るびののモフモフ覚醒っす。
店舗に入り口から入りブーツを脱ぐ。・・・って俺、まだ防具を装備してるし。
下駄箱の靴はほとんど入ってなかった。
ブラウンがレジにいたので案内してもらい、テーブルとクッションを出してもらう。注文はホットコーヒーにした。
店内には嫁3人とアイリの母親の『カタリナ・クリストハーグ』だけがいた。
「みんなただいま。カタリナさん。こんにちわ。お久しぶりですね」
「早乙女さん、おかえりなさい。貴方、トンでもない物を作ったわね。この子が一番可愛い。撫で心地も最高ね」
「ちょっと待っててくださいね。今、裏で防具から着替えてきます」
キッチンのある場所へ向かい外から見えない位置で素早く防具を脱ぐ。
以前、自分で作った『フード付きのパーカー』と『カーゴパンツ』に着替える。
俺は日本にいるときからこんなラフな格好の方が好きなので、こっちの世界に来てから時間を持て余してるヒマなときに作った。
ただ、カーゴパンツはちょっと違和感がある。股間がチャックではなくてボタンなので。
それが服を作るうえでのネックだな。
嫁達のコスプレ衣装もボタンとホックで作ったからな。
俺の『神の創り手』スキルでも作り方のわからないものは作れない。
俺の知識にあるか、俺のコピーしてもらった知識にあるものでないと、何をどう造っていいのか『設計図が出来ない』
幾つもの知識を複合させて似たようなものなら作れるけど。
車がいい例だな。
車は俺がもらった知識の中に『元自動車整備士」の人がいるから材質までは正確にはわからないが、仕組みと構造は理解できるから、それなりの物が出来るが全く同じものは作れない。
材質の製造方法がわからないから作れない。ただし、形だけならわかるので似たものなら作れる
『焼肉のタレ』もいい例だな。
こんな味ってのはわかるが、何をどうやって作っているのかの知識がない。
グーグル先生もいない俺では調べる事が出来ないから、全部1から試してみないと作る事が不可能だ。
最終的には『なんとなく似た味』ぐらいならできるだろうけど。
着替えが終わったので自分のテーブルとクッションに戻る。
おーとまの頭を撫でながらカタリナさんはニコニコして頬がデレデレになってるな。
「カタリナさんのお気に入りはおーとまですか。その子ののモデルになったヤツが、今いるんですけど見てさわってみますか?」
「え? しん様、るびのを連れてきたのですか?」
「迎えに行った帰りなんだよ。今は裏の事務所にいるけど、カタリナさんに会わせても大丈夫かな?」
「母さんどうする? るびのは母さんが背中に乗れそうなぐらい大きいけど、どうする?」
「会ってみたいわね。その子ももふもふしてるの?」
「るびののモフモフは俺が保障しますよ。たぶん世界最強のモフモフです」
「ああ、しんちゃんの言う通りるびののモフモフはヤバイよね」
「でもカタリナ母さん大丈夫ですか? るびのってコレぐらいの大きさですよ?」
クラリーナが身振り手振りで説明してる。俺はマリアに裏の事務所からるびのを呼んできてもらう。
「それじゃあ、今日のプレオープンはどうだった? 問題点は見つかった?」
「私がこの『もふもふ天国』のお客第1号として言いたいのは・・・設定時間が短過ぎ」
「やっぱりそうなるか。みんなは何か対策とかは考えてくれた?」
「私が友達に聞いた意見を参考にすると『クッキーは別料金で売れる』かな。だから私が考えたのは『1ドリンク500G。クッキー5枚で500G。セットで1000Gで1時間」ってのはどうかしら?」
「私も今のアイリさんの考えと似てます。私は追加で延長料金代わりにクッキー5枚で30分延長って考えてました」
「クラリーナとアイリの考え方は良いんだけど、クッキーだけじゃなくてもう1品ぐらいは欲しいわね。料理スキルが食事メニューを載せない理由っていうのなら、誰でも出来る『カットフルーツの盛り合わせ』とか『フライドポテト』ぐらいだったら市販品も数多くあるんだからいいんじゃない?」
「カタリナ母さん、マリアが作ってくれた『フライドポテト』感動してたじゃん。あんまり料理はお勧めしないな」
「あれは美味しかったわね。でも量を少なくして500Gで販売すればいいんじゃない? 最後に持ち帰りも出来るようにすれば帰り道でも食べられるし」
