メガヒールとエクストラヒールの考察。違いは光り方っす。
1・9修正しました。
「すみませーん、貰うモノを貰って帰りたいんですけど・・・無理っぽいなぁ」
それから5分以上は待機させられた。
「早乙女さん、申し訳ないですね。感動のあまり、つい・・・」
「早乙女さん、ごめんなさいね。でも私が完治したって事はやっぱりあの夢はアマテラス様の御神託で間違いがなかったのです」
「御神託ですか?」
「ええ、私が妻を連れて首都シーパラを離れてこのヨークルに来たのは理由があったのです」
「私が4日ほど前に夢を見たのです。夢の中で私は光り輝く塊から『貴女はシーパラの教会で医師としての職務を全うしなさい。そうすれば貴女と貴女の娘に奇跡が訪れます』と」
「妻は医者と言っても普通の医者ではありませんでした。『森林黄熱病』の研究家なのです」
「私が医師としての職務を全うするということは『森林黄熱病の発生が疑われる』ということなので、自分の息子をお義母様に預けて主人と大至急ヨークルにやってきました」
「それで昨日にヨークルへ到着して真っ直ぐに教会に来て森林黄熱病の発生があるかもしれないとお知らせしにきたら、ちょうど患者で森林黄熱病の症状が出てる人がいると診察を受け持っていた司祭様に言われて私が診察しました。間違いなく森林黄熱病でした。ヨークルの教会に予備として保管されていたサラマンダーの雫を投与。患者1人とその患者を連れてきた患者の友人4人。患者を診察をした医師2名とシスター3人の合計10人にサラマンダーの雫を投与しました」
「サラマンダーの雫の投与で回復をした患者がどこから病原体を持ち込んだのかも患者の友人の証言もあって判明しました。患者と友人達は冒険者5人でチームを組み、アゼット迷宮の地下34階の攻略中に迷宮ヒヒの集団に襲われてシーフ職の患者が噛み付かれて負傷。それで感染したと断定できました。私の研究でも森林黄熱病の発生源の元は迷宮ヒヒの噛み付き攻撃を受けた人間に多く見られましたので。そこで患者がチャーターして使用したゴーレム馬車なども浄化して完了と思われたのですが、患者を治療していた私自身がサラマンダーの雫を飲んでいない事をすっかり忘れていたのです」
「私は教会での治療と浄化作業も終わってホッとしていた時に妻が発病して倒れたと聞いたんです。私はカルディア商会のゾリオン義父さんにサラマンダーの雫を持っていないか尋ねに行きました。ガルディア商会は持っていないが冒険者ギルドとギルドに所属するBランク冒険者の『早乙女真一』さんに個人指名依頼を頼む事が出来たら解決できるかもと言われて、旧知のラザニードさんに依頼をのお願いをしに冒険者ギルドのヨークル支部に急行しました」
「グレゴリオの話をワシも聞いてな、早乙女君なら必ず良い結果を残してくれると思って依頼を受ける事にしたんだ。まさかこんなに早く解決できるとは思ってもみなったがな」
「あ、忘れてましたね。これが予備分のサラマンダーの雫です」
俺は小さな声で言って教会の医者をしている司祭様にサラマンダーの雫を1つ渡す。
彼はそのまま教会の保管庫にサラマンダーの雫を保管しに行った。
俺は皆にシーっと身振りをしてそのまま小さな声でミーシアに話しかけた。
「ミーシアさん、頭がガンガンとするような頭痛がしませんか?」
「あ、今は少し楽になりましたが頭痛はしますね」
「貴女が産まれる前からの重度の難聴が完治したので、脳に入ってくる音の処理がまだ上手くできないので頭痛がするんです。ですので、出来れば後2日ぐらいはこの教会内の静かな場所でリハビリする事をお勧めします」
「あ、そうなんですかわかりました。貴方、私は治療をしていただいた早乙女さんを信頼してここで3日リハビリさせていただきます」
「ああ、ミーシアかまわないよ。私も3日ほどヨークルで骨を休めるさ。それにしても・・・エクストラヒールで難聴は治療できるのですね。以前は効かなかったとミーシアから聞いてるのに」
「私も知りませんでした。小さな時の治療では治らなかったです。治療をした枢機卿様からも難聴は治る人と治らない人がいると聞きました」
「・・・はぁ? エクストラヒールで難聴は絶対に治療できますよ。先天性の完全難聴も治療が可能です。治る時と治らない時がある? それって本物のエクストラヒールなんですかね・・・ミーシアさんにお聞きしたいのですが小さな頃にエクストラヒールをかけられたときの事を覚えていますか?」
「はい。記憶にあるだけでも2回ほどエクストラヒールを受けてます」
「では今からご主人の体に魔法を2回かけます。右手と左手でしますので、ミーシアさんが記憶にあるエクストラヒールを教えてください。それと周りの皆さんは絶対に答えを言わないでください」
右手をグレゴリオさんに掲げて声を出す。
『エクストラヒール』
俺自身の右手が光り輝いて光がグレゴリオさんに移動していく。
「これが右手での治療です。次は左手です」
左手を掲げて『エクストラヒール』と唱えると俺の左手は光らないでグレゴリオさんの体全体に薄い膜が張りそれが体に吸収されて消える。
「どうですか? ミーシアさんの記憶にあるのは右手? 左手?」
