依頼報酬をもらってから教会に行ったらゴッデスに再会。でも隣には見知らぬ幼女がいたっす。
7・14修正しました。
俺は高品質なアイテムを見てニコニコ顔をしてたみたいだ。
「品質は確かめられましたか? 自慢の品々ですのでどうぞ持ち帰りください」
「ありがとうございます。高級品でびっくりしま」
ピーーーー
話の途中で執務室に掛けられている半透明な板から笛みたいな音がした。板の上には水晶が乗っている。
すこし粗い画像だがテレビ電話みたいだ。50代のムキムキマッチョな『親父』の声が聞こえてくる。
「バイドにビッタート。朝の話の続きだ。どうなった」
「父上、もう大丈夫です。完治しました。目もこのとおり!」水晶に顔を近づけるバイド。
「おおおお! バイド声も! 目も! 治ったのか! おおお、ありがたい!」
ムキムキマッチョ親父が興奮している。画面越しでも暑苦しいな。
「ん? もしかして君が早乙女君か? ありがとう! 息子の怪我を治してくれて、それに盗賊も銀大熊も君が退治してくれたんだってな。まさしく君は『救世主』だ。」
と、マッチョ親父がお辞儀してるだけでも暑苦しい。
「父上それだけではありませんぞ」
と、今日の教会での出来事のあらましをゾリオンに伝えるバイド。
聞いてるうちに頭に青筋が浮かび上がってる。
『激おこ』って感じのマッチョ。
ハゲだとこういうときわかりやすいな。なんて失礼なことを考えてた。
「いやはや、バカ二人の処分は後にして・・・ボーリック、隣の武器庫の14番の棚のものを持って来い」
「はっ!」
ボーリックさんはササっとすべるように部屋をでていった。
「早乙女君、誠に申し訳ない。隣の武器庫とはワシの趣味のコレクション部屋のことなんだ」
ボーリックが日本刀をもってきた。思わず鑑識を使って見てしまう。
カタナ『天乃村正』
刀身に水の薄き衣をまといて邪を断ち切る。光と水属性の性質を持ち、切れ味が劣化しない。
刀身69センチで全長101センチ。
鞘には『再生』の魔法がかけられてあり欠けた刀身を直す。
何? この中二病にかかってる武器と名前は・・・。俺の今の肉体年齢は15歳。中二は卒業してるはずだ。
が、しかし黒い木と黒・白・緋の三色の糸の『拵え(こしらえ)』が美しい。目が離せない。
食い入るように見つめる俺にゾリオンが語りかける。
「気に入っていただけたようですね。この武器はお詫びですのでぜひ受け取っていただきます」
「こんな高そうなものは流石に無理です」
「商人にとって武器の値段はあってないようなものです。私の趣味で武器庫に保管されてるだけの武器は幻のようなものです。早乙女君、君ならこの武器を生かしてくれると思って差し上げます」
まいった。美しさに目が離せなかった。ありがたく受け取ることにする。
カタナは刀として刃を上向きにして腰のベルトに下げ緒で結びつける。だって俺は馬に乗らないし。
すらりとカタナを抜き取ってみる・・・波紋も美しい。
薄い水の膜のために刀身はうっすらと青く光ってる。これは凄まじい。刀を鞘へと戻し頭を下げた。
「美しく素晴らしいものを頂きありがとうございます」
礼を言って刀を腰から外して下げ緒を結びなおしアイテムボックスにしまう。
ゾリオンはこれから開拓村の建設準備をするそうだ。
村人も減ってしまったので追加で集めないといけないし、守備隊などたくさん集めないとならない。それでも次の討伐隊を送ろうと計画していて、国軍や都市防衛軍に伝手ができたので時間は掛からないだろうと予想してた。むしろ大工や建築スキル持ちを集めるほうが大変だとこぼしてた。
伝えるのを忘れてたがゾリオンとバイドに開拓村の教会と村長宅を更地にしてしまったことを謝っておく。
そんなに強烈にぶっ壊したのかと驚いてたが、どうせ村ごと頑丈に作り変えないとならないから仕方がないと笑ってくれた。
今朝『北から銀大熊の新たな軍団が南下して来た』と炎虎からの情報をガウリスクから聞いていたので、ゾリオンに新たな敵の情報を流しておく。
「あの周辺の大物だった銀大熊を俺が倒したので、そろそろ違う銀大熊の集団が来てるかも」
ゾリオンもバイドも納得してた。
開拓村の守備隊と遊撃隊を多めに雇う方針だが、さらに数を増やすことで対応するみたい。
会話中に長男のギルも挨拶に来た。
珍しく華奢な感じでヨシュアに似ていた。ヨシュアがギルの息子ですと紹介されたら『ちっ、パパに似てイケメンで良かったな』と嫉妬丸出しになりそうなイケメンだった。
契約の残りの希少金属はガルディア商会のヨークル支部の倉庫に在庫にあるのでいつでもどうぞだって。
「ゾリオン村に送りますか?」
と、聞かれたので明日からヨークルに向かう予定だから、ついでに店に取りに行くと言うと、ヨークルの簡単な地図を書いてくれて店の場所を教えてもらった。
色々話し込んでて遅くなったが、村長宅の食堂で昼食。
てんぷらだった。天つゆで食べるタイプだ。大根おろしまである。
美味しくておかわりまでしてしまった。
転生して肉体が若返ったせいか、食欲が凄いことになってる。
が、ダイエットは必要ないな。
腹筋は割れてるし、引き締まったボクサーと体操選手との中間ぐらいな体になってて素直に嬉しい。
考え方までガキっぽくなってる?
