俺が正義のヒーロー・・・ってマジっすか?
7・21修正しました。
楽しいけどこれだけ雑多な人が行き来してる場所なので警戒レベルは下げてない。
たくさんの人間がいても怪しい人間の動きはたいていはわかる。
俺たち自身があっち行ったりこっちに来たり、全く計画性の無い動きをしてるからな、あわせて付いてくるヤツやじっとこちらの動きをを窺ってるヤツもいない。
奥の場所にいるおばあちゃんに呼ばれて付いていってジャガイモを大量購入した。
「おばあちゃん、いつも美味しいジャガイモを残しててくれてありがとうね」
「そりゃ、私の最初のお得意さんだからね。早乙女君が買ってくれるようになったら、売り上げが安定して上がってきたんだよ」
「それは俺のおかげじゃなくて、おばあちゃんの村で作ったジャガイモが美味しいからだって」
「早乙女君は知らないだろうけど、早乙女君はこの食料品市場で目利きのグルメで有名なんだよ。早乙女君が大量に買った商品は安くて質が良いか、高くても絶品の味って事で有名なんだよ」
「俺が目利きのグルメ?」
「そうだよ。早乙女君が購入するときに、これはこうして食べると美味しいって言葉が聞きたくてみんなが早乙女君を待ってるんだよ。それで私の村はジャガイモしか特産物は無いけど、早乙女君が『フライドポテトはここの店のジャガイモが一番美味しい』って言ってくれたから、今は5つもお得意さんが増えて売り上げも増えてるんだよ」
「俺の何気ない一言で・・・マジかよ」
「それだけ早乙女君の食に対する言葉に信頼性があるんだから、君は誇ってもいいんだよ。ウソはついてないんだからね」
「ありがとうおばあちゃん。そうだ! 俺も今日からお店を出したんだよ。『もふもふ天国』って店なんだけど・・・」
と、店の説明をしてあげたら、近所に住んでるみたいだったので説明の手間が省けた。
「この店でおばあちゃんの村で取れたジャガイモから作ったフライドポテトが売ってるから、良ければ一度来てみてね」
「もふもふって早乙女君の頭に付いてるような? ちょっと触らせてもらってもイイかい?」
「いいよ。ほらるびの挨拶して」
「おばあちゃん初めまして。早乙女るびのです。よろしくね」
「はいはい、よろしくね・・・ってこの子しゃべれるのかい?」
「うん。話せるよ。お店に行くとね、オレみたいなのがたくさんいるよ」
「ああ、さわり心地がいいね。これは癒されるわねぇ」
「そういう『もふもふの癒し』を求めて作った俺の店なんだ。おばあちゃんもモフモフが好きなら是非来てね。朝6時から夜8時までオープンしてるから。仕事の前でも後でも大丈夫だけど、食事はフライドポテトとかクッキーぐらいしかないから」
「わかった。仕事帰りに是非寄らせてもらうよ。こういう毛皮を触る事が大好きな友達も誘っていくね」
もふもふ天国のお店の宣伝までしてしまった。
まぁこれで夜間のお客も確保できそうだな。主婦や女性客だと昼間だけになりそうだしな。
大量に購入したジャガイモをアイテムボックスに入れてから、マリアのアイテムボックスに送る。
油で汚れた指を愛玩ゴーレムたちが綺麗に舐めとるサービスをしてからフライドポテトの売り上げがいいので、マリアに頼んで作り置きをしてもらう。アイテムボックスだからこその連携だな。
特製紙皿はセバスチャンに頼んで追加で作っておいてもらえるように、素材をセバスチャンのアイテムボックスに送っておく。
欲しかった物は全部購入し終わったので食料品市場横のゴーレム馬車駐車場に停車中のキャンピングバスに戻ると、俺のキャンピングバスの前に知らない人が立っていた。
「失礼ですがこちらのゴーレム馬車の持ち主ですか?」
「・・・」
答える気は100%なくなった。この男が俺の嫁を値踏みするような好色の目で見やがった。
「お名前を伺ってもよろしいですか?」
「どけよアホタレ。人の嫁を値踏みするような目で見るようなヤツとは会話する気は全くないからな」
