魔力パワーボート製造したっす。
船上で昼食を食べ終えると操縦席に戻り実験の続行だ。
最高速での運動性や船底にかかる圧力変化などを調べる。やっぱ双胴船だと独特の動きになるな。
ある程度のデータが溜まったので、今度は実際に作って調整した方がが良さそうだな。
水の抵抗で考えると球形の方が良さそうなんだけど、流石に船の形から逸脱し過ぎてるから無理だな。
なので・・・普通の単胴船型の船を製作する。
材質は岩場でたくさん採取した『ミスリル』にする。
魔石を加工した小さなパネルで船底だけでなく船全体を覆いつくす。
船の長さは外洋に出る事も考えていたら、パワーボートと潜水艦が合体したような近未来形になっちゃた。まさしく未来型の小型潜水艦って感じだな。
濃紺に塗装して艶消しにしないといけない気分になってくるが、これは趣味の船で戦闘艦じゃないし、武装もつけていないので外観はとりあえず真っ白にしておいた。
全長20mで幅は5m。
船を川に浮かべてみるが・・・今は停まってる状態だから船底部に水を注水して重り代わりにしている。
波が船体に当たっているはずだが、一切の揺れはない。全ての圧力がすり抜けてる。
船を動かし始めるが、水しぶきすら上がることなくスイスイ動く。
魔石は100以上の量を使い魔石パネルにかかる圧力などの情報をクズサイズの魔結晶20個に集める。
魔石パネルからの情報と指令の管理はロードクイーンの魔結晶で操縦と外洋航海用の知識や経験などを封入して全ての指令をこれで管理する。
船体の外部を覆う魔石パネルは『センサー』でもあり『転送魔法の吸入口』でもあり『転送魔法の排出口』でもある。
会社における『平社員=魔石パネル』『係長=クズ魔結晶』『課長=ロードクイーンの魔結晶』だな。
人間と違って命令通りにしか動けないが。
魔力効率は想像以上に良かった。ウォータージェット方式よりもいいぐらいだな。
・・・船ってよりも『アメンボ』みたいな感じかもしれん。何の抵抗もなく進んでいくからな。
スピードも底なしな感じがする。
浮力・水圧・風圧など船体にかかる圧力が魔石パネルに当たると、その圧力は全て転送魔法で送られて全部ではないが、船を動かす為の推進力に切り替わる。
波に当たって船が飛び跳ねることも皆無だ。
船ではありえない動きの『真横に移動』すら容易に行われる。
船にかかった圧力がそのまま反対側へと移動するだけだ。
船が波を切ることなく猛スピードで変幻自在に動き回れるので・・・アメンボっぽいって表現になってしまう。
船を旋回させるのに傾ける必要性すらない。船内には重力魔法でGも管理されてる。
流れる景色を見て『動いてるんだよなコレ』って実感できる。
アンカーすら降ろさずに川の流れすら一切無視してその場で停船している姿が既に異常な風景。
この感覚は『飛翔魔法』で浮かんでるような感覚に近い。
操縦席の操縦方法も替えた。船の操縦でなくて車と同じにした。
ブレーキで減速する船ってのも・・・まっ、いいや。
船を潜水艦のように上下に立体的に動かすために、左手用のレバーをつけた。
オートマチックの変速レバーみたいなヤツで、奥に押し込むと潜行、手前に引くと浮上。
簡単に潜水艦のように潜航してしまった。
これなら飛行も出来そうだな・・・飛行実験は次回にしよう。きりがなくなりそうだ。
この方式の船は亜空間に存在してるんじゃないかと思うほどの空間の切り取り具合がヤバイ。
この船は『空間をくり貫いて移動している』
実験の結果は・・・こんな感じだろう。
『この推進方式の船は形状なんてどうでも良い。外洋? 波? うねり?・・・ああ、あったねぇ大昔にそんな言葉』
統括用に大きめで質の良い魔結晶と大量の魔石と20ものクズ魔結晶がいる、それ以外はサイズ次第で量が変化するってだけだな。
名前は『魔力パワーボート』にした。
俺の貧困なネーミングセンスには、それ以外には思いつかなかった。
全ての実験は終わったな。
今日もまた中途半端だ。この後は魔力パワーボートの内装を整備しないといけないからな。
15時のおやつの時間だったので、今日は久しぶりの『鬼まんじゅう』にした。
船の中は操縦席しか作ってない。
操縦席は船の2階部分になってる。まだ1階部分は何も入っていない。
魔力パワーボートも中身はハウスボートと一緒だ。形状は違うけど。この船にはエンジンが存在しないので船の中の空間がほとんど使える。
安定用の水を入れる船底部分さえあれば良い。注水&排水装置も魔石で出来るからな。アンカーも必要ない。
船内が20mクラスとは思えないほど広く取れる。
内装はセバスチャンたちが取ってきてくれた木材を多様。魔糸溶解液でコーティング。
船の船首から半分までを居住空間にした。長さは12mほど使っている
先端部分も予備の操縦席として設置する。
船体中央部分の左舷側は通路と操縦デッキへの階段。階段の下はトイレと洗面台が付いてる。右舷側はベッドルームになってる。ベットルームは幅3m長さ6mで部屋の真ん中に2m×5mの巨大なベッドがある。
左舷の洗面台はそのままキッチンとしても使えるが、料理スキル持ちが多いのでたぶん使う事がないだろう。
船尾部分は1.8mほどの後部デッキになってるが、トラックのパワーゲートのような後部ドアを開けると長さも4mほどになってオープンデッキとしても使える。
ここから釣りも出来るようにしておく。
異世界の外洋で何が釣れるのか考えると怖くなるが、気にしないことにしておく。
釣りで使う専用のシート作って、簡単に取り付けられるようにしておく。
後部デッキをオープンデッキにした時にここで食事が出来るようにしておく。
海鮮系のバーベキューなどしたい事がたくさんあるので、魔力パワーボート専用にバーベキューセットを作っておく。
船がゴーレムとしてアイテムボックスのスキルを持ってるので、家族と俺が作ったゴーレムなら誰でもここにバーベキューセットも取り出せるようにしておく。
後は個別の専用シートをキャビンスペースに設置して、魔力パワーボートの1階部分の内装は終了。
操縦デッキに行ってこちらにも、全員分の専用シートを設置したのでこの船にも展望デッキを作ってしまった。
これで船作成は完了だな。
2つの船もアイテムボックスに入れて帰る事にする。時間も16時を過ぎてちょうど良い時間だろう。
まずはるびのに確認だな。念輪でるびのに回線をつなぐ。
「るびの聞こえるか? 今どこにいる?」
「うん。とうちゃん、聞こえてるよ。今はガウリスクさん達の家でお話してる」
「お、それじゃあ、ちょっと早いけど迎えに行ってもいいか?」
「いいよ。家に帰ってきてから休憩も終わったし」
「じゃあ、今から行くな」
転移魔法でグリーンウルフダンジョンの元早乙女邸に行く。
ガウリスクの部屋に行くと、ちょうどるびのがガウリスク達に別れの挨拶を告げたところだった。
「みなさん、今日はお世話になりました。そろそろお迎えが・・・」
「よう、みんな。さぁ、るびのそろそろ帰ろう。ガウリスク達も今日はありがとうな」
「あ、ボス。こちらこそありがとうございます」
「それじゃあ、みんなまたね」
「るびの様もお元気で」
るびのを連れて早乙女商会の事務所に転移する。
るびのに事務所で待っててもらい店舗に向かっていく。