのままで上からミスリルでメッキしてみる感覚だな。
ためしで撃ってみる事にする。
「みんな、ちょっとゴメンな。るびの、試し打ちさせて。ミルクさんはどっちから来る?」
「うんいいよ。とうちゃん、あっちの方向にミルクさん3頭で距離100m」
3頭のミノタウロスに遠距離射撃。100mほどだが寸分違わず眉間を突き抜ける矢が3本。
転送魔法で回収してみると、3本とも見た目は普通だな。鑑識で詳しく調べてみると、矢が全体的に歪んでいる。確かに頑丈にはなったが3回ぐらいで壊れそうだ。
なんかムカついたので1mmぐらいに分厚くミスリルをこんもりと塗る? 盛る? してやった。
「るびの、次も頼む」
「うーん、こっちに2頭。距離120m」
スッスッと無音で弓から矢を放つ。タンッタンッと当たる音がかすかに聞こえてミノタウロスが倒れる音がした。
弓力300kgって凄いな。120mでもミノタウロスが一撃なんだ・・・。
矢を転送魔法で回収させ鑑識で調べてみたが、今回は全く歪んでない、これは成功だろう。
ミスリルを分厚く盛ったので魔力付与が可能になり風圧低減の魔法付与を矢の全体に掛けて完了だな。
これと同じ矢を200本作っておいた。