「アホ・・・ということは私にケンカを売ってるのですか?」
「お前が売ってきたから俺は買っただけだな。それの自分の馬車に親衛隊を5人ばかり隠してるからっていい気にならない事だな。どこの商人かは知らないが、怪我しないうちに帰ったほうがいいぞ」
「アッハッハ、笑わせてくれるな坊主。シーズの名を持つ私にケンカを売って無事に済んだ人間はいまだかつていないんだがな」
「へ~~、シーズの名を持つ人間にもお前みたいなウンコマンがいたんだな。本当にウンコを漏らさないうちに帰らないと都市ヨークルの大勢の一般市民の目の前でウンコを漏らしながら土下座して命乞いをする事になっちゃう事になるんだけど・・・もしかして、お前はドMなのか? みんなの前で漏らしたい願望でもあるのか? おい、みんな変態がいるから車の中で待っててくれ」
「口だけは達者なガキだな。女も逃がすつもりは無いぞ。お前らやってしまえ」
ガシャガシャと騒々しい音を立てて走ってくる親衛隊に向けて『パン』と手を叩きスキルを発動する。
『影縫い』
フルプレートアーマーの男5人と俺に声をかけてきた男が腰まで自分の影に沈んで動けなくなった。
クラリーナが声をかけてきた。
「大丈夫・・・ですね。中で待ってますね?」
「ああ、心配ないよ。中で待っててくれ」
こんな時のこういうヤツラへの対策としてお互いに名前を呼ばないように言ってある。
「さぁ、周りにこんなに大勢の人がいて、お前達から手を出してきたのに・・・どうします? 命を懸けて『決闘』することにしましょう。受けますか?」
「ひ、卑怯だぞ! 俺たちは動けないのに!」
「でもお前が何の関係も無い俺の嫁を人質にするって声出したんだけど・・・もうボケてるのか? まだ20歳にもなってないだろうに・・・可哀想になぁ・・・親が。プークスクス」
「貴様! わかった。決闘だ! ここから出せ!」
「決闘するのに、何で出してやらなきゃいけないんだ? お前の脳味噌はお花畑か?」
流石にここまで俺が徹底的にバカにしてると周りから笑い声が聞こえてくる。
ついでにヒソヒソと小さく話し声も。
「ねぇ、早乙女君にケンカ売ってる金髪の人って『ユマキ商会』の次男だよね?」
「そうそう、問題ばっか起こして勘当寸前の『マサキ・シーズ・ユマキ』だよ。まさか早乙女君にケンカを売るほど馬鹿だとはね。これで廃嫡&勘当決定ね。遠い遠い国の親戚に養子に出されるわね」
「まさか本物の馬鹿だって私も知らなかったわ。早乙女君にケンカを売るほど馬鹿だとはね」
「早乙女君ってここ最近の一連の問題解決の立役者で『ヨークルの正義のヒーロー』って言われてるのに・・・バカよね」
「そうなのよね。商人なら金を払ってでも仲良くさせてもらいたいって思ってる人が多いのにね」
「私は売ってるバナナを褒めてもらっちゃった。おかげで顧客が増えたし」
「私も! メロンが美味しいって褒めてくれたおかげで顧客からの連絡が来て『今後の取引量を増やしたい』って。早乙女君は本物の商売の神様なのよ」
「うちはミョウガを昨日は早乙女さんの奥様が来て大量に購入されて、今朝になったらフォレストグリーン商会から『定期的な購入契約をしたいから村の責任者との話し合いがしたい』って・・・その話をフォレストグリーン商会に持ち込んだもの早乙女さんなんだって。美味しいものを生産して早乙女君と仲良くすると商売繁盛間違いなし・・・」
「そういえばコーヒー豆を扱っている商会の人が言ってたんだけど、生産地ごとで選別して・・・」
流石に恥ずかしくなってきたな。顔がちょっと火照ってる。
『ヨークルの正義のヒーロー』やら『商売繁盛の神様』やらはキツイな。
気を取り直して、決闘の再開をしないとな。
「それで『マサキ・シーズ・ユマキ』さんよ、どうやって決闘するんだ? 賭けるモノは『お互いの命』だったな。それで決闘方法はどうする? 殺し合いで良かったのか?」