「右手ですね。枢機卿様の魔法で両手が強く光り輝いたのをはっきり覚えています」
「間違いないですね?」
「はい、間違いないです。でも何で2種類の光り方があるのですか?」
「それは詐欺だからです」
「はい? 詐欺ですって?」
「はい・・・右手を使って使用した魔法は『メガヒール』です。『エクストラヒール』って口で言っただけです。左手で行ったのが本物のエクストラヒールなんです」
「そんな・・・まさか、枢機卿様が詐欺を?」
「実際に治療で使ったのは左手の方の魔法です。周りで見ていた皆様、間違いないですよね?」
「ああ、ミーシア、早乙女さんの言葉に間違いがないよ。これはアマテラス様に誓って言える」
「ワシも断言できるな。ワシはギルドマスターの職務に誓うよ」
親衛隊の皆さんも一緒に治療室に来た司祭様もミーシアと一緒に治療をされたシスターも左手の方だと断言する。
「ミーシアさん・・・メガヒールを両手で2回分すると難聴の症状によっては治る時もあるのですよ。でもエクストラヒールだと間違いなく治せるのです。ただ断言できるのは右手バージョンは間違いなく『メガヒール』です。エクストラヒールってこの国では1人だけが使えたんですよね?。それなら本物のエクストラヒールって証明する人もその人本人しかいないんですから詐欺のし放題ですよ」
「そんな! で・・・」
司祭様が大きな声を出したので俺が手で司祭様の口を塞ぐ。
「静かに・・・ここでは大きな声を出さないでください。まだミーシアさんのリハビリ中なんですから。場所を変えましょう。ここでは皆さんが興奮しがちなデリケートな話をする場所じゃない」
「そうだな。これはシーパラ連合国という国家を相手だけでなく、教会を欺き、アマテラス様を騙す行為だからな」
ラザニードさんの声で全員が移動をする事にした。
ミーシアさんが心配そうにしていたがグレゴリオさんが優しく語り掛ける。
「ミーシア、これは重大で秘密を要する案件だ。君には後で必ず話に来るから今はリハビリに専念してくれ」
「グレゴリオ、わかったわ。今は治療のリハビリに専念する」
シスターとミーシアを治療室に残してみんなで治療室を出て教会の礼拝堂に行く。
礼拝堂で掃除をしていたシスターなどの人払いをお願いした。
それから俺は部屋に結界を張る。
「これでここの声を外に漏れる事もなくなりましたので、大きな声を出しても大丈夫です。しかし枢機卿が詐欺とは・・・」
「早乙女さん・・・実は私、1年ほど前に枢機卿のエクストラヒールを使用した治療を見学させてもらった事があるのです。間違いなく早乙女さんが右手でやったように両手が輝いてました。司祭という神に仕える人間の1人として誓えます」
「これは由々しきことだ。今は海外にいる枢機卿がこの国に帰ってくるまで後10日程はある。真偽官による特別チームを組んで対応する必要があるぞ」
「私もシーズの名を受ける人間としてこれは許せる問題ではない。相手は教会の複数の司祭を束ねる立場の枢機卿なんだ。父とゾリオン義父さんにも動いてもらって最高評議会による諮問会議が必要になる」
「あー、すみません。俺って今後の話し合いには必要ないと思うんですけど。その最高評議会の諮問会議に皆様の前でエクストラヒールを実際に使って見せろという依頼ならやりますけど、枢機卿を追い込む為の作戦会議には俺は部外者だと思いますが」
「確かに早乙女君は専門外の話し合いになってしまうな」
「ええ、ですので依頼達成で成功報酬さえ貰えれば俺は帰りますよ」
しかしながらそこから成功報酬の話し合いも長くなってしまった。
喉が渇いた俺が皆のためにコーヒーを出して、それを全員が飲み干すほどに時間がかかって・・・結論は5億Gで落ち着いた。
サラマンダーの雫が2本で2億5000万G。
ミーシアとお腹の子供の治療費がグレゴリオから2億G。
司祭からは教会全部の浄化費用として5000万G。
これらの合計金額だった。
ザブザブと金が入ってきて有り難味がすでにない。
冒険者ギルドとフォレストグリーン商会と教会と俺で契約書と依頼完了証明書の全ての用紙にサインを済ませて完了した。
ラザニードさんがアイテムボックスで持っている冒険者ギルドの魔水晶で俺の冒険者ギルドカードの4億G。
俺のステータスカードの個人資産で1億Gを入金してもらう。
グレゴリオさんに店の場所を教えてもらって最後に全員と握手して別れる。
フォレストグリーン商会は名前とまったく違って商会の本拠地は海外への玄関口の都市ドルガーブにあるとの事だ。
商会で取り扱ってる主要品目は魚介類の加工品で昆布や鰹節などが中心品目らしい。
『梅干』も『シソ』も扱ってるというので、明日にでも行かせて貰うと言っておく。
紅生姜への道が開かれたようだな。
昆布と鰹節はヨークルの市場にあまり出回らないので見かけたら購入していたが、いつも在庫が心許なかったからな。安定供給の道が出来たのは非常にありがたい。
教会を後にして俺はライトの魔法を浮かべて歩いて早乙女邸に帰る。
ゴーレム馬車で自宅まで送るとグレゴリオさんが言ってくれたが遠慮させてもらった。