「うーん。とりあえずは『クッキー』『カットフルーツ』『フライドポテト』この3点は確定にしよう。出す量は今から検討なんだけど・・・あ、るびのが来た」
のっそりと入ってくるるびの。大きさはゴールデンレトリバーよりも一回り大きくなった大型犬サイズだがもう体重は60kgを超えてる。
「この子がおーとまの元になった子なの? 確かにモフモフしてるわね」
「とうちゃん、この人だれ?」
「おう、るびの。この人がカタリナさんっていってアイリのお母さんだ。だからるびの、ちゃんと挨拶してごらん」
「あ、忘れてた。初めまして『早乙女・るびの』です。カタリナさん、これからよろしくね」
るびのがおすわりの姿勢でカタリナにペコリと頭を下げた。
「この子話せるの?」
「クックック、アイリとミーと全く同じリアクション。カタリナさん、ありがとうございます。魔獣って意外と話せますよ。全種類と試したわけじゃないんですけど。それにコイツは聖獣『白虎』です。・・・るびのが挨拶したんだから、カタリナさんも挨拶で返して欲しいなぁって言うのが俺の親としての意見です。るびのは俺が養子にしましたんで俺の息子です」
「聖獣って・・・ああそうね、ごめんなさいね。こんにちわ。私は『カタリナ・クリストハーグ』よ。アイリとミーの母親でもあるわ。それに今日からクラリーナも私の娘になったし。だからるびの君は『カタリナ祖母ちゃん』って呼んでね?」
「カタリナ祖母ちゃん、カタリナ祖母ちゃん・・・うん。覚えたよ。カタリナ祖母ちゃん」
「るびの君、触っても良いかな?」
「うん。良いよ、カタリナ祖母ちゃん」
るびのが移動してカタリナの隣に座り頭を擦り付ける。
・・・上手いなるびの。甘え上手だな。
カタリナさんが幸せの絶頂って顔でるびのの全身を撫で回してる。気持ちがわからんでもない。
いいだろそのモフモフ、俺の大事な息子なんだぜ。
何度でも言う・・・モフモフは正義だからな。
今まで撫でられていたおーとまは空気を呼んで少し離れる。
愛玩ゴーレムたちも上手いな。俺こんな事教えてないんだけどな。
カタリナさんが完全にトリップしてしまったので、代わりに嫁に話しかける。
「なぁ、アイリ。もう17時ぐらいなんだけど、カタリナさんって家に帰らなくてもいいのか?」
「今日からドミニアンお義父さんは家に帰ってこられなくなるんだって。今夜はゾリオン村で泊まりになるって出勤していったよ。だから今日はここに泊まるって、さっきから言ってるんで困ってるんだけど」
「それは別に構わないぞ。ここなら警備隊の詰所よりも防御力高くて俺も安心できるし」
「ホント? カタリナ母さん良かったね。しんちゃんがここに泊まっても良いって言ってくれたよ」
「やった! ありがとうございます。私の長年の夢が今夜叶える事が出来そうです。『1度でいいからモフモフに埋もれて眠りたい」って・・・夢だったんですよ」
「もう、母さんやめてよ。子供みたいにはしゃいじゃって、ちょっと恥ずかしいわよ」
「そういえば、さっき『クラリーナも私の娘になったし』ってカタリナさんが言ってたけど、どういうことなんですか?」
「それは私がアイリさんに『こんな優しくて綺麗なお母さんがいて羨ましいです』ってホンネを言ったら、『じゃあ、今からクラリーナは私を”カタリナ母さん”って呼びなさい。そうすれば今から貴女は私の娘です』っておっしゃってくれたんです」
「そういえば、カタリナさんとクラリーナって名前だけじゃなくて顔も背格好も似てるからホントの親子に見えるな」
「それ、もうすでにカタリナ母さんに言われたよ。『あんた達みたいにデッカイ娘じゃなくて、私と同じぐらいの娘が出来て嬉しい』って。何気に酷い言われようだよ」
「私なんて実の娘なのに、そんな事目の前で言われたら流石に凹むわよ。でもクラリーナが嬉しそうだから文句も言えないし」
「お2人ともごめんなさい。でもしん様の言うように。私も親近感が沸いてます。私も実の母親よりもカタリナ母さんの方が似てますし」
「でしょでしょ。やっぱりクラリーナが私の娘って言う方がシックリ来るのよ」
カタリナさんが話に加わってきた。
しかしカタリナさんはホントに見た目はクラリーナに似てる。性格はミーのほうが似てるけど。アイリが似てるのは声と話し方がソックリ。