まぁ、気にしないようにしておこう。深く考えたら負けな気がする。
お礼を言って村長宅を後にする。
村の外に行こうとしたらビッタート卿に止められ冒険者ギルドに二人で向かう。
そういえば、教会の手伝いっていう依頼の成功報酬を貰ってなかったな。
色々ありすぎて完全に忘れてた。
報酬を入金してもらい、俺はイーデスハリスの世界で今後、避けて通れない場所の存在を思い出して今から向かう。
『教会の礼拝堂』だ。
あの4人の像が奉られてあったりしたら教会ごと破壊してしまうかもしれないが、今後いつまでも避け続けることはできないと思う。
いざ、参ります。
教会のドアを開けて中に入り、礼拝堂の祭壇を見る。
祭壇は光り輝いて何も見えない。光が俺を包み込み何も見えなくなる。
視界が戻ってきたときに目の前に主神ゴッデスと5歳ぐらいの幼女がいた。
ゴッデスの声が頭の中に響いてくる。
【久しいの。早乙女君】
「久しぶりって言われましても、まだそう何日も経過してないですよゴッデス様」
【まずはそこからの説明じゃな。君が4人の神を成敗して転生したのはワシがイーデスハリスの世界を受け継いでから10年後の世界なんじゃよ】
「・・・え?」
【まぁ、先に話を聞いてくれ。イーデスハリスを引き継いだ時に君を転生させたら、たぶんだが世界は崩壊するんじゃよ。世界中に4人の影響は色濃く残っておったんじゃ、教会にもあの4人の神の誰かの像もあるしの。それで引き継いでからイーデスハリスの世界では10年かけて主神の名のもとの力で大きな歪みを打ち消したんじゃ】
「は、はぁ」
【しかし、神の世界にもいろいろ制限があってのぅ、ワシはあくまで管理代行。このイーデスハリスの世界を管理する神が必要となるんじゃ。10年前に産まれた新たなる神、それが彼女『太陽神アマテラス』じゃ】
【あまてらすです。よろしくおねがいします】
「元気でいいね」
【ありがとうございましゅ】
「あ、かんだ」
ちょっと凹んでシュンとするアマテラスに和む。ゴッデスが大丈夫って感じで優しく頭をポンポンしてる。
【なにせ10歳じゃからの、優しくしてやってくれ】
「はい」
【まぁ、そういうわけでの、大きな歪みというのは魔王になりそうな悪魔の殲滅と浄化とかじゃの。それと4人の神を邪神としてワシがアマテラスを使って成敗したことになっておるし。4人の神の名前すらイーデスハリスの世界から消し去っておいた。ワシの役目はこれでおしまいじゃ。中くらいの歪みはアマテラスが”神託”を使ったりしてつぶした。わかりやすく説明すると・・・冒険者ギルドでクーデターを起こして歪みを修正したのもアマテラスの仕事じゃ】
「おおお! 凄いなアマテラス様!」
【あたしがした、おしごとだからとうぜんです】
幼女がちょっとえらそうに踏ん反り返る姿は見てて微笑ましいな。
【他にもいろんな国の貴族や王族の汚職・不正を摘発して追放させたりとか神託は使いこなせるようになってきたんじゃ】
「それはよかったですね」
【そうやって歪みを消したから、君も安心して世界を遊びまわって良いのじゃよ。それに教会に恐怖を感じてるようじゃったが、あの4人の痕跡すら残してないからの。教会に祭られてるのは主神ゴッデスのワシの像と太陽神アマテラス彼女の像だけなんじゃ】
「世界中の教会を殲滅させないと安心できないのではないかと正直に言って恐怖を持ってました。俺一人で宗教戦争をするというのは流石に・・・。後、心配なのは盗賊に対して復讐心とか貴族に対する反逆心が尋常とは思えないです。自分が自分でなくなるような恐怖心すら感じます」
【それはワシからはすまないとしか言いようがないんじゃ。あれでも10年たって少しは薄れた状態でのぅ、改善していくから心配しなくて良いし、君の中に眠ってる”正義のヒーロー”にあこがれる子供心にも原因の一端があるんじゃよ。じゃから悪を成敗する! ってもっと気楽に考えてもいいんじゃよ】
「悪を成敗ですか? 流石にそれは恥ずかしいですよ。いくらファンタジーの世界とはいえ」
【君がよくいう”中二病”じゃったかの?君も前世で経験しただろうが、君の今の年齢がちょうど15歳。正義のヒーローにあこがれる心がまだ残ってるのが当たり前じゃし、もう大人になったんだから恥ずかしいと思う気持ちも当たり前のものなんじゃ。まぁ、ワシからのアドバイスは『二度目の人生! 気楽にいこうぜ!』じゃな】
「そうですね。もう少し気楽に考えてみます」
目の前の光が瞬いてきた。ゴッデス様とアマテラス様の姿が霞んでくる。
【そろそろこの世界に君を引きとめるのは終了のようじゃが、先ほど君が貰った日本刀はワシからのプレゼントでもあるんじゃよ。あれは邪を断ち切る神の刀じゃ。・・・そういうの好きじゃろ?】
「・・・大好物です」
【じゃあの、気楽に生きろよ、早乙女君】
【またあいましょうね、さおとめさん】
「はぁ? また会うって?」
ここで俺は意識が教会に戻る。
礼拝堂の一番前の席に座っていた。
視界が戻ったことによって礼拝堂の祭壇に祭られている御神体の像の姿が目に飛び込んでくる。
・・・待てーーい。
神の姿を知ってる俺が、御神体を見た第一印象をひとことで表現するとしたらそれだ!
いやね、ゴッデス様はいいんだよ。俺が見た姿を凛々しくしたって感じだからな、まぁ神様補正も入ってるんだろ。
ただな、アマテラス! お前はダメだ!! ダメダメだ!!!
なんで幼女が『ボン・キュッ・ボン』のナイスバディになってんだ? それはイカンだろ。
つーか、御神体の像の下にご丁寧に『太陽神アマテラス様』って書いたプレートがなけりゃ、いったい誰の像なのかわからなかったぞ?
あのアマテラスが20歳ぐらいに成長した姿ってのなら理解できるんだよ。なんとなく似てるしな。
像の姿勢もなんじゃい! アマテラス(仮?)の像の姿は、左の膝を地面につき、右の膝を立てた体制・・・片膝立ちの姿勢で少し斜め上を見上げてて両手を胸の前で合わせてて・・・何かエロい。
ムチムチプリンさんがこう、ぎゅっとされていてな・・・とにかくエロいんだよ。
なんでツルペタがムチムチプリンさんになってんだよ。
何で御神体がエロフィギュア化してんだよ!
なんでなんだよ、アマテラスの陰謀か? 見栄でもはったのか?
【あ、あたしがつくったんじゃないもん! にんげんがかってに、かってにつくられただけだもん!! ちがうもん! ドン!!!】
ん? どこかからアマテラスの声が何かの衝撃とともに脳内に鳴り響いた。
「なんなんだ? 気のせいだよな。気のせい気のせい。ひとやすみひとy『バチン』ふぎゃ」
今度は電気ショックがきた。アマテラスの御神体エロフィギュア化に動揺して、どこかの小坊主のCM前のセリフを思わず口走ってたから電気にツッコミ入れられてしまったよ。
教会に入る前とは違う意味で教会に居づらくなって、外に出ることにした。10万Gほど寄付しておいた。魔水晶にステータスカードを当てて『10万G寄付します』声に出して終了って、何か寄付として間違ってないか?
ゾリオン村にいる理由は終わったし、明日からはヨークルに向けて移動する。
ゾリオンとヨークルの間を毎日定期運行してる荷馬車に乗せてもらえるみたい。
運賃はかかるが。
けどガルディア商会が運行している荷馬車はこのカードを見せればタダで乗れますって黒いカードを村長邸でバイドにもらった。
シーパラ連合国内ならほとんどの都市に町に村に運行便があるから自由に使ってくださいって。
旅をするならこれがあれば便利。ただ、荷馬車なんで乗り心地は期待しないでくださいって言われた。
村長邸を出るときにボーリックさんが座椅子ぐらいの大きさのクッションをくれた。
荷馬車でも岩場でも、これがあれば横になることもできるという優れものらしい。
メチャクチャ便利そうなんでありがたくいただいた。
日の出後に出発して午前・昼・午後の休憩があり、夕方にはヨークルにつくと聞いた。
7時半頃に出発するのでその前に荷馬車倉庫前で受付する。
明日は早起きしないとな。ガウリスク本拠の丘からグリーンウルフに送ってもらうと数分でついちゃうから、あまり遅刻の心配はしてないけど。
明日だけは『荷馬車に乗って夕方ヨークルに着く』ってことをしておかないと。飛翔魔法や転移魔法が使えるってことは極力秘密にしておかないと面倒で厄介なことに巻き込まれる気がする。
テクテク歩いてゾリオン村を離れたら街道を外れて草原の中に入り隠れてガウリスクの本拠の丘の早乙女邸に転移する。