そのカタリナさんは今は伏せの体勢になってるるびのを撫で回してる。
「るびのってホントにモフモフね。コレは病みつきになるわ」
「・・・そういえばるびのって大きさが変わるんだったな。大きさが変えられなかったって言ってたけど、小さくなるのも試したのか?」
「うん。ダメだったよ、とうちゃん。ニャックスさん達もどうやってオレが大きさを変えてるのかは知らないって言ってたんだ」
「うーん、魔法なのかな。魔力なのか・・・なぁるびの、自分の中にある自分の魔力ってわかるよな?」
「わかるよ。それがどうかしたの?」
「大きさが変わるって事は魔力の大きさを変えるってことなんじゃないのかな? それだったら自分の魔力をこんな風にギューっと縮めてみてごらん」
そういって俺はるびのに向かって両手を合わせておにぎりを握りこむようにジェスチャーしてみた。
「わかった。試してみるよ。うーーーん」
るびのは両目をつぶって集中する。るびのの体が白く輝いて収縮していく。
おーとまと同じ大きさになってしまった。
「「「「「縮んだ!」」」」」
俺達全員が大声を上げたのでるびのが目を開ける。
「・・・あ、できた。やった、とうちゃん成功したよ」
「おおお、凄いな! コレが聖獣の力の1つなんだな」
空気を呼んでおーとまがるびのに近づいてきて頭を下げて挨拶をする。
「るびのにーさん、はじめまして。ボクの名前は『おーとま』です。よろしくね」
「おーとまね。よろしくぅ」
「「「「キャーー」」」」
3人の嫁とカタリナさんが絶叫してるびのとおーとまを抱き上げてしまう。
「うぷっ、とうちゃ・・・たすけ・・・」
「スマンなるびの。モフモフの魔力に支配された女性は、男では解決できないんだ。今は耐えてくれ」
「凄い凄い凄い。アイリが言ってた事がわかる。おーとまも可愛いけど本物はこんなもんじゃないって。もっともっと凄い魔力があるって」
「でしょ、母さん。この時のるびのの可愛さは世界制覇が出来るって」
「アイリさんが言ってる事はよくわかりませんが、感覚で理解できてしまいます」
「感覚で理解できるならクラリーナもしんちゃんと同じところに来てるよ」
「ミー、なんだよそれ。俺はモフモフの到達点かよ。まぁ、最終到達点ではなくまだモフモフ道の途中ってのは・・・大体合ってる」
「しん様が到達点って・・・そこは否定しないんですね」
「否定は出来んな」
「ねぁ、しん君、そういえばるびのがここに来る前って、この店のメニューの量を決めるって話だったけど・・・どうするの?」
「・・・完全に忘れてたな。それとやっと開放されたるびの、お前はその体の大きさで辛かったりしないのか?」
「わかんない。とりあえず明日の朝までこのままでいられるか実験してみるね」
「ああ、辛くないんだったらいくらでも実験してみろ」
「それで、サイドメニューの話に戻るけど・・・とりあえず『クッキー』『カットフルーツ』『フライドポテト』の3種類でで決定しよう。これ以上はしばらく時間が経ってからだな。それで金額は一律でわかりやすく全品500Gでいく。スペシャルドリンクだけが1000Gだな。全品が30分の時間が付く。一度に頼める品目は2品まで」
「頼める品目数が決まってるの?」
「ああ、アイリ。これ以上の品目のメニューはテーブルに乗せない方がいい。なんせこの小さいテーブルだからな」
「そう言えばそうね。でも早乙女君『カットフルーツ』ってどんなものなの?。現物を見ないことには検討できないんだけど」
カタリナさんに言われたのでセバスチャンに指示して適当な大きさに乱切りされたフルーツを皿に並べた。一口サイズの大きさにカットされたフルーツが結構多めに乗っている。
「しんちゃん、この量は多いわよ。コレの1/3ぐらいでちょうどいい量よ」
「セバスチャン、この量で原価はどれぐらいだ?」
「以前、買出しに出かけた時に纏め買いをして値引きしてもらってますので、正確な原価は把握できてませんが、買った金額から割り出した額は・・・90Gぐらいですね」
市場で買った金額でこの量が90Gかよ。
さすがヨークルだな。
海の恵みは距離的に金額がかかるが、森・山・川・草原・池などの恵みは豊富だな。
フルーツも畑にあって栽培されてるだけでなく、大草原や大森林で簡単に手に入るし。